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電子帳簿保存法への対応(2026年)と融資審査に間接的に効く理由

公開: 2026-06-06

電子取引データの保存は2024年1月から所得や規模を問わず全事業者に義務化されている。電子帳簿保存法そのものは融資審査基準を定める法律ではないが、適切な対応は記帳の正確性と試算表の早期確定を支え、銀行が評価する決算書・月次資料の信頼性に間接的に効く。本記事は義務化の現状と猶予措置を国税庁情報で整理したうえで、その実務的な波及を解説する。

ポイント

この記事のポイント

電子取引データ保存の義務化時期

令和6年(2024年)1月に電子取引データ保存の義務化がスタート。所得や規模を問わず電子データで取引を行う全事業者が対象

出典: 財務省「令和6年1月スタート 令和5年度の税制改正により見直された 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(mof.go.jp/public_relations/finance/202408/202408c.html)

保存時の要件を満たせない場合の猶予措置

所轄税務署長が「相当の理由がある」と認める場合(事前申請等は不要)、改ざん防止・検索機能などの要件に従わず電子取引データを単に保存しておくことができる。税務調査時にダウンロードの求めと書面の提示・提出に応じられることが条件

出典: 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm)/財務省 同上資料

優良な電子帳簿の過少申告加算税の軽減

優良な電子帳簿の要件を満たし、あらかじめ所轄税務署長に届出書を提出している保存義務者は、その帳簿に関する申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される(隠蔽・仮装に基づくものを除く)

出典: 国税庁「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出」(nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021011-060_01.htm)

スキャナ保存・電子取引データの重加算税の加重

スキャナ保存または電子取引の電磁的記録に記録された事項に関し隠蔽・仮装された事実があった場合、その事実に基づく申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される

出典: 国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」(令和3年度税制改正リーフレット)/財務省・国税庁公表資料

電子帳簿保存法の3区分と「電子取引」だけが義務である構造

電子帳簿保存法は税務関係帳簿書類のデータ保存に関する制度で、「①電子帳簿等保存」「②スキャナ保存」「③電子取引データ保存」の3区分で構成される。このうち会計ソフトで作成した帳簿を電子のまま保存する①と、紙の領収書等をスキャンして保存する②は、いずれも任意の選択肢にとどまる。一方で③の電子取引データ保存だけは、令和6年(2024年)1月から全事業者に義務付けられている。電子取引とは、メールで受け取った請求書やネット通販サイトでダウンロードした領収書など、最初から電子データでやり取りされた取引情報を指す。これらは紙に印刷して保管するのではなく、電子データのまま「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件に沿って保存することが原則となる。事業の規模や所得の金額にかかわらず、フリーランスや個人事業主を含めて適用される点が、この制度を中小企業の経理実務に直結させている。

義務の対象は「電子で受け渡しした取引情報」に限られる

紙でやり取りした請求書・領収書をわざわざ電子化する義務はない。義務化されたのはあくまで「もともと電子でやり取りした取引情報」を電子のまま保存することであり、紙の書類は従来どおり紙で保存できる。つまり「すべての書類を電子化しなければならない」という理解は誤りで、対象は電子取引に限定される。一方、電子で受け取った請求書を紙に印刷して保管し、元データを破棄する運用は原則として認められない。自社のどの取引が電子取引に該当するかを洗い出すことが、対応の出発点になる。

猶予措置と優良な電子帳簿:守るほうと攻めるほう

要件に従った保存がすぐにできない事業者向けに、令和5年度税制改正で猶予措置が整備された。所轄税務署長が「相当の理由がある」と認める場合(事前申請等は不要)、改ざん防止や検索機能といった保存時の要件に従わなくても、電子取引データを単に保存しておくことが認められる。相当の理由の例として、システムや社内ワークフローの整備が間に合わない場合や、資金繰り・人手不足などにより要件に従った保存ができない場合が示されている。ただしこの猶予を受けるには、税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じられること、かつそのデータをプリントアウトした書面の提示・提出に応じられること、の両方を満たす必要がある。猶予措置は「何もしなくてよい」という意味ではなく、最低限データを残し提示できる体制を保つことが前提になる。

優良な電子帳簿は過少申告加算税が5%軽減される

守りの猶予措置に対し、攻めの優遇措置が「優良な電子帳簿」だ。訂正・削除の事実が確認できること、通常の期間経過後に入力した事実が確認できること、関連する他の帳簿との相互関連性を確認できることなどの要件を満たし、あらかじめ所轄税務署長に届出書を提出している場合、その帳簿に関する申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される(隠蔽・仮装に基づくものを除く)。個人事業者では、この届出と要件充足により所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用にもつながる。日々の記帳を会計ソフトで要件に沿って残すことが、税負担面の優遇に直結する制度設計になっている。

隠蔽・仮装には重加算税が10%加重される

一方で罰則面は強化されている。スキャナ保存または電子取引の電磁的記録に記録された事項について隠蔽・仮装された事実があった場合、その事実に基づく申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される。これは保存義務者が自らデータを改ざんする場合だけでなく、通謀により相手方から受領した架空の請求書等を電磁的記録で保存している場合も対象になりうるとされる。電子データは複製・改ざんが容易で痕跡が残りにくいという特性を踏まえ、不正には通常より重い負担を課す仕組みだ。適切な保存は「優遇を取りにいく」と同時に「加重を避ける」という両面で意味を持つ。

電子帳簿保存法対応が融資審査に間接的に効く道筋

電子帳簿保存法は税務上の保存制度であり、銀行の融資審査基準を定める法律ではない。制度に対応したからといって審査が有利になると約束する条文は存在しない。それでも実務上、対応の質は融資の土台に間接的に効く。理由は、銀行が見るのは決算書・試算表・資金繰り表といった「数字の信頼性」だからだ。電子取引データを要件どおりに残し、会計ソフト上で日々の記帳が連動していれば、月次の数字が早く正確に固まる。請求書や領収書を後から紙で探し回る運用に比べ、月次試算表を翌月の早い時期に確定させやすくなり、決算の精度も上がる。銀行が評価するのはこの「早く正確に出てくる数字」であって、電子帳簿保存法そのものではない。対応は審査の加点項目ではなく、信頼できる財務資料を継続的に出せる体制の前提条件と位置づけるのが正確な理解だ。

記帳の正確性と試算表の早期確定という回路

銀行が運転資金などの融資を判断するとき、直近の試算表や資金繰り表の提出を求めることは珍しくない。電子取引データが散逸せず会計データと突合できる状態にあれば、月次の確定が早まり、求められたときに直近の数字をすぐ出せる。逆に保存が乱れていると、月次が遅れ、決算で大幅な修正が入り、銀行担当者から見て「数字が固まらない先」という印象につながりやすい。電子帳簿保存法対応は、この回路の上流にある「日々の記録の確かさ」を底上げする取り組みだと捉えるとよい。融資の場面で活きるのは制度対応そのものではなく、それが支える試算表・決算書の信頼性である。

中小企業が今やるべき最低限の対応ステップ

対応は完璧な要件充足を一度に目指すより、義務の範囲を確実に押さえることから始めるのが現実的だ。第一に、自社の電子取引(メール添付の請求書、ECサイトの領収書、クラウド請求書サービス等)を洗い出す。第二に、それらの電子データを削除・改変せずに保存し、税務調査時にダウンロードと書面提示に応じられる状態を確保する。これは猶予措置の要件にも合致する最低ラインだ。第三に、可能であれば改ざん防止・検索機能の要件を満たす会計・文書管理ソフトを導入し、日々の記帳と保存を連動させる。第四に、要件を満たせる体制が整ったら優良な電子帳簿の届出を検討する。資金繰りや人手の制約で一気に進められない場合でも、最低限「電子データを残し提示できる」状態だけは外さないことが重要になる。

FAQ

よくある質問

Q電子取引データの保存はいつから義務になりましたか?
A

令和6年(2024年)1月から、所得や規模を問わず電子データで取引を行う全事業者に義務付けられています。フリーランスや個人事業主も対象で、メールやECサイトで受け渡しした請求書・領収書などが該当します。

Q紙の請求書も電子化しなければいけませんか?
A

いいえ。義務化されたのは、もともと電子でやり取りした取引情報を電子のまま保存することです。紙でやり取りした書類は従来どおり紙で保存できます。すべての書類を電子化する必要があるという理解は誤りです。

Q保存の要件にすぐ対応できない場合はどうすればよいですか?
A

所轄税務署長が相当の理由があると認める場合の猶予措置があります。事前申請は不要ですが、税務調査時にデータのダウンロードの求めと、印刷した書面の提示・提出に応じられる状態を保つことが条件になります。

Q優良な電子帳簿にするとどんなメリットがありますか?
A

訂正・削除の確認や帳簿間の相互関連性などの要件を満たし、あらかじめ届出書を提出していれば、その帳簿に関する申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されます(隠蔽・仮装に基づくものを除く)。

Q電子データを改ざんするとどうなりますか?
A

スキャナ保存や電子取引の電磁的記録に記録された事項について隠蔽・仮装された事実があった場合、その事実に基づく申告漏れ等に課される重加算税が10%加重されます。架空請求書を電磁的記録で保存している場合も対象になりえます。

Q電子帳簿保存法に対応すると融資審査で有利になりますか?
A

この制度は税務上の保存ルールで、融資審査基準を定める法律ではないため、対応そのものが審査を有利にすると約束するものではありません。ただし記帳の正確性と試算表の早期確定を支え、銀行が見る決算書や月次資料の信頼性に間接的に効きます。

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