廃業時経営者保証ガイドライン2024改定版:再チャレンジへの道
公開: 2026-05-22
令和5年11月22日改定の「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」は、廃業手続に早期着手すれば残存資産が増え、自己破産を回避できる可能性を明確化した。保証債務整理を活用すれば華美でない自宅・一定期間の生計費を残したうえで再チャレンジに進める。
この記事のポイント
改定日
令和5年(2023年)11月22日
出典: 中小企業庁「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方の改定について」(2023年11月22日)
残存資産として認められる類型
自由財産(現預金99万円基本)+一定期間の生計費+華美でない自宅
出典: 経営者保証に関するガイドライン研究会「廃業時における経営者保証に関するガイドラインの基本的考え方」(令和5年11月改定)
信用情報への影響
事故情報(ブラックリスト)に登録されない
出典: 全国銀行協会「経営者保証に関するガイドラインQ&A」
保証履行後の残債務の扱い
弁済し切れない残額は原則免除
出典: 金融庁「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理に関する経営者向けパンフレット」(2023年12月13日)
令和5年11月22日改定の核心:早期着手が残存資産を増やす
経営者保証に関するガイドライン研究会(座長:小林信明)は令和5年11月22日、「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」を改定した。改定の核心は、廃業手続に早期着手することで保有資産の減少・劣化が抑えられ、債権者の回収見込額が増える場合、その増加額を上限として保証人の残存資産を上積みできる点を明確化したことにある。具体的には、事業清算後の新たな事業の開始等のため、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅も残存資産に含まれる可能性が示された。これにより「廃業=自己破産・全資産喪失」という従来のイメージから脱却し、経営者が早期相談に踏み切る心理的ハードルが下がった。改定の背景には、令和4年3月の基本的考え方取りまとめ以降「廃業しても破産を回避し得る」取組みが進んできた一方、決断が遅れることで資産が劣化し選択肢が狭まる実例が多発していた事情がある。
「回収見込額の増加額」をどう見積もるか
早期着手による資産劣化防止効果(在庫の二束三文化回避、不動産の維持管理コスト削減、従業員退職金の積み増し抑制など)は、メインバンク・第三者支援専門家(弁護士・公認会計士)・中小企業活性化協議会のスタッフが連携して合理的に見積もる。合理的見積もりが可能であれば、その増加額を上限に保証人の残存資産として上積みが認められる。見積もり根拠は資料化して債権者間で共有することが前提となる。
保証債務整理で残せる資産:自由財産・生計費・華美でない自宅
経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を活用すると、保証人は通常の自己破産より多くの資産を残せる。残存資産として認められるのは①破産手続上の自由財産(現預金99万円が基本)②一定期間の生計費に相当する現預金③華美でない自宅、の3類型だ。生計費は年齢別の標準的な生計費を参考に算定され、再起準備期間として一定期間分が認められる。華美でない自宅については、金融機関が保証人の収入に見合った分割弁済を受け入れる等の方法で住み続けられるよう検討するとされている。さらに、保証履行時点の資産で返済し切れない保証債務の残額は原則として免除される。重要なのは、ガイドラインに基づく整理は信用情報機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)に登録されない点で、自己破産と比較して再チャレンジへの障壁が大幅に低い。
保証債務整理の流れと利用要件:誠実性・経済合理性・免責不許可事由なし
保証債務整理を進める手順は、メインバンクに早期相談 → 第三者支援専門家(弁護士)の選任 → 主債務(法人)の整理手続(特定調停・私的整理・法的整理)と並行して保証債務整理を申立て → 債権者全員の同意を得て弁済計画を成立、という流れになる。利用には①主債務者と保証人の双方が弁済について誠実であること②債権者の求めに応じて財産状況等を適時適切に開示していること③経済合理性があること(破産手続より債権者の回収見込額が増える)④免責不許可事由(浪費・財産隠匿・偏頗弁済など)が生じておらず、そのおそれもないこと、の4要件を満たす必要がある。要件を満たすかどうかは弁護士の初期相談で見極める。中小企業活性化協議会(旧・再生支援協議会)では弁護士資格を持つスタッフが廃業・再スタートに向けた助言と代理人弁護士紹介を無料で行っており、まずここに相談するのが王道の入口だ。経営者保証の解除そのもの(事業継続中の交渉)については「経営者保証を外す方法」のガイド記事も参照されたい。
よくある質問
Q廃業を考えていますが、いつ相談すべきですか?▼
資金繰りが悪化する前の早期相談が原則だ。令和5年11月改定で、早期着手による資産劣化防止額を上限に残存資産が上積みされる枠組みが明確化された。決断が遅れるほど残せる資産が減るため、迷っている段階でメインバンクか中小企業活性化協議会に相談することを推奨する。
Q保証債務整理と自己破産はどう違いますか?▼
保証債務整理は信用情報の事故情報に登録されず、自由財産に加えて一定期間の生計費・華美でない自宅を残せる点が自己破産との最大の違いだ。再チャレンジで新規融資を受ける際の障壁が大幅に低くなる一方、債権者全員の同意を得る必要がある。
Q自宅を残せる「華美でない」の基準はありますか?▼
画一的な金額基準は示されていないが、保証人の収入規模・家族構成・地域水準に照らして社会通念上過大でないことが目安だ。金融機関は分割弁済の受入れ等で保証人が住み続けられる方策を検討するとされており、個別協議で決まる。
Q保証債務整理を使えない場合はどんなケースですか?▼
財産隠匿・偏頗弁済・浪費などの免責不許可事由がある場合や、債権者への財産開示に協力しない場合は利用できない。また主債務(法人)の整理手続と矛盾しない経済合理性が必要で、破産より債権者の回収が悪化する整理案は同意を得られない。
Q再チャレンジ融資はガイドライン整理後に受けられますか?▼
可能だ。日本政策金融公庫は「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」で、廃業経験のある経営者の再起業を支援する制度を設けている。ガイドラインに基づく整理は事故情報に登録されないため、通常の融資審査でも過去の廃業が即座に不利材料にならない。
Q相談窓口はどこですか?▼
中小企業活性化協議会(各都道府県に設置)が無料で初期相談を受け付け、弁護士資格を持つスタッフが助言と代理人弁護士の紹介を行う。メインバンクと中小企業活性化協議会への同時相談が事案を前進させる近道だ。
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