事業用不動産の取得資金ガイド|店舗・事務所・工場の購入
公開: 2026-06-08
事業用不動産の取得資金は「設備資金」として長期で組むのが基本だ。取得する不動産自体を担保にできるため大型・長期の融資が組みやすい一方、自己資金・購入後の固定資産税や修繕費まで含めて賃借との損益を比較する必要がある。この記事では資金の組み方と判断のポイントを整理する。
この記事のポイント
不動産取得を含む設備資金の返済期間目安
不動産は10〜20年が目安(機械設備は5〜7年)
出典: 各銀行の法人融資商品概要より
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金の設備資金返済期間
20年以内(うち据置期間5年以内)
出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式ページ
同制度の融資限度額
7,200万円(設備・運転合計)
出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式ページ
法人が事業用不動産を保有する税務メリットの一例
相続税評価は現金保有より低く評価されるとされる
出典: 青山財産ネットワークス「事業用不動産とは」コラム
事業用不動産の取得資金は「長期の設備資金」として組む
店舗・事務所・工場・倉庫など事業に使う不動産を購入する資金は、運転資金ではなく「設備資金」として扱う。設備資金は購入対象が明確で、その不動産自体が担保や証拠書類として機能するため、運転資金より長期・大型の融資が組みやすい。不動産は機械設備より耐用年数が長いため返済期間も長く取れる。一般的な目安として、機械設備が5〜7年であるのに対し、不動産は10〜20年程度で組まれることが多い。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では設備資金の返済期間は20年以内(うち据置期間5年以内)と定められており、融資限度額は設備・運転を合わせて7,200万円となっている。返済期間を長く取れることで月々の返済負担を抑えられる点が、不動産取得資金の大きな特徴だ。
不動産取得を含む設備資金と運転資金の比較
| 項目 | 不動産取得(設備資金) | 運転資金 |
|---|---|---|
| 目的 | 店舗・事務所・工場・倉庫など不動産の購入 | 仕入・人件費・外注費など日常資金 |
| 返済期間の目安 | 10〜20年の長期 | 1〜3年の短期〜中期 |
| 担保 | 取得する不動産自体を担保にできることが多い | 原則不要なケースが多い |
| 審査の重点 | 不動産の評価額・事業性・返済財源 | 返済能力・資金使途の明確さ |
| 必要書類 | 決算書・売買契約書(案)・登記事項・事業計画書 | 決算書・資金繰り表・試算表 |
取得する不動産を担保にする仕組みと自己資金
不動産取得資金では、購入する不動産そのものに抵当権を設定し担保とするのが一般的だ。抵当権とは、返済が滞った場合に金融機関がその不動産を売却して融資額を回収できる権利のことで、設定には登記費用と司法書士報酬が初期費用として発生する。担保があることで無担保融資より大きな金額・長い期間・低い金利になりやすい一方、融資額は不動産の評価額をもとに決まり、評価額の全額を借りられるとは限らない。このため取得価格と融資可能額の差を自己資金で補う必要がある。必要な自己資金の割合は不動産の評価・申込者の財務内容・金融機関の方針によって変わるため、具体的な比率は担当者に確認したうえで資金計画を立てる必要がある。自己資金が厚いほど審査・条件の面で有利になりやすい。
担保評価と融資額の関係
不動産の担保評価は路線価・積算価格・収益価格などをもとに行われ、評価額に対して一定割合までが融資の上限の目安となる。築年数が古い建物・流動性の低い立地は評価が下がりやすく、結果として必要な自己資金が増える。逆に立地が良く流動性の高い物件は評価が出やすい。評価額や融資可能額は物件ごとに大きく異なるため、購入を検討する段階で金融機関に物件情報を提示して概算を確認しておくと資金計画が立てやすい。
購入と賃借の比較:固定資産税など取得後のコストも含めて判断する
事業用不動産は購入だけでなく賃借(テナント・リース)という選択肢もあり、取得後のコストまで含めて比較する必要がある。購入の場合は不動産が自社資産となり、長期的に家賃が不要になるほか、法人が保有する不動産は税務上の評価が現金保有より低くなるとされ、資産対策として活用されることもある。一方、購入後は固定資産税・都市計画税が毎年かかり、建物の修繕費・管理費も自己負担となる。賃借は初期投資が小さく、事業環境の変化に応じて移転しやすい柔軟性がある反面、長期的には家賃の累計が購入額を上回る場合があり、資産も残らない。判断にあたっては、取得価格と借入の総返済額に加え、固定資産税・修繕費・管理費を含めた「保有コスト」と、賃借した場合の家賃総額を同じ期間で比較することが重要だ。事業の継続見通しと立地の固定可否(移転の可能性)も判断材料になる。
よくある質問
Q事業用不動産の取得資金は運転資金として借りるのですか?▼
原則として「設備資金」として借ります。購入対象の不動産が明確で担保にもなるため、運転資金より長期・大型で組みやすいのが特徴です。資金使途は売買契約書(案)や見積で明確に示します。
Q取得する不動産自体を担保にできますか?▼
できます。購入する不動産に抵当権を設定して担保とするのが一般的です。担保があることで無担保より大きな金額・長い期間・低めの金利になりやすい一方、登記費用や司法書士報酬が初期費用として発生します。
Q返済期間はどのくらい取れますか?▼
不動産は耐用年数が長いため10〜20年の長期で組まれることが多いです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では設備資金の返済期間が20年以内(据置5年以内)と定められています。長期にすると月々の負担を抑えられます。
Q自己資金はどのくらい必要ですか?▼
融資額は不動産の評価額をもとに決まり全額を借りられるとは限らないため、取得価格との差を自己資金で補う必要があります。必要な割合は物件評価や財務内容、金融機関の方針で変わるため、担当者に確認して資金計画を立ててください。
Q購入と賃借はどちらが有利ですか?▼
一概には言えません。購入は不動産が資産として残り長期的に家賃が不要になりますが、固定資産税・修繕費・管理費が毎年かかります。賃借は初期投資が小さく移転しやすい反面、資産は残りません。保有コストと家賃総額を同じ期間で比較して判断します。
Q購入後にかかる費用には何がありますか?▼
毎年の固定資産税・都市計画税に加え、建物の修繕費・管理費が自己負担になります。融資の返済額だけでなくこれらの保有コストも含めて資金繰りを見込んでおくことが重要です。具体的な税額は物件の評価額により異なります。
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