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決算前の財務改善

自己資本・利益・資産内容を見直す実務

執筆: 法人融資ナビ編集部 / 公開: 2026-04-28 / 更新: 2026-10-01

このページは審査基準の解説ではなく、決算前に財務の実態を整える実務を扱います。役員借入金、不良在庫・回収不能債権、遊休資産、利益構造を見直し、翌期の改善策と月次資料へつなげます。会計処理や資本政策は税務・法務への影響があるため、数値だけを良く見せるのではなく税理士・司法書士等と実態に沿って進めることが前提です。

要点

この記事で先に確認すること

01
融資審査での自己資本比率の水準(中小企業)
金融機関・商品ごとに異なる(公表例:東京信用保証協会の当座貸越の保証「当貸ホップ」は直近決算で15%以上が要件の一つ。売上高1億円以上・業歴3年以上なども要件)
出典: 東京信用保証協会「当座貸越根保証制度について」
02
融資審査での債務償還年数の水準と公的な例
水準は金融機関・融資商品ごとに異なる。似た指標の公的な例は、有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下(事業再生計画の終了年度)
出典: 中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(令和8年3月一部改定)24ページ(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/sme-gl/sme-guideline_202603.pdf)
03
中小企業の売上高経常利益率(平均)
4.29%(令和4年度決算実績・全産業)
出典: 中小企業庁「令和5年中小企業実態基本調査」速報
04
早期経営改善計画策定支援
認定経営革新等支援機関の計画策定・伴走支援費用の3分の2を補助(上限あり)
出典: 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html
関連銀行日本政策金融公庫政府系
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SECTION 01

融資審査で見られる財務指標の計算式と公表されている水準の例

銀行の融資審査でスクリーニングに使われる主な財務指標は①自己資本比率(純資産÷総資産)②債務償還年数(有利子負債÷(経常利益+減価償却費))③流動比率(流動資産÷流動負債)④利益率(経常利益÷売上高)の4つだ。

自己資本比率に求められる水準は金融機関・商品ごとに異なる。公表されている例では、東京信用保証協会の当座貸越(枠の範囲で出し入れできる借入)の保証「当貸ホップ」が、直近の決算で自己資本比率15%以上を要件の一つにしている(売上高1億円以上・業歴3年以上なども要件)。

そのほかの指標も、求められる水準は金融機関・業種ごとに異なる。債務償還年数に似た指標の公的な例では、中小企業の事業再生等に関するガイドライン(令和8年3月一部改定版)が、事業再生計画の終了年度に有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にする内容を求めている。ただし、計算式が債務償還年数と同じとは限らない。

指標が金融機関の求める水準に届かない場合でも、改善トレンドを示す複数期間の推移資料を提示することで審査評価を高められることがある。

SECTION 02

決算前にできる財務改善アクション:合法的な数値の整え方

決算月の前後に実施できる財務改善策として以下が効果的だ。①役員借入金の資本組入:代表者が会社に貸し付けた資金を資本金に振り替えることで自己資本比率が改善する(司法書士・税理士と相談)。②不良在庫・不良債権の処理:簿価の高い在庫や回収不能売掛金を整理することで資産の質が向上する。

③固定資産の適正評価:実際に使っていない遊休不動産・旧設備を売却・除却することで総資産が圧縮され比率が改善する。④利益改善:値引き慣行の見直し・外注コストの適正化など、次期以降の黒字化につながる改善を決算前に着手しておくことが重要だ。

SECTION 03

銀行への決算書・試算表の定期提出で信頼関係を積み上げる

融資審査は決算書だけで行われるわけではない。主取引銀行に対して月次または四半期の試算表を定期的に提出し続けることで財務状況の透明性が高まり審査評価が上がりやすくなる。特に業績回復中の企業は、試算表で「改善トレンドの見える化」をしておくと説明の材料になり、前期赤字でも当期黒字化の過程を試算表で示せると追加融資に応じてもらえることがある。

決算後は決算書を2週間以内に主取引銀行に提出し、業績説明・今期の事業計画を口頭でも補足することが信頼関係構築の基本動作だ。こうした継続的な情報提供が融資条件(金利・担保)の交渉力を高める。

SECTION 04

国の支援制度で専門家と財務改善計画を作る:費用の3分の2を補助

自力での財務改善が難しい場合、国の「早期経営改善計画策定支援」を使うと、税理士・中小企業診断士などの認定経営革新等支援機関の支援を受けて資金繰り計画・アクションプランを作る費用の3分の2を補助してもらえる(上限あり、窓口は中小企業活性化協議会)。この計画は金融機関にも提出するため、「自社の課題を把握し改善に着手している」ことを銀行に示す材料にもなる。

より深刻な状況(返済条件の変更を伴う場合等)では、同じく認定支援機関を活用する「経営改善計画策定支援」(いわゆる405事業)が用意されている。数値目標として参考になるのは中小企業全体の水準で、中小企業庁の「令和5年中小企業実態基本調査」では売上高経常利益率の平均は4.29%(令和4年度決算・全産業)だった。自社の利益率がこれを大きく下回る場合、価格設定・原価構造の見直し余地があるサインと捉えて改善計画に織り込むとよい。

SECTION 05

決算直前の見せ方ではなく継続する改善を選ぶ

決算前の財務改善は、期末だけ預金や借入を動かして比率を整えることではありません。滞留在庫、回収遅延債権、役員貸付金、遊休資産、短期借入の使途を確認し、処分・回収・契約見直しなど実際の改善策を決めます。利益を確保するために必要な価格、原価、固定費の変更を月次計画へ反映し、翌期も続くかを検証してください。

金融機関へは一時的な数値改善と恒常的な改善を分け、実行済み施策、今後の期限、資金繰りへの効果を示します。税務・会計処理を恣意的に変えず、税理士と整合を確認することも重要です。

SOURCES

この記事で参照した根拠

  1. 01

    融資審査での自己資本比率の水準(中小企業)

    出典: 東京信用保証協会「当座貸越根保証制度について」

  2. 02

    融資審査での債務償還年数の水準と公的な例

    出典: 中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(令和8年3月一部改定)24ページ(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/sme-gl/sme-guideline_202603.pdf)

  3. 03

    中小企業の売上高経常利益率(平均)

    出典: 中小企業庁「令和5年中小企業実態基本調査」速報

  4. 04

    早期経営改善計画策定支援

    出典: 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html

数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。

FAQ

よくある質問

Q2期連続赤字でも融資を受けられる可能性はありますか?▼
A

2期連続赤字は審査で厳しく見られやすく、申込みを受け付けるかは金融機関ごとの判断による。赤字の原因が一時的で当期改善見込みが明確な場合、セーフティネット保証付き融資や日本政策金融公庫の「経営環境変化対応資金」(外的要因で一時的に業況が悪化し、中長期的には回復が見込まれる方向けのセーフティネット貸付)で対応できることがある。早期の相談が重要だ。

Q役員報酬を上げすぎると融資審査に不利になりますか?▼
A

会社の純利益を圧迫するほど役員報酬が高い場合、「法人の収益力が低い」と判断されるリスクがある。業界水準・売上規模に見合った役員報酬に調整することで実効利益が改善し審査評価が高まりやすい。

Q自己資本比率を上げるために増資する方法はありますか?▼
A

第三者割当増資や株主からの追加出資は自己資本を増やす直接手段だ。代表者個人が会社に資本投入する方法や、役員借入金を資本金に組み入れる「DES(デット・エクイティ・スワップ)」も選択肢の一つだ。

Q銀行から「財務改善計画書を提出してほしい」と言われた場合はどうすればよいですか?▼
A

財務改善計画書は問題を認識していること・何をいつまでに改善するかを示す文書だ。税理士・中小企業診断士のサポートを得て作成することで説得力が増す。中小企業活性化協議会のサポートを無料で受けることもできる。

Q試算表の提出を銀行から求められた場合、どの程度の頻度が適切ですか?▼
A

主取引銀行への試算表提出は四半期(3ヶ月)ごとが最低限の目安だ。融資残高が大きい・業績変動が大きい場合は月次提出が望ましい。定期提出の習慣化が融資条件の改善交渉を有利に進める基盤になる。

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