医療機器の調達は融資とリースのどちらが有利かが頻繁な論点になる。長く使える手術機器・基幹設備は融資購入で総コストを抑えやすく、技術更新が速い画像診断機器(CT・MRI)はリースで陳腐化リスクを回避しやすい。WAM医療貸付や銀行設備融資の制度設計を理解して最適な組合せを選ぶことが重要だ。
要点
この記事で先に確認すること
- WAM医療貸付 高額医療機器の償還期間
- 高額な医療機器は5年以内、先進医療に使用する機器は10年以内(いずれも据置6か月以内)
- 出典: 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「ご融資の種類(病院)」(https://www.wam.go.jp/hp/guide-iryokashitsuke-kind-tabid-366/)
- WAM医療貸付 診療所の機械購入資金
- 診療所の新設に伴い新築資金を利用する場合のみ。2,500万円以内(救急診療所3,000万円・健診センター4,500万円・共同利用施設6,000万円)、購入価格の80%以内(1品10万円以上)、償還5年以内(据置6か月以内)
- 出典: 独立行政法人福祉医療機構「ご融資の種類(診療所)」(https://www.wam.go.jp/hp/guide-iryokashitsuke-kind_clinic-tabid-378/)
- 医療用機器の特別償却(令和9年3月31日までの取得)
- 青色申告で医療保健業を営む個人・法人が1台500万円以上の新品の対象機器を取得した場合に取得価額の12%。所有権移転外リースで取得したものは対象外
- 出典: e-Gov法令検索「租税特別措置法」第12条の2・第45条の2(https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026)、厚生労働省「医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001621957.pdf)
SECTION 01
医療機器調達の3つの選択肢:融資購入・リース・割賦の特徴整理
医療機器の調達手段は大きく①融資購入(銀行・WAM・日本政策金融公庫)、②リース、③割賦販売の3つに分かれる。融資購入は機器を自社資産として保有するため減価償却ができ、長期使用時の総コストが最も低くなりやすい。
リースは初期費用負担が小さく、リース料が全額損金算入できる点と固定資産税・動産総合保険などの管理事務をリース会社が担う点が運営上の利点だ。割賦販売は所有権が分割払い完了時に移転する形式で、融資とリースの中間的な性格を持つ。
どの手段を選ぶかは機器の耐用年数・技術更新スピード・自院の自己資金余力で判断することになる。
医療機器の融資購入とリースの比較
| 項目 | 融資購入 | リース |
|---|---|---|
| 所有権 | 自院に帰属(資産計上・減価償却) | リース会社に帰属(リース期間中は使用権のみ) |
| 初期費用 | 頭金または全額融資。担保設定が必要なケースあり | 原則不要(保証金のみ) |
| 月額支払 | 元利返済(低金利で抑えやすい) | リース料(金利相当分+管理費を含む) |
| 総支払額 | 長期保有なら最も低くなりやすい | 同期間で比較すると融資購入より高くなる傾向 |
| 会計処理 | 減価償却+支払利息 | リース料を賃借料として損金経理(所有権移転外リースは税務上リース期間定額法の償却費として扱う) |
| 機種更新 | 売却・下取りが必要 | 契約満了で返却・再リースを選択可 |
| 向いている機器 | 長く使える手術台・滅菌器・基幹設備 | 技術更新が速いCT・MRI・電子カルテ |
SECTION 02
WAM医療貸付と銀行設備融資の使い分け:1品5,000万円が基準線
高額医療機器の融資は調達ルートが複数存在する。独立行政法人福祉医療機構(WAM)の医療貸付のうち、病院向けの高額医療機器の融資は「1品あたり購入価格5,000万円以上の高額医療機器」で「民間金融機関が融資しない場合の資金」を融資対象とする。
融資上限は7億2,000万円以内・購入価格の80%まで、償還期間は高額な医療機器で5年以内、先進医療に使用する機器で10年以内(いずれも据置6か月以内)で、金利は融資契約時点の金利が適用される。これに対し1品5,000万円未満の医療機器(一般的な超音波装置・内視鏡・電子カルテ等)は民間銀行のプロパー設備融資・信用保証協会付き融資・日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資が中心的な調達手段になる。
WAMの直接貸付の窓口は、東日本が東京本部、西日本が大阪支店だ。WAMの高額医療機器の融資は病院が対象で、民間金融機関が融資しない場合の資金のため、取引銀行に申し込んだ結果を踏まえて検討する順番になる。
WAM医療貸付の申込で準備すべき書類
WAMの高額医療機器の融資には「民間金融機関が融資しない」という要件がある。同機構の「物価高騰の影響を受けた病院の高額医療機器購入資金の取扱いに係るQ&A」では、申込者が民間金融機関に申し込んで断られた経緯を提出し、機構が金融機関に照会して確認するとしている。通常の高額医療機器の融資での確認方法は、機構の窓口で確かめる。
資金計画の説明には、機器の見積書・直近の決算書・設備投資後の収益シミュレーションをそろえておく。通常の機械購入資金の据置期間は6か月以内で、その範囲で機器の搬入・試運転・診療開始までの元本返済を据え置ける。
診療所の機械購入資金(WAM)と日本政策金融公庫の一般貸付
WAMの診療所向けの機械購入資金は、診療所の新設に伴い新築資金を利用した場合にだけ使える。融資額は2,500万円以内(救急診療所3,000万円、健診センター4,500万円、共同利用施設6,000万円以内)で、購入価格の80%以内(1品10万円以上の機器)が対象、償還期間は5年以内(うち据置6か月以内)だ。
開業済みの診療所が機器だけを買い替える場合はこの資金を使えないため、民間銀行・日本政策金融公庫の融資やリースが主な選択肢になる。公庫「国民生活事業のご案内2026」の融資制度一覧(2026年6月末時点)では、日本政策金融公庫(国民生活事業)の一般貸付の融資限度額は4,800万円(特定設備資金は7,200万円)だ。返済期間は設備資金10年以内・特定設備資金20年以内(いずれも据置期間2年以内)になっている。
開業時の新築資金との組み合わせ方はクリニック開業の融資パッケージで整理している。
SECTION 03
高額医療機器(CT・MRI・手術機器)の調達判断:陳腐化リスクと総コスト
高額医療機器の融資とリースの選択は「機器の技術更新サイクル」と「自院での想定使用年数」のどちらを優先するかで決まる。CT・MRIは法定耐用年数6年で、メーカーが3〜5年ごとに新世代機を発売するため陳腐化リスクが高い。最新の画像精度・撮影時間を保つことが診療報酬・患者満足度に直結する科目(整形外科・脳神経外科・がん専門外来)では、リース契約満了時に最新機種へ乗り換える戦略が有効になる。
一方、手術台・滅菌装置・透析装置などは法定耐用年数(手術機器5年・消毒殺菌用機器4年・透析機器7年)に対し実際の使用年数が長く、技術更新も緩やかなため、融資購入で減価償却を取り総コストを抑える判断が合理的だ。
年間使用率が極めて高い基幹設備は故障時のダウンタイムが診療収入を直撃するため、保守契約の手厚さで調達手段を選ぶケースもある。リース契約には保守がパッケージ化されていることが多く、自院の保守体制が薄い場合の選択肢になる。
医療機器の法定耐用年数と医療用機器の特別償却(12%)
国税庁の耐用年数表(器具及び備品の「医療機器」)では、歯科診療用ユニットが7年、光学検査機器はファイバースコープが6年・その他が8年だ。レントゲンその他の電子装置を使用する機器は移動式・救急医療用・自動血液分析器が4年・その他が6年で、返済期間やリース期間を決める目安になる。
所有権移転外リース取引では、税法上は借り手がリース資産を取得したものとされ、リース期間定額法で償却する。法人がリース料を賃借料として損金経理した金額も、償却費として扱われる(法人税法施行令第131条の2第3項)。
購入の場合、青色申告で医療保健業を営む個人・法人が、1台500万円以上の新品の対象機器を令和9年3月31日までに取得して事業に使うと、取得価額の12%を特別償却できる(租税特別措置法第12条の2・第45条の2)。対象機器は、高度な医療の提供に資するもの又は医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内の医療機器に限られるため(厚生労働省)、個別の機器が当たるかは取得前に確かめる。所有権移転外リースで取得した機器はこの特別償却の対象外で、融資購入とリースを比べるときの差の一つになる。
SOURCES
この記事で参照した根拠
- 01
WAM医療貸付 高額医療機器の融資上限
- 02
WAM医療貸付 高額医療機器の償還期間
出典: 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「ご融資の種類(病院)」(https://www.wam.go.jp/hp/guide-iryokashitsuke-kind-tabid-366/)
- 03
WAM医療貸付の金利体系
- 04
WAM医療貸付 診療所の機械購入資金
出典: 独立行政法人福祉医療機構「ご融資の種類(診療所)」(https://www.wam.go.jp/hp/guide-iryokashitsuke-kind_clinic-tabid-378/)
- 05
医療用機器の特別償却(令和9年3月31日までの取得)
出典: e-Gov法令検索「租税特別措置法」第12条の2・第45条の2(https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026)、厚生労働省「医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001621957.pdf)
数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。
FAQ
よくある質問
QCT・MRIなどの高額画像診断機器はリースと融資のどちらが有利ですか?▼
技術更新が3〜5年で進む画像診断機器は、リースで契約満了時に最新機種に乗り換える戦略が有効なケースが多い。ただし長期保有予定(10年以上)であれば融資購入の方が総支払額を抑えやすい。自院の機種更新方針と診療報酬の改定動向を踏まえて判断する必要がある。
QWAM(福祉医療機構)の医療貸付は民間銀行融資と併用できますか?▼
WAMの病院向けの高額医療機器の融資は「民間金融機関が融資しない場合の資金」が対象のため、原則として民間銀行で対応困難な部分を補完する形になる。福祉医療機構の協調融資制度は、機構と民間金融機関が覚書を締結し、両者が併せて融資を行う制度で、社会福祉事業施設と医療関係施設の事業が対象だ。WAMの案内では、2026年5月2日時点で全国429の民間金融機関と覚書を締結しており、利用するときは機構に相談・借入申込を行うとともに、覚書を締結している金融機関へ申し込む。
診療所の機械購入資金は、診療所の新設に伴い新築資金を利用する場合にだけ使え、一般の診療所で2,500万円以内(救急診療所・健診センター・共同利用施設は別の限度額)だ。これを超える医療機器の資金は民間金融機関や日本政策金融公庫の融資、リースなどで賄うことになるため、どの資金をどちらから借りるかは申込先の双方に資金計画全体を示して相談する。
Qリース契約の途中で機器を返却・解約することはできますか?▼
原則として中途解約はできない。やむを得ず解約する場合は残リース料相当額を一括で支払う必要があるため、契約時に最低使用年数を確実に見込めるかを慎重に判断することが重要だ。新機種への乗り換えはリース期間満了に合わせるのが基本的な使い方になる。
Q医療法人化前の個人診療所でも高額医療機器の融資は受けられますか?▼
個人診療所でも民間銀行融資・日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資は申込可能だ。WAM医療貸付も個人を融資対象者に含むが、診療所の機械購入資金は診療所の新設に伴い新築資金を利用する場合に限られ、1品5,000万円以上の高額医療機器の融資は病院が対象になる。いずれの融資も審査では事業計画書の精度・自己資金比率・院長の診療経歴が重視されるため、開業前から計画書類を整備しておくことが必要になる。
Q医療機器の融資審査で重視されるポイントは何ですか?▼
機器導入後の診療収入シミュレーション・想定患者数の根拠・既存患者層との整合性が最も重視される。CT・MRIなど高額機器は減価償却負担が大きいため、画像診断料の年間収入見込みが返済原資として説明できるかが審査通過の鍵になる。診療科別の保険点数を根拠とした収益計画書を準備しておくことが推奨される。
Q医療機器の中古品でも融資・リースの対象になりますか?▼
中古医療機器も融資・リースの対象になるケースがある。融資では担保評価額が新品より低くなるため融資可能額が抑えられることがあり、リースでは取扱可否がリース会社の方針による。中古機器は保守体制・修理部品供給期間の確認が前提条件になるため、メーカー・販売店の対応状況を契約前に確認する必要がある。
なお、租税特別措置法の医療用機器の特別償却(取得価額の12%)は、製作の後に事業の用に供されたことのない機器が対象のため、他で事業に使われた中古機器には使えない。
Q所有権移転外リースで導入した医療機器にも医療用機器の特別償却は使えますか?▼
使えない。租税特別措置法の医療用機器の特別償却(取得価額の12%)は、所有権移転外リース取引で取得した機器を対象から除いている。対象は、青色申告で医療保健業を営む個人・法人が、1台500万円以上の新品の対象機器を令和9年3月31日までに取得し、事業に使った場合だ。
対象機器は、高度な医療の提供に資するもの又は医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内の医療機器に限られる。
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