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早期経営改善計画(Vアップ事業・旧ポスコロ)の作成と融資への影響

執筆: 法人融資ナビ編集部 / 公開: 2026-05-21 / 更新: 2026-10-02

早期経営改善計画策定支援(通称「バリューアップ支援事業(Vアップ事業)」、旧通称「ポスコロ」)は、再生の段階の前に専門家と経営改善計画を作る公的制度だ。認定経営革新等支援機関(国が認定した専門家)への費用の3分の2を中小企業活性化協議会が負担する。上限は計画策定50万円・伴走支援30万円だ。

計画は取引の中心となる金融機関(メイン行・準メイン行)に出し、関係づくりと経営の見直しにつなげる。

要点

この記事で先に確認すること

01
計画策定費用の補助率と上限
中小企業活性化協議会が3分の2を負担(上限50万円)
出典: 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)
03
経営者保証解除交渉・事業承継(IM作成)の追加補助
各3分の2負担・上限各10万円(早期経営改善計画とセットで利用可。経営者保証解除の金融機関交渉費用は、認定経営革新等支援機関である弁護士等に限る)
出典: 北海道中小企業活性化協議会「早期経営改善計画策定支援事業」公式ページ(sapporo-cci.or.jp/keieikaizen/early-improvement-plan/)/独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)
04
対象事業者
資金繰り管理や採算管理など基本的な内容の経営改善の取組を必要とする中小企業・小規模事業者で、認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画を策定し金融機関に提出する意思があるもの
出典: 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」公式(chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html)/福島県中小企業活性化協議会 公式ページ
05
405事業(通常の経営改善計画策定支援)との補助上限比較
通常枠は上限300万円、中小版GL枠は上限700万円(いずれも3分の2補助)。早期経営改善計画は計画策定50万円+伴走支援30万円のため軽量・低額
出典: 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)
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SECTION 01

早期経営改善計画(Vアップ事業)の位置付け:再生に至る前の予防型支援

早期経営改善計画策定支援事業は、2025年4月1日から通称「バリューアップ支援事業(Vアップ事業)」に変わった。以前の通称は「ポスコロ事業」だ。まだ深刻な再生フェーズに入っていないが、資金繰り管理や採算管理に課題を感じている中小企業・小規模事業者向けの公的支援制度だ。

認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・中小企業診断士等)の支援を受けて資金繰り計画・ビジネスモデル俯瞰図・アクションプランといった基本的な内容の計画を策定し、それを金融機関に提出することを通じて経営改善を進める枠組みになっている。

本格的な再生支援である「経営改善計画策定支援事業(通称405事業)」が金融支援(リスケ・債権放棄等)を伴う本格的な改善計画を対象とするのに対し、Vアップ事業は金融支援を前提とせず「自社の経営課題を専門家と整理する」「金融機関に対して自社の方向性を可視化する」段階で利用できる軽量版の位置付けにある。中小企業庁の令和8年3月31日改訂の手引きでは、事業環境や社会環境の変化による収益力・財務・資金繰りの悪化を予防する制度と位置付けている。

Vアップ事業(早期経営改善計画)と405事業(経営改善計画)の比較

項目早期経営改善計画(Vアップ事業・旧ポスコロ)経営改善計画(405事業)
対象企業の状態基本的な経営改善が必要な段階金融支援(リスケ等)を伴う本格的な改善が必要な段階
金融支援の前提不要(ただし計画は取引の中心となる金融機関に出す)必要(金融機関との協議が前提)
計画内容資金繰り計画・ビジネスモデル俯瞰図・アクションプランなど基本構成詳細な収支計画・債権者調整方針を含む本格的内容
補助上限額計画策定50万円+伴走支援30万円(各3分の2補助)通常枠300万円・中小版GL枠700万円(3分の2補助)
用途のイメージ予防・早期着手・金融機関との関係構築債務超過・リスケ前提の本格的事業再生

SECTION 02

補助の4枠:計画策定50万円・伴走支援30万円・企業概要書と保証解除は各10万円

Vアップ事業の補助対象費用は4種類に分かれており、それぞれに上限額が設定されている。

①計画策定費用:認定経営革新等支援機関が早期経営改善計画を作成するための支援報酬で、上限50万円・補助率3分の2(上限の範囲内なら自己負担は計画策定費の3分の1)。②伴走支援費用:計画策定後最初の決算時から3年間、計画と実績の差異分析・アクションプランの進捗確認を行う報酬で、上限30万円・補助率3分の2。

③経営者保証解除交渉支援:経営者保証ガイドラインに基づき個人保証の解除を金融機関と交渉する際の専門家支援で、上限10万円・補助率3分の2。中小機構の案内では、この金融機関交渉費用の対象は認定経営革新等支援機関である弁護士等に限られる。④事業承継(IM作成)支援:事業承継先探索のための企業概要書(IM=Information Memorandum)作成支援で、上限10万円・補助率3分の2。

経営者保証解除と事業承継の枠は単独利用ではなく、早期経営改善計画とセットで利用する建て付けになっている点が要点だ。4つの枠を合わせた協議会の負担の上限は100万円だ。4つの枠を使えば、専門家と一緒に経営の見直し・金融機関交渉・保証解除・承継準備までを段階的に進められる。

自己負担の試算(上限まで使う場合は2枠で40万円・4枠で50万円)

中小機構の案内では、協議会は専門家への支払費用の3分の2を負担し、その負担額に上限がある。上限は計画策定50万円・伴走支援30万円で、2つ合わせて80万円だ。企業概要書(IM)の作成と経営者保証解除の金融機関交渉は、それぞれ協議会の負担を10万円まで上乗せできる。

協議会の負担が上限に届くのは、支払額が上限の1.5倍のときだ。計画策定は75万円(50万円÷3分の2)、伴走支援は45万円の支払で上限に届く。この2枠では、支払120万円のうち協議会の負担が80万円、自己負担が40万円になる。

4枠すべてを上限まで使うと、支払150万円のうち協議会の負担が100万円、自己負担が50万円だ。

支払額が上限に届かない枠では、自己負担は支払額の3分の1になる。計画策定の支払が75万円を超えると、超えた分は全額が自己負担になる。

SECTION 03

認定経営革新等支援機関の選び方:税理士・診断士・地域金融機関の中から探す

Vアップ事業の利用には、計画策定を担う「認定経営革新等支援機関」(略称:認定支援機関)との契約が必須になる。認定支援機関は中小企業等経営強化法に基づき国(経済産業大臣・財務大臣)が認定した専門家・機関のことで、税理士・公認会計士・中小企業診断士・弁護士・地方銀行・信用金庫・信用組合・商工会議所など幅広い士業・機関が含まれる。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」で全国の認定機関を業種・地域・対応可能分野(経営改善・事業再生・事業承継等)で検索できる。

選定のポイントは①早期経営改善計画策定の実績件数②自社の業種理解③金融機関とのリレーション(メイン行と長く付き合っている地銀・信金が認定支援機関を兼ねていれば、計画提出後の交渉が円滑になりやすい)。普段から付き合いのある顧問税理士が認定支援機関であれば、自社の財務状況を熟知している分、計画策定の精度・スピードが上がる効果も期待できる。複数の認定支援機関と並行して相談することは制度上問題ないため、相性と費用感を比較してから契約に進む判断も合理的だ。

利用手続きの流れ:相談→申請→委嘱・承諾→計画策定→提出→伴走支援

利用手続きは次の流れになる。①地元の中小企業活性化協議会へ一次相談する(無料)。②認定経営革新等支援機関を選び、見積りを取る。

③認定支援機関と連名で利用申請する。

④協議会の審査後、協議会が認定支援機関へ業務委嘱を通知する。業務委嘱とは、協議会が認定支援機関に支援業務を依頼する手続きだ。認定支援機関の承諾後、資金繰り計画・ビジネスモデル俯瞰図・アクションプラン等を作る。

⑤計画を金融機関へ出し、計画策定費を支払申請する。⑥計画策定後最初の決算時から3年間、決算期を含め年2回以上の伴走支援を受ける。⑦伴走支援費を支払申請する。

協議会への最初の相談は無料で、協議会は守秘義務を守るとしている。ただしこの制度は、作った計画を金融機関に出すことが前提だ。利用申請の有効期限は受理された日から1年で、それまでに計画策定費の支払申請を出さないと失効する。

申請から計画策定までの標準的な期間は公表されていない。

SECTION 04

銀行融資への効果:計画の提出で示せる3点と、公表されていない審査への影響

中小企業庁の手引きでは、Vアップ事業の目的は、計画をメイン行か準メイン行に出して関係を築き、自社の経営を見直すきっかけにすることだ。早期経営改善計画は金融支援を前提としない予防型の制度のため、計画提出だけで直ちに新規融資が実行されるわけではない。

計画を金融機関に出すと、①経営課題を経営者自身が把握していること②国の制度を使って経営改善に取り組んでいること③認定支援機関という第三者が計画づくりに関わっていること、を示せる。ただし、計画の提出で金融機関の評価や内部の格付け(融資先の信用度を金融機関が社内で区分したもの)がどう変わるかは公表されていない。利用申請の前に金融機関から受け取る事前相談書も、将来の金融支援を約束するものではないと手引きに書かれている。

伴走支援では、決算期を含めて年2回以上、計画の進み具合を確かめ、その状況を金融機関と共有する。経営者保証解除交渉枠を併用すれば、経営者保証ガイドラインに基づく個人保証の段階的解除を専門家と一緒に進められる点も実務的なメリットだ。

SOURCES

この記事で参照した根拠

  1. 01

    計画策定費用の補助率と上限

    出典: 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)

  2. 02
  3. 03

    経営者保証解除交渉・事業承継(IM作成)の追加補助

    出典: 北海道中小企業活性化協議会「早期経営改善計画策定支援事業」公式ページ(sapporo-cci.or.jp/keieikaizen/early-improvement-plan/)/独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)

  4. 04

    対象事業者

    出典: 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」公式(chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html)/福島県中小企業活性化協議会 公式ページ

  5. 05

    405事業(通常の経営改善計画策定支援)との補助上限比較

    出典: 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」公式(smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html)

数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。

FAQ

よくある質問

Q早期経営改善計画(Vアップ事業・旧ポスコロ)と405事業はどう違いますか?▼
A

Vアップ事業は金融支援(リスケ等)を前提としない予防型の制度で、対象は基本的な経営改善に取り組む段階の中小企業。補助上限は計画策定50万円+伴走支援30万円。

一方405事業は金融支援を伴う本格的な再生段階の企業向けで、補助上限は通常枠300万円・中小版GL枠700万円。深刻度に応じて使い分ける建て付けだ。

Q認定経営革新等支援機関にはどんな専門家が登録されていますか?▼
A

税理士・公認会計士・中小企業診断士・弁護士・地方銀行・信用金庫・信用組合・商工会議所など、幅広い士業・機関が国(経済産業大臣・財務大臣)から認定を受けて登録されている。中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムで業種・地域・対応分野で検索できる。普段付き合いのある顧問税理士が認定支援機関であれば、財務状況を熟知している分スムーズに進めやすい。

Q中小企業活性化協議会への相談は費用がかかりますか?▼
A

協議会への最初の相談は無料で、協議会は守秘義務を守るとしている。ただし早期経営改善計画策定支援は、作った計画を金融機関に出すことが前提の制度だ。本格的に計画策定支援に進む場合は認定経営革新等支援機関への報酬が発生するが、その3分の2(計画策定上限50万円・伴走支援上限30万円)を活性化協議会が負担するため、上限の範囲内なら自己負担は3分の1になる。

QVアップ事業を利用すると新規融資が受けやすくなりますか?▼
A

計画を作っただけで直ちに新規融資が実行されるわけではない。計画を金融機関に出すと、①経営課題を自社が把握している②国の制度を使って改善に取り組んでいる③認定支援機関という第三者が関わっている、の3点を示せる。計画の提出で融資の審査や内部の格付けがどう変わるかは公表されていないため、受けやすくなるとは言い切れない。

Q経営者保証の解除もVアップ事業で支援してもらえますか?▼
A

可能。早期経営改善計画とセットで経営者保証解除交渉支援(上限10万円・補助率3分の2)が利用できる。ただし対象は、認定経営革新等支援機関である弁護士等が金融機関と交渉する費用に限られる。

経営者保証ガイドラインに基づき、法人と個人の財務分離・財務情報の適切な開示・返済能力の維持の3条件を整える形で金融機関と交渉する際の専門家報酬が補助対象になる。事業承継先探索のための企業概要書(IM)作成支援(上限10万円・3分の2補助)も併用可能だ。

Q伴走支援期間中はどのような活動が必要ですか?▼
A

計画策定後最初の決算時から3年間、認定支援機関と一緒に計画と実績の差異やアクションプランの進み具合を確かめる。決算期を含め、年2回以上の実施が必須だ。計画と実績がずれていれば、認定支援機関が対応策を助言する。

実施状況は金融機関と共有し、伴走支援レポートで協議会にも報告する。

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