経営者保証なし融資への切替|既存借入の保証解除と新規借入時の要件
公開: 2026-05-21
経営者保証なしで融資を受ける道は2024年以降に大きく広がった。信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」、創業期向けの「スタートアップ創出促進保証」、日本政策金融公庫の無保証融資など、自社の状況に合う制度を選んで申込めば既存の保証付き融資を保証なしに切り替えることも可能だ。
この記事のポイント
事業者選択型 保証料率上乗せ(両要件充足時)
0.25%
出典: 愛知県信用保証協会「経営者保証の提供を不要とする取扱い」
事業者選択型 保証料率上乗せ(一方のみ充足時)
0.45%
出典: 愛知県信用保証協会「経営者保証の提供を不要とする取扱い」
スタートアップ創出促進保証 限度額
3,500万円
出典: 中小企業庁「スタートアップ創出促進保証制度」案内(2023年3月)
スタートアップ創出促進保証 保証料率上乗せ
創業関連保証料率に+0.2%
出典: 中小企業庁「スタートアップ創出促進保証制度」案内(2023年3月)
日本政策金融公庫 新規無保証融資の割合
71.2%(令和7年度上半期)
出典: 日本政策金融公庫「保証人に依存しない融資」公表データ
事業者選択型 制度開始日
2024年3月15日
出典: 中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等」公表
新規融資から経営者保証なしで借りる3つのルート
経営者保証なしで新規借入する主なルートは①信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」(2024年3月施行)②同じく信用保証協会の「スタートアップ創出促進保証」(2023年3月施行)③日本政策金融公庫の無保証融資(マル経融資・経営者保証免除特例制度等)の3つだ。①は事業実績のある中小企業が保証料率を上乗せして経営者保証を不要にする仕組み、②は創業5年未満の法人を対象に経営者保証を一律不要とする制度、③は政府系金融機関が独自に運用する保証不要枠だ。自社の事業年数・財務状況・調達額により向き不向きがあるため、メインバンクと信用保証協会双方に並行して相談することが効率的なアプローチになる。
事業者選択型経営者保証非提供制度の要件と保証料率
信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」は、保証料率の上乗せと引き換えに経営者保証を不要にする制度だ。主な要件は①過去2年間、決算書等を申込金融機関に提出していること②直前決算で代表者への貸付金がなく、役員報酬等が社会通念上適切な範囲内であること③債務超過でないか、直近2期連続で減価償却前経常利益が赤字でないかのいずれかを満たすこと、の3点だ。保証料率の上乗せは両財務要件を満たす場合0.25%、いずれか一方のみ満たす場合0.45%となる。なお導入促進のため2027年3月までの時限措置で国が保証料の一部を補助する仕組みがあり、申込時期によって自己負担はさらに軽くなる。
既存の保証付き融資を「保証なし」に切り替える手順
既存融資の経営者保証を外す現実的な手段は、上記制度を活用した借換えだ。実務上の手順は次の通り。①メインバンクの担当者に「事業者選択型経営者保証非提供制度での借換を検討したい」と打診する。②直近2期分の決算書・試算表・代表者への貸付金がないことを示す勘定明細を準備する。③役員報酬の妥当性を説明する資料(同規模・同業種の役員報酬データ等)を添える。④信用保証協会に金融機関経由で申込み、保証審査を受ける。⑤既存融資の繰上返済と新規保証なし融資の実行を同時に行う。借換のタイミングは融資の期日到来時や金利改定時が最も自然で、無理に途中解約すると違約金が発生するため事前に契約条件を確認する必要がある。
創業5年未満ならスタートアップ創出促進保証を最優先で検討する
創業から5年未満の法人または創業予定者は「スタートアップ創出促進保証」を最優先で検討する価値がある。本制度は信用保証協会が100%保証する経営者保証不要の創業向け保証で、上限3,500万円を運転資金・設備資金として利用できる。保証料率は通常の創業関連保証より0.2%上乗せだが、経営者保証が一律不要になる点が最大の利点だ。利用後は会社設立から3年目と5年目に中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づく確認・助言を受ける必要があるため、創業期から財務体制を整える前提で活用するのが望ましい。日本政策金融公庫の創業融資(無担保・無保証人が原則)と組み合わせて自己資金部分を補完することも有効な戦略だ。
よくある質問
Q事業者選択型経営者保証非提供制度の保証料率上乗せ分は国の補助で軽減されますか?▼
2027年3月までの時限措置で国による保証料負担軽減策が用意されている。年度ごとに補助割合が段階的に縮小される設計のため、利用を検討する場合は早めに申込時期を確認することが有利だ。
Q事業者選択型を使うために必要な財務要件は具体的に何ですか?▼
直前決算で代表者への貸付金がなく、役員報酬が社会通念上適切な範囲であること、加えて債務超過でないか直近2期連続で減価償却前経常利益が黒字であることが主な要件だ。両方満たせば上乗せ料率0.25%、片方なら0.45%となる。
Qスタートアップ創出促進保証は法人化前の個人事業主でも使えますか?▼
本制度は会社(法人)を対象とする保証制度で、創業予定者または創業5年未満の法人が利用対象だ。個人事業主のままでは利用できないため、まず法人化を完了させた上で申込む必要がある。
Q経営者保証なし融資に切り替えると借入金利は上がりますか?▼
事業者選択型では保証料率の上乗せ分(0.25〜0.45%)が実質的なコスト増となる。融資金利自体は据え置きだが総コストとしては上昇する。一方、経営者の個人保証リスクがなくなる効果と比較して許容範囲か判断することになる。
Q既存の保証付き融資を保証なしに切り替えるベストなタイミングはいつですか?▼
融資の期日到来時・金利改定時・借換による条件変更を行う場面が最も自然な切替タイミングだ。期中の途中解約は違約金が発生する契約も多いため、契約書の解約条項を事前に確認した上で計画的に切替を進める必要がある。
Q日本政策金融公庫と民間銀行で経営者保証なし融資の使い分けはどう考えればよいですか?▼
創業期や小規模事業者は日本政策金融公庫の無保証融資(マル経融資・新規開業資金等)が選びやすい。事業実績が積み上がった段階では民間銀行+信用保証協会の事業者選択型制度を主軸とし、両者を補完的に活用することが現実的な戦略だ。
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