ローカルベンチマーク(ロカベン)で銀行と課題を共有する|伴走支援の入口
公開: 2026-06-07
ローカルベンチマーク(ロカベン)は経済産業省が用意した企業の「健康診断」ツールだ。財務6指標と非財務4視点のシートを軸に、経営者が金融機関・支援機関と現状と本質的な課題を共有する。融資面談に持ち込めば、決算書だけでは伝わらない自社の強みと課題を担当者と同じ目線で語れる。
この記事のポイント
ロカベンの提供元と位置づけ
経済産業省が提供する企業の経営状態を把握するツール(企業の「健康診断」と位置づけられる)
出典: 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」(meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/)
財務情報の6つの指標
①売上高増加率(売上持続性)②営業利益率(収益性)③労働生産性(生産性)④EBITDA有利子負債倍率(健全性)⑤営業運転資本回転期間(効率性)⑥自己資本比率(安全性)
出典: 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」/中小企業庁ミラサポplus(mirasapo-plus.go.jp/hint/19183/)
非財務情報の4つの視点
①経営者への着目②事業への着目③関係者への着目④内部管理体制への着目
出典: 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」/中小企業庁ミラサポplus(mirasapo-plus.go.jp/hint/19183/)
伴走支援との関係
経営者と支援者が対話を重ね、目先の課題でない「本質的な課題」に気づくための「経営力再構築伴走支援」のツールとして位置づけられる
出典: 中小企業庁ミラサポplus「ローカルベンチマークと伴走支援」(mirasapo-plus.go.jp/hint/19183/)
ロカベンとは:3枚のシートで自社を「健康診断」する公式ツール
ローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、経済産業省が提供する企業の経営状態を把握するためのツールで、しばしば企業の「健康診断」にたとえられる。中身は財務情報をまとめる「6つの指標」のシート、取引の流れを描く「商流・業務フロー」のシート、非財務情報を整理する「4つの視点」のシートという3枚組で構成される。経営者が一人で数字を眺めるためのものではなく、金融機関や支援機関などの社外メンバーと一緒にシートを埋めながら対話することで、自社が普段認識していなかった強みや課題に気づくことを狙いとしている。重要なのは「シートに文字を埋めること自体を目的にしない」点で、6指標と4視点はあくまで対話のきっかけであり、そこから現状と課題の認識を関係者で共有することが本来の目的だ。決算書という結果の数字だけでなく、その数字を生んでいる商流や経営体制まで含めて自社を語れるようになるのがロカベンの価値といえる。
ミラサポplusの法人マイページで作成できる
中小企業庁のWebサイト「ミラサポplus」の法人マイページにはロカベンが実装されており、経営の振り返り機会として活用できる。Excel形式のシートも経済産業省のサイトから入手でき、自社の決算データを入力すれば6指標が業種平均と比較してレーダーチャートで可視化される。まずは直近期の数字を入れて自社の現在地を確認するところから始めるのが現実的だ。
財務6指標:銀行が見ている「収益性・健全性・安全性」を自分で点検する
ロカベンの財務パートは6つの指標で構成される。①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己資本比率(安全性)の6つだ。これらは銀行が決算書を読むときに着目する論点とほぼ重なる。営業利益率は本業の稼ぐ力、EBITDA有利子負債倍率は借入をキャッシュフローで何年で返せるかという返済能力、自己資本比率は財務の安全性を示す。ロカベンはこれらを業種平均と比較してレーダーチャートで描くため、自社がどの軸で平均を下回っているか、つまりどこが弱点かが一目でわかる。融資面談の前にこの6指標を自分で点検しておけば、銀行担当者から「営業利益率が下がっているのはなぜか」と問われたときに、こちらから先回りして理由と改善策を説明できる。数字を見られる側ではなく、自社の数字を自分の言葉で語れる側に回ることが対話の質を上げる。
ロカベンの財務6指標と着目される経営の側面
| 指標 | 示す側面 | 銀行が読み取る論点 |
|---|---|---|
| 売上高増加率 | 売上持続性 | 事業が伸びているか・縮小していないか |
| 営業利益率 | 収益性 | 本業で利益を稼げているか |
| 労働生産性 | 生産性 | 一人あたりがどれだけ付加価値を生むか |
| EBITDA有利子負債倍率 | 健全性 | キャッシュフローで借入を何年で返せるか |
| 営業運転資本回転期間 | 効率性 | 運転資金が過大に寝ていないか |
| 自己資本比率 | 安全性 | 財務の余力・債務超過リスク |
非財務4視点:数字に表れない強みと課題を言語化する
ロカベンの真価は、決算書には載らない非財務情報を整理する「4つの視点」にある。①経営者への着目(経営者自身の経歴・ビジョン・後継者の有無)、②事業への着目(自社の強み・弱み・ビジネスモデルの特徴)、③関係者への着目(顧客・取引先・従業員・株主など内外の関係者との関係性)、④内部管理体制への着目(組織体制・人材育成・情報管理の仕組み)の4つだ。あわせて作成する「商流・業務フロー」のシートでは、仕入から販売までの流れと、その各段階で誰がどんな価値を提供しているかを描き出す。これらを支援者と一緒に埋めていく過程で、「うちの強みは技術力だと思っていたが、実は特定顧客との長年の信頼関係だった」といった気づきが生まれることが多い。銀行は近年、財務だけでなく事業性評価(事業の中身を見た融資判断)を重視しており、非財務4視点で言語化した強みは、決算が振るわない局面でも「この会社は支援する価値がある」と担当者に伝える材料になる。
「本質的な課題」は目先の課題の奥にある
経営者が口にする課題は「売上が足りない」「資金繰りが厳しい」といった目先の症状であることが多い。ロカベンを使った対話は、その症状の奥にある本質的な課題(例:特定顧客への過度な依存、価格決定権の弱さ、後継者不在による投資の停滞)を支援者とともに掘り下げる。シートの項目を意識した問いかけを重ねることで、経営者自身が納得して課題に気づき、自ら能動的に動き出す。これが中小企業庁が掲げる「経営力再構築伴走支援」の核心であり、ロカベンはその入口になるツールだ。
融資面談でロカベンを使う:対話の質を上げる具体的な進め方
ロカベンは作って終わりではなく、金融機関との対話に持ち込んでこそ意味がある。具体的には、初回や定例の銀行面談に6指標のレーダーチャートと非財務4視点のシートを持参し、「自社の現状認識」として担当者に共有する。決算書を渡すだけだと銀行側が一方的に評価する構図になるが、ロカベンを挟むと「自社をどう見ているか」を経営者から先に開示でき、認識のズレをその場で埋められる。弱い指標については「この軸が業種平均を下回っているが、来期はこう改善する」と計画を添える。強みについては非財務4視点で言語化したストーリーを語る。こうした対話を通じて、経営者・従業員・金融機関・支援機関の間で現状と課題の認識が共有されることがロカベン活用の最大の効果だ。担当者は面談内容を稟議や事業性評価の材料として使えるため、結果として融資判断の精度が上がり、企業側も納得感のある支援を受けやすくなる。なお、ロカベンは補助金の申請書類として求められる場面もあり、日頃から作成・更新しておくと資金調達全般で役立つ。
よくある質問
Qローカルベンチマーク(ロカベン)は誰が作るものですか?▼
基本は経営者が自社のために作るツールだが、一人で完結させるよりも金融機関や支援機関(税理士・中小企業診断士・商工団体など)と一緒にシートを埋めながら対話することが推奨されている。社外の視点が入ることで、自社では気づけなかった強みや本質的な課題が見えてくるためだ。
Qロカベンの財務6指標とは具体的に何ですか?▼
①売上高増加率(売上持続性)②営業利益率(収益性)③労働生産性(生産性)④EBITDA有利子負債倍率(健全性)⑤営業運転資本回転期間(効率性)⑥自己資本比率(安全性)の6つだ。決算データを入力すると業種平均と比較してレーダーチャートで可視化され、自社の弱点が一目でわかる。
Q非財務情報の4つの視点とは何を整理するものですか?▼
①経営者への着目②関係者への着目③事業への着目④内部管理体制への着目の4つだ。経営者の経歴やビジョン、顧客・従業員との関係、自社の強み弱み、組織や管理の仕組みといった、決算書には表れない情報を言語化する。あわせて商流・業務フローのシートで取引の流れと各段階の価値提供を描く。
Qロカベンは融資にどう役立ちますか?▼
融資面談に6指標と4視点のシートを持参すると、決算書を渡すだけの一方的な評価ではなく、自社の現状認識を経営者から先に開示して認識のズレを埋められる。銀行は近年、財務だけでなく事業の中身を見た事業性評価を重視しており、非財務で言語化した強みは決算が振るわない局面でも支援価値を伝える材料になる。
Q「経営力再構築伴走支援」とロカベンはどう関係しますか?▼
経営力再構築伴走支援は、経営者と支援者が対話を重ねて目先でない「本質的な課題」に経営者自身が気づき、納得して能動的に動くことを目指す支援だ。その対話の入口として、本質的な課題を発見するためにロカベンが使われる。ロカベンはこの伴走支援を始める共通言語の役割を果たす。
Qロカベンのシートはどこで入手できますか?▼
経済産業省のローカルベンチマークの公式ページからExcel形式のシートを入手できるほか、中小企業庁のWebサイト「ミラサポplus」の法人マイページにロカベンが実装されており、オンラインで作成・振り返りができる。まずは直近期の決算データを入力して自社の現在地を確認するところから始めるとよい。
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