決算書から自己資本比率・借入金返済年数・流動比率を計算すると、財務のどこに追加説明が必要かを融資相談前に確認できます。ただし、数値は金融機関共通の合否線ではなく、業種、企業規模、資金使途、過去からの推移と合わせて読む必要があります。この記事は審査全体ではなく、3指標の計算と読み方に絞ります。
この記事で先に確認すること
- 自己資本比率の確認目安
- 10%・20%を段階確認に使用。金融機関・業種で判断は異なる
- 出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
- 借入金返済年数の確認目安
- 5年・10年を段階確認に使用。算式と対象債務は金融機関で異なる
- 出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
- 流動比率の確認目安
- 100%・150%を段階確認に使用。資産内容と業種特性も確認
- 出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
SECTION 01
銀行が決算書で最初に確認する3つの財務指標
銀行の融資担当者が決算書を受け取った際、最初に確認するのは①自己資本比率②借入金返済年数③流動比率の3つだ。この3指標が基準を大きく外れている場合、追加説明なしに審査が難しくなる。
逆に3指標が安定していれば、金利・融資額・返済期間の交渉を有利に進められる可能性がある。決算前に税理士と一緒にこれらの数字を確認しておくことを推奨する。
3つの財務指標:計算式と判断水準
| 指標 | 計算式 | 良好 | 注意 | 危険 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 純資産 ÷ 総資産 × 100 | 20%以上 | 10〜20% | 10%未満 |
| 借入金返済年数 | 有利子負債 ÷ 営業CF | 5年以内 | 5〜10年 | 10年超 |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 150%以上 | 100〜150% | 100%未満 |
SECTION 02
指標が基準を下回っている場合の対処法
自己資本比率が低い場合は、役員報酬の調整・利益の内部留保・増資などで純資産を増やすことが改善策になる。借入金返済年数が長い場合は、既存借入の繰り上げ返済または利益計画の改善が必要だ。
流動比率が低い場合は、売掛金の早期回収・在庫圧縮・短期借入の長期借入への借換えが有効。いずれも1〜2年単位の取り組みが必要なため、融資を予定している決算期の1〜2年前から対策を始めることが理想だ。
SECTION 03
決算書以外で審査に影響するポイント
財務指標以外にも、①税金・社会保険料の滞納の有無②代表者個人の信用情報③事業の将来性(市場縮小業種は要注意)が審査に影響する。特に税金の滞納は財務指標が良好でも即否決になるケースがある。
申込前に国税・地方税の納付状況を確認し、未納があれば完済証明を取得しておくことが必須だ。代表者の個人信用情報にキズがある場合は、申込前に信用情報機関(CIC等)で自己開示を行い、状況を把握しておくことを推奨する。
SECTION 04
公的データで自社の立ち位置を知る:中小企業の平均値とローカルベンチマーク
中小企業庁の「令和5年中小企業実態基本調査」(令和4年度決算実績)によると、中小企業の自己資本比率の平均は41.71%だった。ただしこれは全業種の平均値であり、業種や規模による差が大きいため「平均より低い=融資不可」ではない(本記事の10%・20%という目安は融資審査の実務水準である)。
自社の立ち位置を業種水準と比較したい場合は、経済産業省が無料公開している「ローカルベンチマーク」が使える。売上増加率・営業利益率・労働生産性・EBITDA有利子負債倍率・営業運転資本回転期間・自己資本比率の6つの財務指標で自社を採点できる公式ツールで、金融機関との対話ツールとしても位置づけられている。このうちEBITDA有利子負債倍率(借入金から現預金を引き、営業利益と減価償却費の合計で割った値)は、本記事の「借入金返済年数」と同じく返済能力を測る指標であり、銀行と共通言語で自社の健全性を語る材料になる。
SECTION 05
指標の数値と変動理由を月次資料で結び付ける
自己資本比率、債務償還の見通し、利益率などを計算したら、業界平均や固定的な合格線だけで評価せず、前年から変化した理由を確認します。売掛金の増加が売上成長によるものか回収遅延なのか、在庫増が繁忙期準備か滞留なのかで説明は変わります。
決算書の数字を試算表、資金繰り表、売掛・買掛・在庫の明細と照合し、一時要因と継続要因を分けてください。金融機関へは弱い指標を隠すのではなく、原因、改善策、実行期限、月次で追う指標を示すと、追加確認へ一貫して回答できます。確認結果は、数値、原因、改善担当、期限、翌月の確認方法まで一行で記録し、決算時だけでなく月次の経営管理に使います。
SOURCES
この記事で参照した根拠
- 01
自己資本比率の確認目安
出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
- 02
借入金返済年数の確認目安
出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
- 03
流動比率の確認目安
出典: 当サイトの確認目安(共通の審査基準ではありません)
- 04
中小企業の自己資本比率(平均)
数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。
FAQ
よくある質問
Q債務超過でも融資を受けることはできますか?▼
債務超過(純資産がマイナス)の状態では一般の銀行融資は難しい。日本政策金融公庫のセーフティネット貸付・信用保証協会の危機関連保証など、経営改善を前提とした公的制度を検討することになる。
Q役員借入金が多いと融資審査に影響しますか?▼
役員借入金が多い場合、「実質的に債務超過に近い」とみなされる場合がある。一方、役員借入を資本金に転換(DES)するか、実質的に返済不要な借入として説明できれば評価が変わるケースもある。
Q試算表は決算書と同じように扱われますか?▼
試算表は未確定の数字のため、決算書ほどの証明力はない。ただし決算期から半年以上経過した場合、最新の事業状況を示すために試算表の提出を求める銀行が多い。税理士の確認印があると信頼性が上がる。
Q過去に赤字だった期の決算書は説明が必要ですか?▼
必要。赤字の原因(一時的な特別損失なのか継続的な経営悪化なのか)を担当者に説明できるよう準備する。一時的な要因による赤字は適切に説明できれば大きなマイナスにならないケースもある。
Q財務指標の改善には何年かかりますか?▼
自己資本比率は毎期の利益を内部留保に回すことで徐々に改善する。大きく改善するには通常2〜5年かかるため、融資計画と並行して中期的な財務改善計画を立てることが重要。
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