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廃業時の経営者保証ガイドライン:残存資産を残す保証債務整理

公開: 2026-06-06

廃業しても自己破産せず、自由財産99万円に加えて一定期間の生計費(一定期間×月額33万円)や華美でない自宅を手元に残せる可能性がある。鍵は「早期着手」だ。早く清算するほど債権者の回収見込額が増え、その増加額を上限に残せる資産が積み上がる。本記事は残存資産の算定と早期着手の損得を実例で解説する。

ポイント

この記事のポイント

残せる残存資産の範囲

自由財産(99万円以下の現金+拡張自由財産)に加え、インセンティブ資産として一定期間の生計費(一定期間×月額33万円)と華美でない自宅

出典: 金融庁・中小企業庁「経営者の皆様へ 経営者保証に関するガイドラインを活用してみませんか(経営者向けパンフレット)」(2023年12月13日、chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/2023/231213_02.pdf)

インセンティブ資産の上限の決まり方

現時点で清算することにより、将来(最大3年程度を想定)に清算した場合より回収見込み額が増加する額が上限

出典: 金融庁・中小企業庁「経営者向けパンフレット」(2023年12月13日)

生計費の算定と実例

1か月あたり民事執行法施行令で定める額33万円に雇用保険の給付期間を乗じて算定。参考事例では給付期間8か月で33万円×8=264万円、自由財産99万円と合算し363万円を残存資産とした

出典: 金融庁「経営者保証に関するガイドラインにおける廃業時の保証債務整理に関する参考事例」(令和4年6月、fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220623-4.pdf)

信用情報への影響

対象債権者は債務整理を行った事実その他の関連情報を信用情報登録機関に報告・登録しないため、事故情報に登録されない

出典: 経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」8(5)(全国銀行協会、zenginkyo.or.jp)

早期着手の明確化(改定日)

令和5年(2023年)11月22日改定で、廃業手続に早期に着手することが保証人の残存資産の増加に資する可能性があることを明確化

出典: 一般社団法人全国銀行協会「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方の改定について」(2023年11月22日、zenginkyo.or.jp/news/2023/n112201/)

残存資産の中身:自由財産+インセンティブ資産(生計費・自宅)

経営者保証に関するガイドラインに基づいて保証債務を整理すると、保証人(経営者個人)の手元に残せる資産は通常の自己破産より厚くなる。金融庁の経営者向けパンフレットは残存資産を2層で整理している。第1層は破産手続でも残せる「自由財産」で、99万円以下の現金、差押禁止財産(生活に欠くことのできない家財道具等)、債務整理申出後に新たに取得した財産、そして裁判所の実務運用で通常拡張が認められる拡張自由財産(破産法第34条第4項)が含まれる。第2層がガイドライン特有の「インセンティブ資産」で、①一定期間の生計費に相当する額の資産(一定期間×月額33万円)と②華美でない自宅が対象になる。生計費の「一定期間」は雇用保険の給付期間を参考に、保証人の個別事情を勘案して検討される。華美かどうかは個別事案ごとに収入規模・家族構成等の要素から判断され、画一的な金額基準はない。重要なのは、ガイドラインによる整理は対象債権者が信用情報登録機関に債務整理の事実を報告・登録しないため、いわゆる事故情報(ブラックリスト)に載らず、再起のハードルが自己破産より大幅に低い点だ。

生計費はいくら残せるか(民事執行法施行令33万円×雇用保険給付期間)

生計費相当額の算定は「1か月あたりの標準的な世帯の必要経費」として民事執行法施行令で定める額(月額33万円)に、雇用保険の給付期間を乗じて求める。金融庁が公表した廃業時の参考事例では、60歳以上65歳未満の階層に準じて給付期間を8か月とし、33万円×8か月=264万円を生計費相当額とした上で、自由財産99万円と合算した363万円を残存資産とした実例が示されている。雇用保険の給付期間は年齢・被保険者期間で変わるため、生計費として残せる額もケースで異なる。自分のケースで「いくら残せそうか」は、年齢区分に対応する給付期間を当てはめて月額33万円を掛ければおおよその上限イメージがつかめる。実際の確定額は債権者全員の同意を前提に、後述する経済合理性の範囲内で決まる。

早期着手の損得:回収見込額の「増加額」が上乗せの上限になる

インセンティブ資産(生計費・華美でない自宅)をどこまで残せるかは、保証人の希望だけでは決まらない。上限は「早期着手による回収見込額の増加額」で縛られる。金融庁パンフレットは、現時点で清算した場合に、将来(最大3年程度を想定)に清算した場合と比べて債権者の回収見込み額がどれだけ増えるか、その増加額がインセンティブ資産の上限になると説明している。つまり早く動くほど在庫の二束三文化や不動産の劣化・維持コストを避けられ、債権者への配当(回収見込額)が増える。その「増えた分」を原資に、経営者の手元へ生計費や自宅を回せるという構造だ。逆に決断が遅れて資産が劣化すれば回収見込額の増加余地が縮み、残せる資産も目減りする。これが「早期着手=得、先延ばし=損」の正体であり、ガイドライン本体も令和5年11月22日の改定で「廃業手続に早期に着手することが保証人の残存資産の増加に資する可能性がある」点を明確化した理由でもある。なお改定の全体像や再チャレンジ後の融資までを通した解説は /guide/withdrawal-personal-guarantee-2026 を参照されたい。

増加額をどう見積もるか

回収見込額の増加額は「今清算した場合の主債務・保証債務の回収見込額の合計」と「将来(最大3年程度)に清算した場合の合計」の差として算定する。在庫の早期換価、不動産の市場価格での売却(早期処分での叩き売りの回避)、売掛債権回収の極大化などが増加要因だ。この見積もりは取引金融機関・支援専門家(弁護士・公認会計士)・中小企業活性化協議会が連携して合理的に行い、根拠資料を債権者間で共有する。合理的に見積もれることが、生計費・自宅を残存資産へ上乗せする前提条件になる。

手続の進め方と利用要件:早期相談からスタートする

保証債務整理は、主債務(法人)の整理手続と並行して保証人の整理を申し立てる流れで進む。実務上の入口は早期相談で、金融庁パンフレットは取引金融機関、中小企業活性化協議会、REVIC(地域経済活性化支援機構)、支援専門家(弁護士・税理士等)を相談先として挙げている。中小企業活性化協議会は各都道府県に設置され、弁護士等の専門家紹介や、円滑な廃業・再スタートに向けた助言を行う。日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240)でも弁護士との面談予約ができる。利用要件は、主債務者・保証人がともに弁済について誠実で、債権者の求めに応じて財産状況等を適時適切に開示していること、内容の正確性について表明保証を行うこと、破産手続より債権者の回収見込額が増える経済合理性があること、そして免責不許可事由(浪費・財産隠匿・偏頗弁済等)が生じておらずそのおそれもないことだ。これらを満たせるかは早期相談の段階で専門家とともに見極める。資金繰りが行き詰まる前に動くほど取り得る選択肢(廃業・事業再生・事業承継)が広く、残せる資産も増える。まずはメインバンクと中小企業活性化協議会への同時相談が前進の近道になる。

FAQ

よくある質問

Q廃業すると自宅は必ず手放すことになりますか?
A

必ずしもそうではない。経営者保証ガイドラインに基づく整理では、華美でない自宅をインセンティブ資産として残存資産に含められる可能性がある。華美かどうかは収入規模・家族構成・地域水準などから個別に判断され、金融機関が分割弁済の受入れ等で住み続けられる方策を検討するとされている。

Q生計費として具体的にいくら残せますか?
A

1か月あたり民事執行法施行令で定める額33万円に、雇用保険の給付期間を乗じて算定する。金融庁の参考事例では給付期間8か月で264万円を生計費とし、自由財産99万円と合わせ363万円を残存資産とした例がある。給付期間は年齢・被保険者期間で変わるため、残せる額はケースごとに異なる。

Qなぜ早く相談したほうが多くの資産を残せるのですか?
A

早く清算すると在庫の叩き売りや不動産の劣化を避けられ、債権者の回収見込額が増える。金融庁パンフレットは、今清算する場合と将来(最大3年程度)清算する場合の回収見込み額の差額をインセンティブ資産の上限とすると説明している。先延ばしで資産が劣化すると、その増加余地ごと残せる資産が目減りする。

Qガイドラインによる整理は自己破産と何が違いますか?
A

最大の違いは信用情報への影響だ。ガイドラインによる整理では対象債権者が債務整理の事実を信用情報登録機関に報告・登録しないため、事故情報に載らない。さらに自由財産に加え一定期間の生計費・華美でない自宅を残せる可能性があり、再起時の障壁が自己破産より大幅に低い。

Q利用するための要件を教えてください。
A

主債務者・保証人がともに弁済について誠実で、財産状況等を適時適切に開示し内容の正確性を表明保証していること、破産より債権者の回収見込額が増える経済合理性があること、免責不許可事由(浪費・財産隠匿・偏頗弁済等)が生じておらずそのおそれもないこと、が要件だ。早期相談の段階で専門家とともに満たせるか見極める。

Qどこに相談すればよいですか?
A

取引金融機関のほか、各都道府県の中小企業活性化協議会、REVIC(地域経済活性化支援機構)、弁護士・税理士等の支援専門家が相談先だ。日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240)でも弁護士との面談予約ができる。メインバンクと中小企業活性化協議会への同時相談が前進の近道になる。

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