WAM(独立行政法人福祉医療機構)の福祉貸付は、特別養護老人ホーム、デイサービス、グループホーム、障害福祉サービス、保育所などの施設整備を支える長期・固定・低利の公的融資です。ただし、利用できる法人と施設、直接貸付・代理貸付の区分、融資率、償還期間は計画ごとに異なります。2026年度の公式パンフレットをもとに、対象確認から融資相談、借入申込までの順序を整理します。
この記事で先に確認すること
- 対象確認の基準資料
- 施設・事業と法人格ごとに対象を確認。直接貸付と代理貸付の区分も同資料で確認
- 出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 主な融資対象費用
- 建築工事、設計監理、機械器具・備品、条件を満たす土地取得など
- 出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 金利の適用時点
- 金銭消費貸借契約締結時の利率を適用。施設種類・償還期間等で異なる
- 出典: WAM「福祉・医療貸付利率変更について」 https://www.wam.go.jp/hp/riritsu_henkou/
- 貸付内定前の契約・着工
- 工事請負・設備購入・土地建物売買の契約または工事着工を行うと原則融資対象外
- 出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 審査期間の目安
- 申込書到着後、内容確認を終えてから審査完了まで約1か月。案件により長期化
- 出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
SECTION 01
最初に確認すること:対象施設・法人と直接貸付・代理貸付
WAM福祉貸付は、すべての介護・福祉事業者が同じ条件で利用できる制度ではありません。2026年度パンフレットでは、高齢者福祉分野の特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護事業所、認知症高齢者グループホーム、老人デイサービスセンター、訪問介護事業などに加え、児童福祉・障害者福祉分野の施設や事業が列挙されています。
利用できる法人格も施設・事業ごとに異なり、社会福祉法人だけでなく、対象事業によっては医療法人、一般社団法人、営利法人、NPO法人などが含まれます。株式会社だから一律に対象外、または介護事業だから一律に対象、とは判断できません。
申込経路にはWAMへ申し込む「直接貸付」と、受託金融機関を窓口とする「代理貸付」があります。どちらになるかは施設・事業、法人格、申込金額などによって決まるため、パンフレット2ページの対象表で自社の行を確認します。対象表だけで判断しにくい場合は、建物の契約や工事の発注前にWAMの融資相談を利用するのが安全です。
SECTION 02
融資対象費用と限度額:補助金を差し引いて計算する
設置・整備資金では、新築・改築・拡張・改造・修理などの建築工事費、介護用リフトや自家発電設備などの大型設備工事費、設計監理費、機械器具・備品の購入費などが対象として示されています。土地取得資金は、取得地で建物整備を伴うなどの条件があります。すでに支払った費用や計画外の費用がそのまま対象になるとは限らないため、工事見積書を資金区分ごとに分けて相談します。
融資限度額は、原則として「対象となる所要額から法的・制度的補助金を差し引き、施設ごとの融資率を掛けた額」と「担保評価額に所定割合を掛けた額」を比較して算定されます。通常の融資率は施設区分に応じて70〜80%が中心ですが、国の政策や整備内容に応じた優遇融資があります。
補助金とWAM融資は併用できますが、補助対象額を含めて二重に資金調達できるという意味ではありません。補助金名、対象経費、交付時期を資金計画に反映し、残る自己負担と民間借入の必要額を計算します。
SECTION 03
金利・償還期間は施設と契約時点で確認する
WAMの貸付利率は、施設種類、資金種類、償還期間などで異なり、金銭消費貸借契約を締結した時点の利率が適用されます。古い記事に掲載された金利を前提に返済計画を作らず、申込時点の公式利率表で確認する必要があります。設置・整備資金の償還期間が10年を超える場合は、契約時の利率を償還期限まで固定する方式と、10年経過ごとに見直す方式から選ぶ仕組みです。
償還期間も一律ではありません。WAM公式サイトでは融資期間は融資の対象や資金の種類等によって5年以内〜30年以内で異なるとされており、施設区分・資金区分に応じた具体的な年数は申込時点の公式パンフレットで確認する必要があります。
据置期間も償還期間に応じて変わります。返済可能額を先に決め、希望する最長期間を当然に使える前提ではなく、施設区分に合う条件で収入支出償還計画を作ります。
SECTION 04
融資相談から借入申込まで:契約・着工の順番に注意する
WAMは、貸付内定前に計画に関する工事請負契約、設備の購入契約、土地・建物の売買契約を締結したり、工事に着手したりした場合、原則として融資対象外になると案内しています。施設候補や見積りが固まった段階で融資相談を行い、貸付内定通知を受けるまで発注を進めないことが重要です。設計・監理の業務委託契約は例外とされていますが、個別計画は事前に確認します。
直接貸付の相談では、融資相談票、直近2か年の決算書、必要に応じた残高試算表、開設後の収入支出償還計画表、敷地資料、配置図・平面図などを準備します。借入申込時には、施設を管轄する都道府県・市区町村の意見書なども必要です。
WAMは、申込書の内容確認後から審査完了までの目安を約1か月としていますが、初回相談、書類補正、担保確認、契約、資金交付までの全工程が1か月で終わるという意味ではありません。開設日から逆算し、行政の整備計画や補助金申請と並行して余裕を持って相談します。
SOURCES
この記事で参照した根拠
- 01
対象確認の基準資料
出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 02
主な融資対象費用
出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 03
金利の適用時点
出典: WAM「福祉・医療貸付利率変更について」 https://www.wam.go.jp/hp/riritsu_henkou/
- 04
貸付内定前の契約・着工
出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
- 05
審査期間の目安
出典: WAM「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf
数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。
FAQ
よくある質問
Q株式会社の介護事業者でもWAM福祉貸付を利用できますか?▼
施設・事業によっては営利法人が対象に含まれますが、株式会社の介護事業者が一律に利用できるわけではありません。2026年度パンフレットの対象表で、自社の法人格と計画する施設・事業が交差する箇所を確認してください。代理貸付に該当する場合は受託金融機関が申込窓口になります。
Q工事や物件の契約後でも申し込めますか?▼
貸付内定前に工事請負、設備購入、土地・建物売買の契約や工事着工を行うと、原則として融資対象外です。候補物件や見積りが固まった段階で相談し、契約・着工できる時点をWAMに確認してください。設計・監理の業務委託契約はパンフレット上の例外ですが、個別確認が必要です。
Q補助金とWAM福祉貸付は併用できますか?▼
併用できます。ただし融資限度額の計算では、対象となる所要額から法的・制度的補助金を差し引きます。補助金の対象経費とWAMの融資対象経費を照合し、交付時期も含めた資金計画を作る必要があります。
Q2026年度の金利は何%ですか?▼
単一の金利ではありません。施設種類、資金種類、償還期間、優遇措置などで異なり、契約締結時の利率が適用されます。過去時点の数値を流用せず、WAMの「福祉・医療貸付利率変更について」に掲載される最新の利率表を確認してください。
Q相談から融資実行まで1か月ですか?▼
1か月は、申込書の内容確認が終わってから融資審査を完了するまでの公式な目安です。事前相談、行政の意見書、書類補正、担保確認、貸付契約、資金交付までを含む全期間ではありません。初めての申込や法人新設では時間がかかる場合があるため、開設予定から十分に前倒しして相談します。
Q開設後の人件費や介護報酬の入金待ちもWAMだけで賄えますか?▼
WAMには制度上の経営資金がありますが、対象となる場面や償還期間は設置・整備資金と異なります。日常的な運転資金をWAMだけで賄える前提にはせず、日本政策金融公庫、地域金融機関、信用保証協会付き融資と分けて相談してください。介護事業全体の創業・運転資金は関連記事で別に整理しています。
関連する用語
この記事に出てくる用語を確認する
関連記事
次に確認したい記事
介護・福祉事業の資金調達ガイド|創業融資から運転資金の確保まで
介護・通所介護の創業融資を解説。デイサービス・グループホーム・訪問介護の開設資金から、介護報酬入金待ちの運転資金まで、日本政策金融公庫と地方銀行の活用方法を紹介。
介護報酬改定2024年後の運転資金確保:賃上げ原資の融資戦略
2024年度(令和6年度)介護報酬改定後の運転資金を、処遇改善加算による賃上げ原資の先行負担と国保連入金の2ヶ月遅れの観点から解説。賃上げと資金繰りを両立させる融資の組み立て方を整理する。
放課後等デイサービス2026年6月報酬改定後の開業資金と融資戦略|新規指定▲1.8%に備える
2026年6月施行の報酬改定で放課後等デイサービスの新規指定事業所は基本報酬が1000分の982(▲1.8%)に適正化された。開業資金の目安と日本政策金融公庫の融資制度、重度障害児等の配慮措置まで開業判断に必要な情報を解説する。
訪問看護ステーション、令和8年度診療報酬改定(包括型訪問看護療養費新設)と開業資金計画
令和8年度診療報酬改定で新設された包括型訪問看護療養費について、算定対象・届出・単価・実施体制を公式資料で確認し、訪問看護ステーションの開業資金計画に反映する手順を解説します。