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2026年度の介護報酬改定後の運転資金確保

処遇改善加算の拡充と賃上げ原資の融資戦略

執筆: 法人融資ナビ編集部 / 公開: 2026-06-05 / 更新: 2026-10-02

2026年度(令和8年度)は、令和9年度の改定を待たずに行う期中改定があり、令和8年6月から処遇改善加算が拡充された。給与は毎月先に出ていくのに介護報酬の入金は国保連経由で約2ヶ月遅れる。賃上げ原資の先行負担を運転資金でどう確保するかを、加算の入金構造と融資の組み立て方から解説する(2026年10月2日確認)。

要点

この記事で先に確認すること

01
2026年度(令和8年度)の介護報酬改定率
令和9年度の改定を待たずに行う期中改定で、改定率は+2.03%(処遇改善分+1.95%・食費の基準費用額の引上げ分+0.09%)
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1「令和8年度介護報酬改定について」(令和8年1月16日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf
02
処遇改善加算の拡充の施行時期
令和8年6月施行。令和7年度補正予算の賃上げ・職場環境改善支援事業は、令和7年12月分から令和8年5月分までの賃上げ相当分を支援
出典: 社会保障審議会介護給付費分科会「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和7年12月23日) https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001618506.pdf
03
拡充で見込まれる賃上げ額と新設される加算
介護従事者に月1.0万円(3.3%)の賃上げ措置、生産性向上・協働化に取り組む事業者の介護職員に月0.7万円(2.4%)の上乗せ。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等は加算を新設
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1「令和8年度介護報酬改定について」(令和8年1月16日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf
04
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定率
+1.59%(処遇改善分+0.98%・その他+0.61%)。加算の一本化と光熱水費の基準費用額の増額を含めると+2.04%相当
出典: 社会保障審議会介護給付費分科会 第237回 資料1「介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)」(令和5年12月27日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001184569.pdf
05
国保連からの介護報酬入金タイミング
サービス提供月の翌月10日までに請求(法令で定められた期限)。入金日は国保連合会ごとに異なり、サービス提供月の翌々月の21日〜末日で、約2ヶ月遅れ(宮城県・岩手県は翌々月末、愛知県は翌々月25日、香川県は翌々月21日)。賃金は毎月先払いとなり原資が先行する
出典: 宮城県国民健康保険団体連合会「介護給付費等請求」 https://www.miyagi-kokuho.or.jp/kaigo/seikyu.html/岩手県国民健康保険団体連合会「介護給付費の請求・支払日程」 https://www.iwate-kokuho.or.jp/kaigo/kaigo_nittei.html/愛知県国民健康保険団体連合会「介護給付費の振込日」 https://aichi-kokuho.or.jp/nursing/kaigohoken/pdf/01.pdf/香川県「介護給付費等の支払日について」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/52419/3kokuhoren.pdf
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SECTION 01

賃上げ原資はなぜ運転資金を圧迫するのか

2026年度(令和8年度)は、令和9年度の介護報酬改定を待たずに期中改定(改定の時期を待たずに途中で行う改定)が行われ、令和8年6月から処遇改善加算が拡充された。改定率は+2.03%で、うち処遇改善分が+1.95%を占める。2024年度(令和6年度)の改定では処遇改善分について2年分が措置され、処遇改善加算が一本化された。

令和8年度の期中改定は、その後の対応として加算を拡充するものだ。

令和7年度補正予算の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」は、令和7年12月分から令和8年5月分までの賃上げ相当分を支援する。加算の拡充は、この支援期間の終わりに続く令和8年6月から行われている。ここで資金繰り上の問題になるのが、加算が入る時期と給与が出ていく時期のずれだ。

賃上げした給与は毎月の支払日に出ていくが、その原資となる加算分を含む介護報酬は国保連(国民健康保険団体連合会)経由で支払われる。サービス提供月の翌月10日までに請求し、入金はサービス提供月の翌々月で、約2ヶ月遅れる。入金日は国保連合会ごとに異なり、翌々月の21日〜末日の例がある。

たとえば令和8年6月分のサービスは7月10日までに請求し、入金は8月になる(宮城県・岩手県は8月末、愛知県は8月25日、香川県は8月21日。日程は国保連合会ごとに公表される)。賃上げを先行させた月数分だけ人件費が先に出て報酬が後から入る構造になり、運転資金の手当てがないと加算を取得していても資金ショートに近づく。

改定で増えるのは「将来の入金」であって「いま手元の現金」ではない、という点を融資計画の前提に置く必要がある。

以上の改定内容は、2026年10月2日に確認した厚生労働省の公表による。

加算は取得しただけでは現金化までに時間がかかる

処遇改善加算は、算定要件(キャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件)を満たし、処遇改善計画書を提出して算定する。計画書は、加算を算定する月の前々月の末日までに提出するのが原則だ。令和8年6月からは、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分(加算Ⅰロ・加算Ⅱロ)も加わった。

加算はサービス提供月の報酬請求に上乗せされて支払われるため、賃上げを始めてから加算が現金として戻るまでに「立替期間」が生じる。この立替期間を自己資金だけで吸収できない場合に、短期の運転資金枠が必要になる。賃上げ計画と加算届出スケジュールを並べて、最大何ヶ月分の人件費を先行負担するのかを月次で試算しておくことが、融資の必要額を決める出発点になる。

改定後の収支変動を織り込んだ資金繰り表

令和8年6月の拡充では、すでに加算の対象だったサービスは加算率が引き上げられ、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援は加算が新設された。加算率はサービスごとに異なり、たとえば加算Ⅰイは訪問介護が27.0%、通所介護が11.1%、新設の加算は訪問看護が1.8%、居宅介護支援が2.1%だ。複数サービスを運営する事業者は、収入が一斉に同じ割合では増えない。

融資審査でも「改定で月次の入金がいつ・いくら変わるか」を反映した資金繰り表が見られる。改定前後の月次キャッシュフローを並べ、賃上げによる人件費増と報酬増のネット影響額を示せると、改定リスクを織り込んだ計画として評価されやすい。

SECTION 02

賃上げ原資と収支変動に対応する運転資金の組み立て方

改定後の運転資金は「賃上げの先行負担を埋める短期資金」と「収支変動の谷を埋める恒常的な運転資金枠」の2層で考えると整理しやすい。前者は賃上げ開始から加算入金までの立替期間に対応するもので、当座貸越契約や信用保証協会付きの短期運転資金が中心になる。

後者は国保連入金が約2ヶ月遅れる構造そのものへの備えで、最低でも2〜3ヶ月分の人件費・家賃をカバーできる枠を平時から確保しておく。1行ですべてを賄うのではなく、地域金融機関(地方銀行・信用金庫)の運転資金枠をメインに据えつつ、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫を組み合わせてリスク分散する設計が現実的だ。施設整備資金はWAM福祉貸付2026、介護事業の創業・日常資金は介護・福祉事業の資金調達ガイドで分けて確認したい。

メインバンク+公庫・商工中金の二本立て

日々の入出金や短期の運転資金枠は、口座管理や請求実務を把握している地域金融機関(地方銀行・信用金庫)をメインに据えるのが基本だ。一方で、まとまった額や返済期間の長い運転資金については、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫を組み合わせると、金利や返済条件の選択肢が広がる。賃上げ局面では人件費の増加が固定費の増加として効くため、返済負担を月次キャッシュフローに無理なく収められるよう、複数の借入先で返済時期を分散させることがリスク管理になる。

審査で示すべき資料

改定後の運転資金を申し込む際は、賃上げ計画と処遇改善加算の届出区分、改定前後の月次資金繰り表、加算入金までの立替期間を示した試算を用意する。「賃上げで人件費がいくら増え、加算でいくら戻り、入金遅れで何ヶ月分を立て替えるか」を金額で説明できると、資金使途が明確な運転資金として審査が進めやすい。緊急の資金繰り対策が必要な場合は資金繰り悪化時の対処法も合わせて検討する。

SOURCES

この記事で参照した根拠

  1. 01

    2026年度(令和8年度)の介護報酬改定率

    出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1「令和8年度介護報酬改定について」(令和8年1月16日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf

  2. 02

    処遇改善加算の拡充の施行時期

    出典: 社会保障審議会介護給付費分科会「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和7年12月23日) https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001618506.pdf

  3. 03

    拡充で見込まれる賃上げ額と新設される加算

    出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1「令和8年度介護報酬改定について」(令和8年1月16日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf

  4. 04

    2024年度(令和6年度)の介護報酬改定率

    出典: 社会保障審議会介護給付費分科会 第237回 資料1「介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)」(令和5年12月27日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001184569.pdf

  5. 05

    国保連からの介護報酬入金タイミング

    出典: 宮城県国民健康保険団体連合会「介護給付費等請求」 https://www.miyagi-kokuho.or.jp/kaigo/seikyu.html/岩手県国民健康保険団体連合会「介護給付費の請求・支払日程」 https://www.iwate-kokuho.or.jp/kaigo/kaigo_nittei.html/愛知県国民健康保険団体連合会「介護給付費の振込日」 https://aichi-kokuho.or.jp/nursing/kaigohoken/pdf/01.pdf/香川県「介護給付費等の支払日について」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/52419/3kokuhoren.pdf

数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。

FAQ

よくある質問

Q2026年度(令和8年度)の介護報酬改定で運転資金の必要額は変わりますか?▼
A

令和8年6月から処遇改善加算が拡充され、賃上げ分の人件費が毎月先に出ていく一方、原資となる介護報酬の入金は国保連経由でサービス提供月の翌々月(国保連合会ごとの入金日)になるため、賃上げを先行させた月数分だけ運転資金の必要額が増えます。改定前後の月次資金繰り表で立替額を試算し、必要枠を見直すことをおすすめします。

Q処遇改善加算を取得していれば賃上げ原資は確保できますか?▼
A

加算は将来の入金を増やしますが、入金はサービス提供月の翌々月(国保連合会ごとの入金日)になるため、賃上げ開始から加算が現金で戻るまでの立替期間が生じます。手元現金が不足する場合は当座貸越や短期運転資金で立替期間を埋める設計が現実的です。

Q改定後の運転資金はどの金融機関に相談すべきですか?▼
A

日々の入出金や短期枠は地域金融機関(地方銀行・信用金庫)をメインに、まとまった額や長期の運転資金は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫を組み合わせるのが基本です。借入先と返済時期を分散させると、賃上げによる固定費増のリスクを抑えられます。

Qなぜ介護報酬の入金は2ヶ月遅れるのですか?▼
A

介護保険では当月のサービス分を翌月10日までに国保連へ請求し、審査を経て、サービス提供月の翌々月(入金日は国保連合会により21日〜末日)に入金される仕組みのためです。賃金は毎月の支払日に先払いとなるため、報酬と支出のあいだに約2ヶ月のずれが生じ、これが運転資金が必要になる根本的な理由です。

Q改定後の運転資金を申し込むとき、審査で何を準備すればよいですか?▼
A

賃上げ計画と処遇改善加算の届出区分、改定前後の月次資金繰り表、加算入金までの立替期間を示した試算を準備します。人件費の増加額・加算による報酬増・立替が必要な月数を金額で示せると、資金使途が明確な運転資金として審査が進めやすくなります。

Q複数サービスを運営している場合、令和8年6月の加算拡充で注意点はありますか?▼
A

加算率はサービスごとに異なり、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援は加算が新設されたため、収入の増え方は一様ではありません。資金繰り表はサービス種別ごとに分けて作成すると変動を把握しやすくなります。

Q令和8年度の期中改定のあとにも、介護報酬の改定はありますか?▼
A

令和8年度の改定は、令和9年度の介護報酬改定を待たずに行った期中改定です。社会保障審議会介護給付費分科会は、令和8年6月・7月の会合でも「令和9年度介護報酬改定に向けて」としてサービス別の議論を進めています。今後の改定の内容によって入金額が変わりうるため、資金繰り表は条件を変えて試算しておくと見直しやすくなります。

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