保証金・敷金の資金ガイド|店舗・事務所賃借の初期費用
公開: 2026-06-08
店舗や事務所を借りるときの保証金・敷金・礼金・前家賃は、開業時の設備資金(一部は運転資金)として融資で組める。保証金は退去時に一部返還される性質があり、敷引き・償却の有無で実質負担が変わる。契約と融資実行のタイミング調整が成否を左右する。
この記事のポイント
公庫・新規開業資金の融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)。設備資金として保証金・内装等に充当可能
出典: 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金(公式)
設備資金・運転資金の返済期間
設備資金20年以内・運転資金10年以内(据置期間はいずれも5年以内)
出典: 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金(公式)
事業用テナントの保証金の性質
住宅より高額になる傾向。敷引き・償却がある契約では一部が退去時に返還されない
出典: CBRE「敷金・保証金における償却の仕訳・会計処理」
保証金・敷金・礼金・前家賃の違いと、融資で組める範囲
店舗・事務所の賃借にかかる初期費用は、性質ごとに分けて理解する必要がある。保証金・敷金は契約終了時に原状回復費などを差し引いた残額が返還される「預け金」の性質を持つ。礼金・前家賃・仲介手数料は返還されない支出だ。事業用テナントの保証金は住宅の敷金より高額になる傾向があり、出店コストの中で大きな割合を占めることが多い。これらの初期費用は、開業時の設備資金(保証金・内装・什器)と運転資金(前家賃・当面の家賃や仕入れ)に分けて融資申込に組み込むのが実務上の整理だ。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は設備資金・運転資金の両方が対象で、保証金もこの枠で調達できる。
賃借初期費用の性質と資金使途の整理
| 費用 | 返還の有無 | 融資上の主な区分 |
|---|---|---|
| 保証金・敷金 | 原状回復費等を差し引いた残額が返還される | 設備資金 |
| 礼金 | 返還されない | 設備資金 |
| 前家賃 | 返還されない(家賃の前払い) | 運転資金 |
| 仲介手数料 | 返還されない | 設備資金 |
敷引き・償却を含めた資金計画の立て方
保証金は全額が戻るわけではない。事業用賃貸では契約時に「敷引き」「償却」として、退去時に返還されない一定額があらかじめ定められているケースが多い。償却条項では、実際の原状回復費が少なくても契約で決めた額は返ってこない。会計上は、返還される部分は資産(差入保証金)として、返還されない部分は長期前払費用などとして処理する。資金計画では、保証金のうち「実質的に戻らない部分」を礼金と同様の費用として見込み、退去時に返ってくる金額を過大に期待しないことが重要だ。フリーレント(一定期間の家賃を無料にする条件)が付く物件では、開業直後のキャッシュアウトを抑えられるため、家賃発生時期を踏まえて運転資金の必要額を見積もる。
保証金の月数を「相場」で決め打ちしない
事業用テナントの保証金が家賃の何ヶ月分になるかは物件・地域・貸主によって大きく異なる。「家賃の◯ヶ月分が相場」と決め打ちで資金計画を組むと、実際の契約条件とずれて資金不足を招く。必ず対象物件の契約条件(保証金額・敷引き/償却の割合・前家賃の有無・フリーレント期間)を不動産仲介業者に確認し、確定した数字で計画を立てる。
物件契約と融資実行のタイミング調整
初期費用の融資で最も難しいのが、物件契約と融資実行の順番だ。金融機関は「どの物件で・家賃いくらで・どんな事業をするか」が具体化していないと、現実的な事業計画として評価できない。一方で、融資が下りるか分からない段階で本契約をして保証金・敷金を支払うと、融資が不調なら開業できず初期費用を失うリスクがある。実務では、物件を「融資が実行されれば本契約できる」状態まで内定させ(仮押さえ・申込)、その条件で事業計画書を作って融資申込に進むのが一般的だ。融資の内諾を得てから本契約・保証金支払いに進むことで、資金未調達のまま契約してしまうリスクを抑えられる。仮押さえの可否や保持期間は物件により異なるため、仲介業者と早めに調整する。
よくある質問
Q店舗の保証金や敷金は、運転資金ではなく設備資金として融資を組めますか?▼
保証金・敷金・礼金・仲介手数料は開業時の設備資金として申込むのが一般的です。前家賃や開業後しばらくの家賃・仕入れは運転資金に区分します。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は設備資金・運転資金の両方が対象です。
Q保証金は退去時に全額返ってきますか?▼
全額は戻らないことが多いです。事業用賃貸では「敷引き」「償却」として退去時に返還されない額が契約で定められているケースが多く、原状回復費も差し引かれます。返ってこない部分は資金計画上、費用として見込んでおくべきです。
Q保証金は家賃の何ヶ月分が目安ですか?▼
物件・地域・貸主によって大きく異なるため、一律の月数を断定はできません。事業用テナントは住宅の敷金より高額になる傾向があります。必ず対象物件の契約条件を不動産仲介業者に確認し、確定した金額で資金計画を立ててください。
Q物件の本契約と融資の申込は、どちらを先にすべきですか?▼
融資が下りるか分からない段階で本契約をして保証金を支払うのは避けるべきです。物件を「融資が実行されれば本契約できる」状態まで内定させ、その条件で事業計画書を作って融資申込に進み、内諾を得てから本契約・保証金支払いに進むのが安全です。仮押さえの可否は仲介業者に相談します。
Qフリーレントが付いていると資金計画はどう変わりますか?▼
フリーレントは一定期間の家賃が無料になる条件で、開業直後のキャッシュアウトを抑えられます。ただし家賃が発生し始める時期以降の支払いは必要なので、無料期間が終わった後の家賃・運転資金を見込んで必要額を計算してください。
記事に関連する銀行
申込・審査の他の記事
広告宣伝・展示会出展の資金ガイド|販促投資を融資で賄う
広告宣伝費・展示会出展費・販促キャンペーンなど効果が出るまで先行する販促投資の資金調達を解説。短期運転資金での賄い方、費用対効果を事業計画で示す方法、持続化補助金との組み合わせ、過度な広告先行のリスクまで整理します。
外注費・業務委託費の資金ガイド|支払い先行を埋める運転資金
外注費・業務委託費が顧客入金より先に出ていく分を埋める運転資金の調達を整理。製造業の外注加工費・IT業の開発外注・建設業の下請費用が支払い先行になる仕組み、短期運転資金・手形貸付での埋め方、外注比率が高い事業ほど運転資金需要が大きい理由、支払サイト交渉まで解説します。
人件費・給与の資金繰りガイド|給与支払い資金を確保する考え方
毎月固定的に発生する人件費・給与の支払い資金をどう確保するかを解説。売上入金前に給与日が来る資金繰りのズレ、短期運転資金や当座貸越枠での備え、社会保険料・賞与まで含めた計画を整理します。
店舗・オフィスの改装資金ガイド|内装・設備更新の融資
店舗・オフィスの改装・内装リニューアル・設備更新の資金調達を整理。改装は設備資金として長期で組める点、賃借物件の原状回復義務、持続化補助金との組み合わせ、相見積もりの取り方まで実務を解説します。