新事業進出・ものづくり補助金(統合後)3枠の違いと選び方
公開: 2026-06-05
2026年に統合される新事業進出・ものづくり補助金は、公表ベースで「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠に整理される見込みだ。本稿は各枠の補助上限・補助率・対象事業の違いと、自社の事業内容・投資規模・海外展開有無からどの枠を選ぶべきかの判断軸を比較形式で解説する。
この記事のポイント
統合後の申請枠(公表ベース)
「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠構成。革新枠は既存事業の付加価値向上、新事業進出枠は既存と異なる新市場進出、グローバル枠は海外市場開拓・輸出を支援する設計
出典: 補助金ポータル「2026年度は新事業進出補助金とものづくり補助金が統合!」(hojyokin-portal.jp/columns/shinjigyo_monodukuri)、中小企業庁 令和8年度予算資料「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」(chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r8/shinjigy_mono.pdf)
革新的新製品・サービス枠 補助上限・補助率(公表ベース)
従業員5人以下750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円(大幅賃上げ特例時 最大3,500万円)。補助率1/2(小規模・再生事業者は2/3、賃金特例で2/3)
出典: プロコン補助金.com「【2026年】ものづくり補助金と新規事業進出補助金が統合|申請枠毎の採択に向けたポイント」(procon-hojyokin.com/mono_sinjigyo_togo/)、補助金ポータル
新事業進出枠 補助上限・補助率(公表ベース)
従業員20人以下2,500万円/21〜50人4,000万円/51〜100人5,500万円/101人以上7,000万円(大幅賃上げ特例時 最大9,000万円)。補助率1/2(賃金特例で2/3)
出典: プロコン補助金.com「ものづくり補助金と新規事業進出補助金が統合|申請枠毎の採択ポイント」(procon-hojyokin.com/mono_sinjigyo_togo/)、補助金ポータル(hojyokin-portal.jp/columns/shinjigyo_monodukuri)
グローバル枠 補助上限・補助率(公表ベース)
従業員規模別に設定され最大7,000万円(大幅賃上げ特例時 最大9,000万円)。補助率2/3。旧ものづくり補助金グローバル枠の最大3,000万円(2025年特例で4,000万円)から大幅引き上げ
出典: 補助金ポータル(hojyokin-portal.jp/columns/shinjigyo_monodukuri)、行政書士法人Tree「ものづくり補助金グローバル枠|海外市場開拓(輸出)・インバウンド対応・海外直接投資」(office-tree.jp/blog/subsidy/monodukuri-global-waku/)
統合後の予算規模・採択件数・公募スケジュール(公表ベース)
予算規模 約2,960億円/令和8年度末までに公募3回程度・採択予定合計 約6,000件/公募要領公開は2026年6月、申請受付開始は2026年8月見込み
出典: 補助金ポータル(hojyokin-portal.jp/columns/shinjigyo_monodukuri)、プロコン補助金.com(procon-hojyokin.com/mono_sinjigyo_togo/)
3枠の全体像:革新・新市場進出・海外展開で対象が分かれる
2026年に統合される新事業進出・ものづくり補助金は、公表ベースで申請枠が3つに整理される見込みだ。第1の「革新的新製品・サービス枠」は、旧ものづくり補助金の中心機能を引き継ぐ枠で、既存事業をベースに技術力・付加価値を大きく高める革新的な製品・サービス開発を支援する。補助上限は従業員規模に応じて750万円〜2,500万円(大幅賃上げ特例時 最大3,500万円)と3枠の中では最も小さく、補助率は原則1/2だ。第2の「新事業進出枠」は、旧新事業進出補助金を引き継ぐ枠で、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する。補助上限は20人以下2,500万円〜101人以上7,000万円(特例時 最大9,000万円)と大きく、新分野展開に伴う大規模投資に対応する。第3の「グローバル枠」は、海外市場の開拓・輸出・インバウンド対応・海外直接投資を支援する枠で、補助率2/3・補助上限最大7,000万円(特例時 9,000万円)と、3枠の中で補助率が最も高い。要するに「既存事業の延長線上で革新するか」「全く別の新市場に出るか」「海外に出るか」という事業の方向性が、そのまま枠選びの第一基準になる。
3枠の補助上限・補助率・対象事業の比較(公表ベース)
| 項目 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 対象事業 | 既存事業の付加価値を高める革新的開発 | 既存と異なる新市場・新分野への進出 | 海外市場開拓・輸出・海外直接投資 |
| 補助上限の代表値 | 750万〜2,500万円(特例3,500万円) | 2,500万〜7,000万円(特例9,000万円) | 従業員規模別・最大7,000万円(特例9,000万円) |
| 補助率 | 1/2(小規模・再生は2/3) | 1/2 | 2/3 |
| 引き継ぎ元 | 旧ものづくり補助金 | 旧新事業進出補助金 | 旧ものづくり補助金グローバル枠(大幅拡張) |
| 向く事業者 | 生産性向上・試作開発が中心の事業者 | 本業と別の新分野に踏み出す事業者 | 輸出・海外展開を計画する事業者 |
自社に合う枠の選び方:事業方向×投資規模×補助率の3軸で絞る
3枠は対象事業が重なる部分もあるため、機械的に選ぶのではなく3つの軸で絞り込む。第1の軸は「事業の方向性」だ。既存事業の生産性向上・革新的な製品/サービス開発が中心なら革新的新製品・サービス枠、本業と異なる新市場・新分野への進出なら新事業進出枠、海外市場の開拓・輸出強化なら必ずグローバル枠を検討する。海外展開要素がある事業は、補助率2/3のグローバル枠が補助率1/2の他枠より資金面で有利になりやすい。第2の軸は「投資規模」だ。革新枠の補助上限は最大2,500万円(特例3,500万円)にとどまるため、補助対象経費が大きい大規模投資は新事業進出枠やグローバル枠の方が補助上限の天井が高く適している。逆に数百万〜1,000万円規模の試作・設備投資なら革新枠で十分カバーできる。第3の軸は「自社の事業計画が枠の趣旨と整合するか」だ。統合後は1つの制度の中でどの枠として整理するかが問われる設計で、新市場進出性が弱い計画を無理に新事業進出枠に当てはめると審査で不利になる。事業計画の実態に最も近い枠を選ぶのが採択への近道だ。
迷ったときの優先順位:海外要素→新市場性→投資規模の順で確認
複数枠の対象に当てはまりそうで迷う場合は、確認の順序を固定するとブレない。まず海外市場開拓・輸出・海外直接投資の要素があるかを確認し、あればグローバル枠(補助率2/3)を第一候補にする。次に、海外要素がなければ「既存事業の延長か、別の新市場進出か」を判定し、本業と明確に異なる新分野なら新事業進出枠、既存事業の革新なら革新的新製品・サービス枠を選ぶ。最後に投資規模を当てはめ、補助上限の天井が自社の補助対象経費を賄えるかを確認する。なお補助上限・補助率・対象要件は統合後の公募要領(2026年6月公開見込み)で正式確定するため、応募前に必ず最新の公募要領で枠の定義と数値を再確認する必要がある。
賃上げ要件と補助金活用の前提:枠を問わず共通する審査の重点
どの枠を選ぶ場合でも、統合後の制度では賃上げ計画が審査・補助上限の鍵になる。公表ベースの要件では、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均で一定率以上増加させる見込みであることや、事業を実施する都道府県の最低賃金より一定額高い水準を維持する見込みであることが求められる設計だ。各枠とも「大幅賃上げ特例」を達成すると補助上限額が引き上げられる構造で、たとえば革新的新製品・サービス枠は最大2,500万円が特例時3,500万円に、新事業進出枠・グローバル枠は最大7,000万円が特例時9,000万円まで拡大する。一方で、補助率1/2の枠は補助対象経費の半額、補助率2/3のグローバル枠でも3分の1は自己負担となる。さらに補助金は補助事業完了後の精算払いが原則で、設備購入・工事費は事業者が一度全額立て替えてから補助金が入金される。そのため枠選びと並行して、自己負担分の長期借入と補助金交付までのつなぎ融資をどう組むかを早期に設計しておくことが、補助金活用を成立させる前提になる。賃上げ要件を達成できないと補助金返還リスクが生じる設計も想定されるため、賃上げ計画の実現可能性も含めて事業計画に織り込む必要がある。
補助金の自己負担分とつなぎ融資は枠決定と同時に設計する
グローバル枠で補助上限7,000万円(特例9,000万円)を狙う大型案件ほど、補助対象経費の総額は1億円超になりやすく、事業実行時点での立て替え負担が大きい。標準的な組み立ては、メインバンク(地銀・信用金庫)の設備資金長期借入で自己負担分を調達し、補助金交付までのつなぎ融資を短期借入で別途組成、さらに政府系金融機関の政策金融を併用する形だ。商工中金や日本政策金融公庫は補助金交付決定通知を裏付けとしたつなぎ融資の相談先になり、メインバンクで枠が不足した場合の次の選択肢になる。枠を決めた段階で採択時の資金繰り計画書を作成し、金融機関に事前相談しておくと、採択後の資金調達がスムーズになる。
よくある質問
Q統合後の新事業進出・ものづくり補助金は何枠ありますか?▼
公表ベースでは「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠に整理される見込みだ。革新枠は既存事業の付加価値向上、新事業進出枠は既存と異なる新市場進出、グローバル枠は海外市場開拓・輸出を支援する設計とされている。正式な枠の定義は2026年6月公開見込みの公募要領で確定する。
Q革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠はどう違いますか?▼
革新的新製品・サービス枠は既存事業をベースに技術力・付加価値を高める革新的な製品/サービス開発が対象で、補助上限は最大2,500万円(特例3,500万円)と小さめだ。新事業進出枠は既存事業と異なる新市場・新分野への進出が対象で、補助上限が最大7,000万円(特例9,000万円)と大きい。本業の延長か、別の新分野への進出かで使い分ける。
Qグローバル枠を選ぶべきなのはどんな場合ですか?▼
海外市場の開拓・輸出強化・インバウンド対応・海外直接投資など、海外展開の要素を含む事業ならグローバル枠を検討する。補助率が2/3と3枠の中で最も高く、補助上限も最大7,000万円(特例9,000万円)と旧制度の最大3,000万円から大幅に引き上げられているため、海外要素のある事業では資金面で有利になりやすい。
Q複数の枠の対象に当てはまりそうな場合はどう選びますか?▼
確認の順序を固定するとブレない。まず海外市場開拓・輸出・海外直接投資の要素があればグローバル枠(補助率2/3)を第一候補にし、海外要素がなければ「既存事業の革新か、別の新市場進出か」で革新枠か新事業進出枠を判定する。最後に投資規模を当てはめ、補助上限の天井が自社の補助対象経費を賄えるかを確認する。事業計画の実態に最も近い枠を選ぶのが採択への近道だ。
Q補助上限額が「特例時」に増えるのはどういう条件ですか?▼
各枠とも「大幅賃上げ特例」を達成すると補助上限額が引き上げられる設計だ。たとえば革新的新製品・サービス枠は最大2,500万円が特例時3,500万円に、新事業進出枠・グローバル枠は最大7,000万円が特例時9,000万円まで拡大する。具体的な賃上げ率・最低賃金の引き上げ基準は2026年6月公開見込みの公募要領で正式確定するため、応募前の確認が必要だ。
Q枠を決めたら補助金だけで投資をまかなえますか?▼
まかなえない。補助率1/2の枠は補助対象経費の半額、補助率2/3のグローバル枠でも3分の1は自己負担となる。さらに補助金は補助事業完了後の精算払いが原則で、設備購入・工事費は事業者が一度全額立て替えてから入金される。自己負担分の長期借入と補助金交付までのつなぎ融資を、枠決定と同時に金融機関と設計しておく必要がある。
Q統合後の補助金はいつから申請できますか?▼
公表ベースでは公募要領の公開が2026年6月、申請受付開始が2026年8月見込みとされている。令和8年度末までに公募3回程度・採択予定合計約6,000件、予算規模約2,960億円の枠組みとされる。スケジュールと要件は変動する可能性があるため、中小企業庁・事務局の公式サイトで最新の公募要領を確認する必要がある。
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