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銀行内部格付けの改善計画

月次試算表と経営改善計画の進め方

執筆: 法人融資ナビ編集部 / 公開: 2026-05-22 / 更新: 2026-10-02

銀行内部格付けや債務者区分は金融機関が個別に判断するため、「3か月で1段階上がる」と保証できるものではありません。一方、現状診断、実質財務の整理、月次試算表、経営改善計画を順に整えることで、銀行が改善を確認できる材料は増やせます。着手から金融機関への提示までの行動計画として整理します。

要点

この記事で先に確認すること

01
経営改善計画の進捗と金融庁の監督指針の「概ね8割」
計画期間が5年を超え概ね10年以内の経営改善計画では、進捗が概ね計画どおり(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保)であることが要件の一つ。中小企業で8割に満たない場合も、進捗だけで機械的・画一的に判断しない。債権区分の判断の目安で、区分の引き上げを約束するものではない
出典: 金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年10月)Ⅲ-4-9-4-3(4)要管理債権(https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho.pdf)
02
中小企業の区分引き上げに必要な計画期間
計画期間が原則として概ね5年以内で、計画の実現可能性が高いこと(5年を超え概ね10年以内でも、進捗が概ね計画どおりで今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む)。計画期間終了後に、業況が良好で財務内容にも特段の問題がない状態となる計画であることも要件の一つ(金融機関の再建支援なしに自助努力で事業を続けられる状態となる場合は、今後の管理に注意を要する状態を含む)。要件をすべて満たせば、債権は要管理債権又は正常債権と判断して差し支えないとされる
出典: 金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年10月)Ⅲ-4-9-4-3(4)要管理債権(https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho.pdf)
03
405事業(経営改善計画策定支援事業)の補助内容
認定支援機関への支払費用の3分の2を補助、上限300万円(計画策定費用・伴走支援費用)。経営者保証解除関連は別途上限10万円。窓口は全国47都道府県の中小企業活性化協議会
出典: 中小企業基盤整備機構(smrj.go.jp/sme/succession/improvement-plans.html)・中小企業庁「経営改善計画策定支援」
04
定量評価で重視される2指標の水準
自己資本比率に求められる水準は金融機関・商品ごとに異なる(公表例:東京信用保証協会の当座貸越の保証「当貸ホップ」は直近決算で15%以上が要件の一つ。売上高1億円以上・業歴3年以上なども要件)。債務償還年数の区切りも金融機関ごとに異なる(公的な基準の例:事業再生計画の終了年度に有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下)
出典: 東京信用保証協会「当座貸越根保証制度について」(自己資本比率の公表例)・中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(令和8年3月一部改定。債務償還年数の公的な基準の例)
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SECTION 01

第1段階(着手〜1ヶ月):現状診断と銀行視点での自己査定

区分引き上げを狙うなら、最初の1ヶ月で「銀行から自社がどう見えているか」を逆算する作業が必要だ。直近3期分の決算書を並べ、自己資本比率(純資産÷総資産)と債務償還年数(有利子負債÷(経常利益+減価償却費))の推移をまず計算する。

債務償還年数を何年で区切って見るかは、金融機関ごとに異なる。公的な基準の例では、中小企業の事業再生等に関するガイドライン(令和8年3月一部改定)が、事業再生計画の終了年度に有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にする内容を求めている。

自己資本比率に求められる水準は金融機関・商品ごとに異なる。公表されている例では、東京信用保証協会の当座貸越(枠の範囲で出し入れできる借入)の保証「当貸ホップ」が、直近の決算で自己資本比率15%以上を要件の一つにしている(売上高1億円以上・業歴3年以上なども要件)。

次に「実質財務」への補正項目を洗い出す。役員借入金は表面上は他人資本だが、返済劣後特約や金融機関の確認文書を整えれば「資本性借入金」として実質的な自己資本扱いに振り替えられる余地がある。

不良在庫・回収不能売掛金・遊休不動産は実質純資産から差し引かれる項目で、簿価のまま放置していると表面財務より厳しく評価される。代表者個人の資産背景も中小企業特性勘案として加味される枠組みがあり、これらを棚卸しすることで「銀行が見ている実質的な自社の姿」が初めて掴める。

銀行に直接聞ける質問と聞けない質問

債務者区分そのものを開示する義務は銀行にない。ただし担当者に「当行から見て当社の財務上の課題と改善余地はどこにありますか」と聞けば、改善ポイントの語られ方から、銀行が見ている課題がつかめる。

「自己資本比率がもう少し欲しい」と言われれば自己資本の薄さが課題と見られており、「順調に推移している」なら大きな課題は指摘されていないと受け取れる。ただし、言われ方と格付けの位置の対応は公表されておらず、金融機関ごとの判断になる。決算説明の場で前向きに聞くと回答が得られやすい。

SECTION 02

第2段階(2〜3ヶ月):決算前の合法的な数値調整と実質財務改善

決算月の3ヶ月前から動かせる打ち手は限られているが、効果は大きい。

第一に役員借入金の整理だ。代表者が会社に貸し付けた資金を①資本金へ振り替える(DES:デット・エクイティ・スワップ)②返済劣後特約付きの覚書を交わし「資本性借入金」として銀行に届け出る、のいずれかで自己資本比率が直接改善する。司法書士・税理士と必ず連携して進める。

第二に不良資産の処理。簿価の高い在庫・回収不能の売掛金・実際に使っていない遊休不動産や旧設備を売却・除却することで、総資産が圧縮され自己資本比率の分母が小さくなり比率が改善する。

第三に役員報酬の調整。次期以降の話だが、業界水準・売上規模に見合わない高額役員報酬は「法人の収益力が低い」と評価されるため、適正水準に戻すことで実効利益が改善する。

これらは全て「合法的な数値の整え方」であり、粉飾ではなく実態の見える化に近い性質を持つ。

決算前3ヶ月で動かせる主な改善アクション

アクション影響する指標実行時期の目安
役員借入金の資本組入(DES)自己資本比率(分子増)決算月の2〜3ヶ月前に司法書士相談
返済劣後特約付き覚書で資本性借入金化自己資本比率(実質判断)決算月の1〜2ヶ月前に銀行と協議
不良在庫・回収不能売掛金の処理実質純資産(資産の質向上)決算月の3ヶ月前から着手
遊休不動産・旧設備の売却・除却自己資本比率(分母減)決算月の3〜6ヶ月前に売却交渉開始
役員報酬の適正化経常利益・利益率事業年度開始3ヶ月以内に決定(途中変更不可)
不要な保有株式・ゴルフ会員権の処分実質純資産・固定資産圧縮決算月の2〜3ヶ月前

SECTION 03

第3段階(4〜6ヶ月):経営改善計画書の作成と銀行への正式提示

区分引き上げを銀行に正式に認めさせるには、口頭交渉ではなく文書化された経営改善計画書が必要になる。

金融庁の中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針は、計画期間が5年を超え概ね10年以内の経営改善計画について、進捗が概ね計画どおり(「売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保されている」)であることを要件の一つに挙げている。中小企業で8割に満たない場合も、進捗だけで機械的・画一的に判断せず、要因と今後の見通しを検討するとしている。これは債権区分を判断する際の目安で、区分の引き上げを約束するものではない。

監督指針は、経営改善計画が要件をすべて満たす場合、その債務者に対する債権は要管理債権又は正常債権に該当すると判断して差し支えないとしている。要件の一つは、計画期間が原則として概ね5年以内(5年を超え概ね10年以内で、進捗が概ね計画どおりの場合を含む)で、計画の実現可能性が高いことだ。計画書には①売上・利益・キャッシュフローの5年計画②自己資本比率・債務償還年数の年次目標③具体的な改善アクションと責任者・期日④モニタリング体制(月次試算表の提出頻度)を最低限盛り込む。

自社のみで作成が難しい場合は中小企業活性化協議会の405事業を活用すれば、認定支援機関への支払費用の3分の2(上限300万円)が補助される。

405事業の活用フローと適用範囲

405事業(経営改善計画策定支援事業)は、金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な中小企業向けの公的支援で、補助上限は300万円・補助率3分の2、伴走支援費用も対象になる。手続きは①最寄りの中小企業活性化協議会(全国47都道府県)に相談②認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・中小企業診断士等)を選定③利用申請書を協議会に提出④計画策定後、金融機関との合意形成と協議会への申請完了、という流れで進む。

経営者保証の解除に取り組む場合は、これとは別に金融機関交渉費用も上限10万円で補助の対象になる。対象は、認定経営革新等支援機関である弁護士等に払う費用だ。「自分で計画書を書くと銀行に通用するか不安」という段階で外部専門家を費用補助付きで活用できる仕組みであり、特に要注意先以下の区分の企業にとっては第一選択肢になる。

月次試算表の定期提出という地味な打ち手

経営改善計画書を提出しても、提出後の進捗報告が止まれば「計画通り推移しているか」を銀行が判断できず、結局は決算時の機械判定に戻る。主取引銀行に対して月次(融資残高が大きい場合は月次必須、最低限四半期)の試算表を継続提出することで、定性評価が積み上がり、区分の引き上げ・維持の交渉力が高まる。

前期赤字でも当期黒字化の過程を試算表で示せると追加融資に応じてもらえることがあり、「改善トレンドの見える化」が定性スコアに直結する。決算後は決算書を2週間以内に提出し、業績説明・今期計画を口頭でも補足するのが基本動作だ。

SECTION 04

区分別の現実的なゴール設定:要注意先→正常先と正常先内の上位移動

同じ「1段階アップ」でも、出発点によって6ヶ月で到達可能なゴールは異なる。要注意先(その他要注意先)から正常先への見直しで何を求めるかは、金融機関ごとの判断による。

6ヶ月単位で見れば、経営改善計画書を提出して計画通りに推移していることを示し、区分の維持・引き上げを相談する材料をそろえることが現実的なゴールになる。ただし計画は債権区分を判断する際の目安の一つで、区分の引き上げを約束するものではない。

一方、すでに正常先にいる企業は、自己資本比率の上昇や債務償還年数の短縮を決算で示せれば、金利交渉・融資枠拡大・プロパー融資への切替えを相談する材料になる。どの程度の改善で条件が変わるかは、金融機関ごとの判断による。

要管理先・破綻懸念先からの脱却は6ヶ月では困難で、中小企業活性化協議会の本格的な再生支援や中小企業の事業再生等に関するガイドラインの活用など、より長期の枠組みに切り替える必要がある。

SOURCES

この記事で参照した根拠

  1. 01

    経営改善計画の進捗と金融庁の監督指針の「概ね8割」

    出典: 金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年10月)Ⅲ-4-9-4-3(4)要管理債権(https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho.pdf)

  2. 02

    中小企業の区分引き上げに必要な計画期間

    出典: 金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年10月)Ⅲ-4-9-4-3(4)要管理債権(https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho.pdf)

  3. 03

    405事業(経営改善計画策定支援事業)の補助内容

    出典: 中小企業基盤整備機構(smrj.go.jp/sme/succession/improvement-plans.html)・中小企業庁「経営改善計画策定支援」

  4. 04

数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。

FAQ

よくある質問

Q3〜6ヶ月で債務者区分は上がりますか?▼
A

期間だけで区分が上がるとは言えません。正常先内の評価改善と、要注意先から正常先への復帰では必要な実績が異なり、最終判断も金融機関ごとに行われます。3〜6ヶ月は、試算表整備、改善策の着手、経営改善計画の提出までを進める期間として捉え、判定時期と追加条件を担当者へ確認してください。

Q経営改善計画書は自社で作っても銀行に通用しますか?▼
A

通用するケースもあるが、要注意先以下の区分にいる場合は外部専門家による作成が信頼性を高める。中小企業活性化協議会の405事業を使えば認定支援機関への支払費用の3分の2(上限300万円)が補助される。税理士・公認会計士・中小企業診断士が認定支援機関に該当し、自社負担を抑えながら銀行に通用する計画書を作成できる仕組みだ。

Q計画書の進捗が8割を切ったらどうなりますか?▼
A

金融庁の監督指針は、計画期間が5年を超え概ね10年以内の経営改善計画について、「売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保」を「概ね計画どおり」の目安としている。中小企業で8割に満たない場合も、進捗だけで機械的・画一的に判断せず、下回った要因と今後の見通しを検討するとしている。ただし計画を大幅に下回っている場合は、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画とは扱われない。

下振れが見えた段階で銀行に早めに相談し、計画の前提条件変更や対策を加えた修正版を再提出することが重要だ。隠して決算を迎えるのが最悪のパターンになる。

Q役員借入金を資本性借入金として認めてもらうには何が必要ですか?▼
A

銀行に認めてもらうには①返済劣後特約付きの覚書(他の借入金より返済順位を後にする条項)②金融機関への正式な届出と確認文書③税理士による会計処理の整理、の3点が最低限必要になる。DES(資本金への振替)まで踏み切れば確実だが、登記費用や税務上の影響があるため司法書士・税理士と相談して進める。覚書方式の方が手続きは軽い。

Q月次試算表を毎月銀行に出すのは負担が大きいのですが、四半期では駄目ですか?▼
A

融資残高が小さく業績変動が穏やかなら四半期(3ヶ月)ごとでも問題ない。ただし経営改善計画書を提出して区分引き上げを狙っている段階や、融資残高が大きい場合・業績変動が大きい場合は月次提出が望ましい。

月次提出を続けると担当者との情報共有頻度が上がり、定性評価の積み上げにも直結する。会計事務所と連携すれば月次試算表の作成自体は大きな負担にならない。

Q6ヶ月で区分が上がらなかった場合、何を見直すべきですか?▼
A

まず「定量指標の改善幅が想定より小さかったのか」「計画書の提出・運用が機能しなかったのか」を切り分ける。前者なら役員借入金の資本性扱い・遊休資産の処分・役員報酬調整など実質財務改善の打ち手が漏れていないか再点検する。

後者なら計画書の現実性(売上8割確保の蓋然性)や、月次試算表提出の継続性、担当者との情報共有頻度を見直す。それでも改善が見えない場合は中小企業活性化協議会の本格支援に切り替える判断が必要だ。

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