メザニンファイナンス:株式と借入の中間にある中堅企業の資金調達
公開: 2026-05-21
メザニンファイナンスはシニアローン(普通借入)と普通株式(エクイティ)の中間に位置するハイブリッド型資金で、劣後ローンと優先株式が代表的な手法だ。中堅企業のM&A・MBO・事業承継・財務基盤強化で、議決権希薄化を抑えながら自己資本性のある長期資金を調達する設計に使われる。DBJを中心とした民間共同ファンドが国内供給の中核となる。
この記事のポイント
メザニンファイナンスの位置づけ
シニアローンと普通株式によるエクイティファイナンスの中間的な金融手法。返済順位はシニアローンに劣後し、普通株式に優先する
出典: 日本政策投資銀行(DBJ)「メザニンファイナンス」公式ページ(dbj.jp/service/invest/mezzanine/)
代表的な手法
劣後ローン/劣後債(デット型)、優先株式/種類株(エクイティ型)、ハイブリッドファイナンス(格付機関から資本認定を受けられる劣後ローン・優先株式)
出典: 日本政策投資銀行(DBJ)「メザニンファイナンス」公式ページ
主な活用シーン
財務基盤強化(過小資本状態からの脱却)・事業買収(エクイティとローンの不足分補完)・事業承継(事業承継者の議決権希薄化防止)の3用途が中核
出典: 日本政策投資銀行(DBJ)「メザニンファイナンス」公式ページ
DBJ・三菱UFJ銀行 メザニン・ソリューション5号
「メザニン・ソリューション5号投資事業有限責任組合」を組成。事業再編・事業承継・財務基盤強化など多様な資金ニーズに対する優先株式・劣後ローン等への投融資が目的(運営は株式会社ソリューションデザイン)
出典: DBJ News「株式会社三菱UFJ銀行とのメザニンファンド(5号)への出資について」(dbj.jp/topics/dbj_news/2025/html/20250711_206042.html)
シリーズの開始時期
前身となる「メザニン・ソリューション1号投資事業有限責任組合」は2008年12月に組成。以降複数号にわたり中堅企業のメザニン需要に対応
出典: DBJ News「株式会社三菱UFJ銀行とのメザニンファンド(5号)への出資について」
優先株式と劣後ローンのリスク順位
優先株式は担保権を付すことができず、一般的には劣後ローンよりリスクが高いメザニン手法と見なされる。配当は普通株式に優先するが、シニア債権者と劣後ローン保有者には劣後する
出典: 山田コンサルティンググループ「メザニンの手法 優先株式の基礎知識」(ycg-advisory.jp/learning/mafinance/preference_share/)/総合知識「劣後ローンと優先株式の基本と特徴」(sogotcha.com/subordinated-loan-and-preferred-stock/)
メザニンファイナンスとは:シニアローンと普通株式の中間を埋める資金
メザニン(mezzanine)は建築用語で「中二階」を意味し、ファイナンス領域では「シニアローンと普通株式によるエクイティファイナンスの中間的な金融手法」を指す。返済順位(弁済優先順位)の観点では、シニアローン(普通の銀行融資)が最上位、普通株式が最下位に位置し、メザニンはその中間に挟まる。代表的な手法は劣後ローン(デット型)と優先株式(エクイティ型)の2つで、いずれもシニアローンに劣後する代わりに、リスクに見合った金利・配当が設定されることで経済合理性が確保される。中堅企業の実務では、銀行の通常融資枠だけでは賄えない大型のM&A・MBO・事業承継資金や、過小資本状態からの財務基盤強化に対して、エクイティ発行による議決権希薄化を抑えながら自己資本性のある資金を調達する設計に使われる。スタートアップ向けのベンチャーデットや中小再生フェーズのDDSと混同されやすいが、メザニンファイナンスの主なターゲットは黒字基調の中堅〜大企業であり、事業価値・キャッシュフローの確実性を前提に大型のディール組成が行われる点で性格が異なる。
シニアローン・メザニン・エクイティの位置関係
| 区分 | 代表的商品 | 弁済順位 | リターン | 担保・希薄化 |
|---|---|---|---|---|
| シニアローン | 銀行プロパー融資・シ・ローン | 最上位 | 金利のみ(低め) | 担保・保証付きが一般的 |
| メザニン(デット型) | 劣後ローン・劣後債 | 中位(シニアに劣後) | 金利(高め) | 原則無担保・希薄化なし |
| メザニン(エクイティ型) | 優先株式・種類株 | 中位下(劣後ローンに劣後) | 配当+将来のEXIT | 担保不可・議決権設計で希薄化抑制 |
| エクイティ | 普通株式 | 最下位(残余財産) | 配当+キャピタルゲイン | 議決権希薄化あり |
劣後ローンと優先株式:2つの手法の使い分け
メザニンの2つの中核手法である劣後ローンと優先株式は、どちらも「シニアに劣後する」点で共通するが、会計・税務・支配権の扱いが異なる。劣後ローンは負債計上され、利息は損金算入できるため税務メリットがある一方、契約上は返済義務を負い、満期到来時の元本返済リスクが残る。優先株式はエクイティ計上され、配当は損金算入できないが返済義務がなく、議決権を制限する設計(無議決権株式・拒否権付き種類株等)で資本増強と支配権維持を両立できる。優先株式は担保権を付すことができないため、貸し手から見たリスクは劣後ローンより高く、一般に要求リターンも高くなる。中堅企業の実務では、M&A・MBO資金で「自己資本厚みが必要」「税務メリットも欲しい」場合に劣後ローンが選ばれ、事業承継で「承継者の議決権を守りたい」「返済義務を負いたくない」場合に優先株式が選ばれる傾向がある。両者を組み合わせる「劣後ローン+優先株式の2階建てメザニン」も大型ディールでは珍しくなく、ファンド側のリスク・リターン設計と企業側の資本政策が交差する論点を、案件ごとに個別交渉で設計するのが実務の姿だ。
優先株式の議決権設計:希薄化抑制の中核
優先株式は「配当・残余財産分配が普通株式に優先する代わりに、議決権を制限する」種類株として設計されることが多い。事業承継では、後継者が普通株式を保有して経営支配権を維持しつつ、外部のメザニン投資家が無議決権または限定議決権の優先株式で資金を供給する形が定番化している。これにより、エクイティ調達でありながら創業家・後継者の議決権比率を保つことができ、M&A後のEXITも償還条件(取得条項・取得請求権)の設計で柔軟に対応できる。一方で、配当優先権・残余財産分配権を巡る投資家との交渉は複雑になりやすく、種類株式の発行手続き(株主総会特別決議・定款変更登記)も重い。M&A・事業承継専門の弁護士と税理士をチームに入れた上で条件設計するのが標準的な進め方になる。
国内供給の中核:DBJメザニンファンド群と民間共同体制
日本のメザニンファイナンス供給で最大の制度的バックボーンとなっているのが日本政策投資銀行(DBJ)だ。DBJは劣後ローン・優先株式・ハイブリッドファイナンスを単独でも提供するほか、民間金融機関と共同でメザニンファンドを継続的に組成している。中核となる「メザニン・ソリューションシリーズ」は2008年12月の1号組成以降、複数号にわたって中堅企業のメザニン需要を吸収しており、2025年7月にはDBJと三菱UFJ銀行が「メザニン・ソリューション5号投資事業有限責任組合」への出資を発表(運営は株式会社ソリューションデザイン)。事業再編・事業承継・財務基盤強化など多様な資金ニーズに対する優先株式・劣後ローン等への投融資を行う。このほかDBJはブレイン・アンド・キャピタル・インベストメンツ、三菱東京UFJ銀行、新銀行東京等と共同で「スマート・メザニン・ファンド」を組成しており、優先株や劣後ローン等の多様なリスクマネー提供に加え、ハンズオン型の経営指導・モニタリングをセットにする設計を採っている。商工組合中央金庫もDBJと並ぶ政府系の役割を担い、組合員企業や中堅企業向けのリスクマネー供給の一翼を担っている。民間銀行(メガバンク・大手地銀)はシニアローン部分を、DBJや専門ファンドがメザニン・エクイティ部分を分担するという役割分担で、1件の大型ディールを共同で組成するのが日本のメザニン実務の標準形だ。
主要なメザニン供給チャネル
| 供給主体 | 主な商品 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 日本政策投資銀行(DBJ) | 劣後ローン・優先株式・ハイブリッドファイナンス | 中堅〜大企業 | 単独提供と民間共同ファンド組成の両面で国内中核 |
| メザニン・ソリューションシリーズ | 優先株式・劣後ローン等への投融資 | 事業再編・事業承継・財務基盤強化 | DBJ・三菱UFJ銀行等が出資、2008年12月の1号以降複数号 |
| スマート・メザニン・ファンド | 優先株・劣後ローン+ハンズオン経営指導 | 中堅中小企業 | DBJ・ブレイン・キャピタル等共同、経営指導とモニタリングを総合提供 |
| 商工組合中央金庫 | 中堅企業・組合員企業向け劣後ローン等 | 組合員企業・中堅企業 | 政府系の役割でメザニン供給の一翼 |
| 民間メガバンク・大手地銀 | シニアローン部分を担当(ディール共同組成) | 同上ディールのシニア部分 | メザニンとの役割分担で大型ディール組成 |
M&A・MBO・事業承継での実装:3つの典型シナリオ
メザニンファイナンスが実際に使われる中堅企業のシナリオは大きく3つに整理できる。第1にM&A資金調達で、買収対象企業の事業価値・キャッシュフローを裏付けに、シニアローン+メザニン+エクイティの3層構造で買収資金を組成するパターン。シニア部分はメガバンク・大手地銀が担い、メザニン部分でDBJや共同ファンドが劣後ローン・優先株式を拠出、不足分を買い手企業のエクイティで埋める。第2にMBO(マネジメント・バイアウト)で、経営陣が会社を取得する局面で、創業家・親会社への買取資金として大型のメザニン調達が行われる。2010年のケイテック株式会社のMBOでは、DBJが傘下のメザニンファンドを通じて劣後ローン・優先株式を拠出した実例がある。第3に事業承継で、後継者が普通株式を保有して経営支配権を維持しつつ、外部のメザニン投資家が無議決権の優先株式や劣後ローンで承継資金を供給する形が定着している。いずれのシナリオでも、メザニンは「シニアローンだけでは足りない」「エクイティだけでは希薄化が大きすぎる」というギャップを埋める中間層として機能し、企業側の資本政策とファンド側のリスク・リターン設計を案件ごとに摺り合わせる個別交渉型のプロダクトとなる。
シナリオ別の典型ストラクチャー
M&A資金では「シニア60%+メザニン20〜30%+エクイティ10〜20%」の3層構造が代表的で、メザニン部分には劣後ローンが選好される傾向がある(税務メリットと借換え可能性)。MBOでは経営陣の出資余力が限定されるため、メザニンの比率が30〜40%に高まることもあり、優先株式と劣後ローンの併用で資本構成を組み立てる。事業承継では後継者の議決権維持が最優先課題になるため、優先株式(無議決権または限定議決権)が中核となり、税務上の自己資本厚みを補完する目的で劣後ローンを追加する2階建ても採用される。いずれのシナリオでも、ストラクチャー設計はM&Aアドバイザー(FA)・スタートアップ/PE法務に強い弁護士・税理士のチームで進めるのが標準で、企業側はCFO・経営企画責任者が主導する体制を確保しておく必要がある。
メザニン導入時の3つの注意点:高コスト・契約上の制約・EXIT設計
メザニンファイナンスは資本政策上の自由度が高い一方で、企業側が押さえるべき3つの構造的注意点がある。第1にコスト水準で、シニアローンに劣後しリスクが高い分、金利・配当の要求水準は通常融資よりかなり高くなる。事業計画上のキャッシュフロー余裕を超えてメザニンを積むと、業績下振れ時に資金繰りを圧迫する。第2に契約上の制約で、メザニン契約には通常融資より厳格な財務コベナンツ(純資産維持・自己資本比率維持・利益水準維持等)・配当制限・資産売却制限が組み込まれる。コベナンツ抵触時には金利引上げや期限の利益喪失(一括返済請求)に直結するため、抵触余裕度の事前定量化と月次モニタリング体制が必須となる。第3にEXIT設計で、優先株式の場合は取得条項・取得請求権・転換条項の設計次第で、将来のIPO・M&A時に投資家がどのタイミングでどう資金回収するかが大きく変わる。条件設計を誤ると、IPO直前期に投資家EXITが集中して株価形成に悪影響を与えたり、M&A時に優先株式の優先分配額がディール価値の大半を吸収する事態も起こり得る。メザニン導入の判断は、財務アドバイザー・専門弁護士・税理士を入れた多面的なシミュレーション(金利上昇シナリオ・業績下振れシナリオ・EXIT別の投資家リターン試算)を経た上で行うのが、中堅企業の経営判断としての最低限の備えになる。
よくある質問
Qメザニンファイナンスはスタートアップ向けのベンチャーデットや中小再生向けのDDSと何が違いますか?▼
ターゲットと目的が異なる。ベンチャーデットはVC調達済みの成長期スタートアップが対象で、株式希薄化抑制とランウェイ延長が目的。DDSは中小企業の再生フェーズで既存債務の重さを軽減するための債務組み替え。メザニンファイナンスは黒字基調の中堅〜大企業を対象に、M&A・MBO・事業承継・財務基盤強化のための大型ディールに使われる。
Q劣後ローンと優先株式はどう使い分けますか?▼
劣後ローンは負債計上で利息が損金算入でき税務メリットがあるが満期の元本返済義務が残る。優先株式はエクイティ計上で返済義務がなく、議決権制限設計で支配権を維持できるが配当は損金不算入で貸し手リスクも高い。M&A・MBOで税務メリットと借換え可能性を重視するなら劣後ローン、事業承継で承継者の議決権維持を最優先するなら優先株式が選好される。両者を併用する2階建ても大型ディールでは珍しくない。
Q日本でメザニンファイナンスを供給している主体はどこですか?▼
中核は日本政策投資銀行(DBJ)で、劣後ローン・優先株式・ハイブリッドファイナンスを単独提供するほか、三菱UFJ銀行と共同で「メザニン・ソリューション5号投資事業有限責任組合」を組成。スマート・メザニン・ファンド等の民間共同ファンドも運営する。商工組合中央金庫も政府系の役割を担い、メガバンク・大手地銀は同じディールのシニアローン部分を担当する役割分担で大型ディールが組成される。
Qメザニンファイナンスはどのくらいの規模の企業から検討対象になりますか?▼
一般に売上数十億円以上の中堅〜大企業のM&A・MBO・事業承継案件が中心になる。米国では売上50〜500億円程度の中堅企業の資金調達で有力な選択肢とされ、日本でも同程度の規模感が目安だ。ただし事業承継・財務基盤強化目的では売上数十億円規模の中堅企業も対象になり得るため、案件規模よりも「シニアローンだけでは足りずエクイティだけでは希薄化が大きい」というギャップの有無が判断基準になる。
Q事業承継でメザニンファイナンスを使うとどんなメリットがありますか?▼
後継者の議決権希薄化を抑えながら承継資金を調達できる点が最大のメリット。後継者が普通株式を保有して経営支配権を維持しつつ、外部のメザニン投資家が無議決権または限定議決権の優先株式で資金を供給する設計が定着している。劣後ローンを併用すれば自己資本性のある負債で承継後の財務基盤強化も同時に達成でき、銀行プロパー融資の追加交渉余地も広がる。
Qメザニンファイナンスを導入する際に企業側が特に注意すべき点は何ですか?▼
3点ある。①コスト水準が通常融資より高いため、業績下振れ時に資金繰りを圧迫しない範囲に金額を抑える。②契約上の財務コベナンツ(純資産維持・自己資本比率維持・利益水準維持等)・配当制限・資産売却制限が厳格で、抵触時には金利引上げや期限の利益喪失に直結するため事前の抵触余裕度定量化と月次モニタリングが必須。③優先株式の場合は取得条項・取得請求権・転換条項のEXIT設計を誤ると将来のIPO・M&A時に投資家リターンがディール価値の大半を吸収する事態が起こり得る。財務アドバイザー・専門弁護士・税理士を入れた多面的シミュレーションが前提になる。
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