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自己資本比率を上げる決算対策ガイド|銀行評価を高める

公開: 2026-06-08

自己資本比率は純資産を総資産で割った指標で、銀行が企業の安全性を測る中核に位置づける。比率を上げる王道は利益を積んで利益剰余金を厚くすることだが、増資・不要資産の整理・役員借入金の資本性扱い・債務超過の解消も有効な打ち手になる。本記事は「自己資本比率」という単一指標を上げる具体策に絞って整理する。

ポイント

この記事のポイント

ローカルベンチマークの財務6指標に自己資本比率が含まれる

ローカルベンチマーク(経済産業省)の財務分析は①売上増加率②営業利益率③労働生産性④EBITDA有利子負債倍率⑤営業運転資本回転期間⑥自己資本比率の6指標で構成され、自己資本比率が安全性指標として組み込まれている

出典: 経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)」(meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/)

自己資本比率の計算式

自己資本比率(%)=自己資本(純資産)÷総資本(総資産)×100。返済不要の資金が総資産に占める割合を示し、高いほど他人資本への依存度が低く倒産リスクが小さいと評価される

出典: クラウド会計ソフト マネーフォワード「自己資本比率を計算するには?」(biz.moneyforward.com/accounting/basic/44551/)

中小企業で安定とされる比率の目安

一般に30%以上が安定の目安、40〜50%を超えると銀行からの信用が高まりやすいとされる。あくまで一般的な目安で、適正水準は業種により異なる

出典: M&Aロイヤルアドバイザリー「自己資本比率の目安は何%?」(ma-la.co.jp/m-and-a/equity-ratio-benchmark/)

役員借入金を実質自己資本とみなす扱い

代表者からの借入金は、返済を要求しないことが前提となる場合などに自己資本相当とみなしうるが、返済要求が明らかな場合は自己資本相当とみなすことに問題があるとされる。固定負債の最下部(資本金に近い位置)に表示することも実務上重視される

出典: 銀行融資ブログ「『役員借入』を『資本』に見なすためには何が必要か?」(financial-advise.net)/金融庁「資本性借入金関係FAQ」(fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200527/04.pdf)

なぜ自己資本比率が銀行評価の中核なのか

自己資本比率は、純資産(返済義務のない自己資本)を総資産(総資本)で割った指標で、計算式は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」だ。総資産のうち返済しなくてよい資金がどれだけを占めるかを示し、比率が高いほど他人資本(借入金など)への依存度が低く、倒産しにくい安全な会社と評価される。銀行が融資審査でこの指標を重視するのは、貸したお金が返ってくる蓋然性を測る最もシンプルな安全性の物差しだからだ。一般的な目安として、中小企業では30%以上が安定の水準、40〜50%を超えると銀行からの信用が高まりやすいとされる。ただしこれは幅のある目安であり、業種によって適正水準は異なる(在庫や設備を多く抱える業種は総資産が膨らみ比率が下がりやすい)。重要なのは絶対値だけでなく、自社の比率が年々改善しているかという推移であり、銀行は数期分の決算書を並べてトレンドを見ている。

ローカルベンチマークの財務6指標に組み込まれている

経済産業省が提供するローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、企業と金融機関・支援機関が対話するための共通ツールで、補助金申請時の推奨ツールにもなっている。その財務分析は①売上増加率②営業利益率③労働生産性④EBITDA有利子負債倍率⑤営業運転資本回転期間⑥自己資本比率の6指標で構成され、自己資本比率は安全性を測る指標として明確に組み込まれている。自社の自己資本比率を把握しておくことは、ロカベンを通じた銀行との対話でも前提知識になる。

比率を上げる王道:利益を積んで利益剰余金を厚くする

自己資本比率を高める最も基本的で望ましい方法は、利益を出して内部留保(会計上は利益剰余金)を積み上げることだ。毎期の当期純利益は配当などで社外流出させない限り利益剰余金として純資産に積み上がり、純資産(分子)が増えることで比率が上がっていく。増資のように一度きりの外部資金に頼るのではなく、本業の収益力そのもので自己資本を厚くするため、銀行から見ても最も健全な改善経路に映る。逆に言えば、節税のために経費を膨らませて利益を消す行為は、その期の納税額は減らせても利益剰余金が積み上がらず自己資本比率は上がらない。過度な節税は自己資本比率を下げ、融資審査では不利に働きうるという二面性を理解しておく必要がある。「税金を払ってでも利益を残し、純資産を厚くした方が借りやすくなる」という構造を踏まえて、決算対策と節税のバランスを取ることが重要だ。

自己資本比率を上げる主な打ち手と効き方

打ち手分子(純資産)/分母(総資産)への影響位置づけ
利益を積んで利益剰余金を厚くする分子を増やす最も王道・本業の収益力で改善
増資(資本金の払込)分子を直接増やす即効性はあるが一時的・本業改善が前提
不要資産の整理で総資産を圧縮分母を減らす遊休資産・不良在庫・回収不能債権の処分
役員借入金を資本性借入金とみなす扱い実質的に分子側へ要件あり・銀行や専門家との確認が必要
過度な節税の見直し分子の積み上がりを止めない利益を消すと比率は上がらない

増資・総資産の圧縮・役員借入金の資本性扱い

利益の積み上げ以外にも比率を上げる打ち手はある。第一に増資だ。株主や経営者からの出資で資本金を増やせば純資産(分子)が直接増え、調達した現金で借入金を返済すれば総資産(分母)も圧縮できるため、自己資本比率は二重に改善する。ただし増資はそれ自体が収益力を高めるわけではないため、増えた自己資本を活用して新たな利益を生む経営につなげることが前提になる。第二に総資産の圧縮だ。遊休不動産・旧設備・不良在庫・回収見込みのない売掛金など、利益を生んでいない資産を売却・除却すれば分母が小さくなり比率が上がる。これは資産の質を高める実態改善でもある。第三に役員借入金の扱いだ。代表者が会社に貸し付けた資金(役員借入金)は表面上は負債だが、返済を要求しないことが前提となるような場合には、銀行が実質的な自己資本相当とみなして評価することがある。決算書上は固定負債の最下部(資本金に近い位置)に表示することが実務上重視される。さらに踏み込んで返済劣後特約を付した「資本性借入金」として整理すれば、金融機関の評価上は資本に近い扱いを受けやすくなる。ただし返済要求が明らかな場合は自己資本相当とみなすことに問題があるとされ、扱いには金融機関や税理士との確認が欠かせない。

債務超過の解消は最優先課題

純資産がマイナス(債務超過)の状態は自己資本比率もマイナスになり、銀行評価では最も深刻な状態だ。債務超過のままでは新規融資はもちろん条件改善の交渉も難しい。解消には、毎期の黒字を積み上げて利益剰余金で純資産のマイナスを埋めていくのが本筋だが、時間がかかる場合は増資(DES=役員借入金の資本金への振替を含む)で純資産を直接プラスに戻す方法もある。債務超過を抱えている企業は、まず比率を高める前に「マイナスをゼロに戻す」ことを最優先の決算課題として位置づける必要がある。

FAQ

よくある質問

Q自己資本比率はどう計算しますか?
A

自己資本比率(%)は「純資産÷総資産×100」で計算します。純資産は貸借対照表の純資産の部の合計(返済義務のない自己資本)、総資産は資産の部の合計です。例えば総資産1億円・純資産3,000万円なら自己資本比率は30%になります。返済不要の資金が総資産に占める割合を示し、高いほど財務的に安全と評価されます。

Q中小企業の自己資本比率はどのくらいが目安ですか?
A

一般に30%以上が安定の目安とされ、40〜50%を超えると銀行からの信用が高まりやすいとされます。ただしこれは幅のある一般的な目安であり、業種によって適正水準は異なります。在庫や設備を多く抱える業種は総資産が膨らみ比率が下がりやすいため、同業他社や自社の過年度推移と比べて判断するのが現実的です。絶対値だけでなく改善傾向を示すことが銀行評価では重要です。

Q自己資本比率を上げる最も確実な方法は何ですか?
A

利益を出して利益剰余金(内部留保)を積み上げることが最も王道で確実です。毎期の当期純利益を社外流出させずに残せば純資産が増え、比率が着実に上がります。増資のような一時的な外部資金に頼らず、本業の収益力で自己資本を厚くするため、銀行からも最も健全な改善経路と見られます。即効性を求める場合は増資や不要資産の処分を併用します。

Q節税で利益を消すと自己資本比率はどうなりますか?
A

過度な節税で経費を膨らませ利益を消すと、その期の納税額は減りますが利益剰余金が積み上がらず、自己資本比率は上がりません。むしろ純資産の成長が止まるため、融資を重視するなら不利に働きうります。税金を払ってでも利益を残し純資産を厚くした方が借りやすくなる、という二面性があります。決算対策では節税と自己資本の積み上げのバランスを取ることが重要です。

Q役員借入金は自己資本とみなしてもらえますか?
A

代表者からの借入金(役員借入金)は、返済を要求しないことが前提となるような場合には、銀行が実質的な自己資本相当とみなして評価することがあります。決算書では固定負債の最下部(資本金に近い位置)に表示することが実務上重視されます。ただし返済要求が明らかな場合は自己資本相当とみなすことに問題があるとされるため、扱いは金融機関や税理士に確認することをおすすめします。

Q債務超過でも融資は受けられますか?
A

純資産がマイナスの債務超過状態では自己資本比率もマイナスになり、新規融資や条件改善の交渉は非常に難しくなります。まずは毎期の黒字を積み上げて純資産のマイナスを埋めるか、増資(役員借入金の資本金への振替を含む)で純資産を直接プラスに戻すことが最優先課題です。債務超過の解消なしに比率の改善は進まないため、決算対策の起点として位置づける必要があります。

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