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役員報酬と融資審査ガイド|報酬設定が借入に与える影響

公開: 2026-06-08

役員報酬を高く取れば会社の利益と自己資本が減り借入余力が落ちる。逆に極端に低いと利益の水増しを疑われ、役員個人の信用も弱くなる。銀行は会社の返済力を見るため、報酬は税務ルールと審査評価の両面から設計する必要がある。

ポイント

この記事のポイント

役員給与が損金算入される類型

定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3つのいずれか

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与

定期同額給与の改定期限

事業年度開始の日から3か月を経過する日まで(通常改定)

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与

業績悪化改定の方向

減額のみ可能(客観的な経営悪化事由が必要)

出典: 国税庁 役員給与に関するQ&A

業績連動給与の利用可否

有価証券報告書提出会社等が前提で、非上場の中小企業は実質利用が難しい

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与

役員報酬が融資審査に直結する仕組み

銀行は「会社が借入をきちんと返せるか」を決算書から判断する。役員報酬は会社にとって人件費(固定費)であり、報酬を増やせばその分だけ会社の利益が減る。利益が減れば返済原資が細り、毎期の利益の積み上げである自己資本(純資産)も増えにくくなる。つまり役員報酬は、税金だけでなく「会社の返済力」と「財務の厚み」を通じて審査評価に直接効いてくる。報酬は経営者個人の取り分であると同時に、会社の借入余力を左右する財務判断でもある、という二面性をまず押さえておく必要がある。

利益・自己資本を経由した評価への影響

銀行は返済能力を見るとき、利益とキャッシュフローを返済原資として評価する。役員報酬が高いほど会社の利益は圧縮され、同じ事業でも「返済力が弱い会社」に見える。さらに自己資本は過去の利益の蓄積なので、報酬を取りすぎてきた会社は自己資本比率が低くなりやすい。自己資本比率は債務超過への距離を示す指標として重視されるため、ここが薄いと追加融資の難易度が上がる。報酬設定はその年の損益だけでなく、数年単位の財務体質に効いてくる。

役員報酬は高すぎても低すぎても評価を下げうる

融資目線では役員報酬の「ちょうどよさ」が問われる。報酬を高く取りすぎると会社の利益と自己資本が痩せ、返済原資が乏しく見える。一方で極端に低くすると、銀行から「本来は赤字なのに役員報酬を削って黒字に見せているのではないか」と利益の実態を疑われたり、役員個人の生活が成り立たず会社からの貸付(役員貸付金)が膨らんで財務が悪化したりする。役員貸付金は回収可能性が低い資産とみなされ、自己資本から差し引いて評価されることもある。どちらの極端も審査ではマイナスに働きうる。

高すぎる場合に銀行が懸念する点

会社の規模や利益水準に比べて役員報酬が過大だと、固定費が重く資金繰りが不安定に見える。利益のほとんどが報酬で社外(経営者個人)に流出していると、会社に内部留保が残らず、いざというときの返済余力が乏しいと判断されやすい。とくに創業初期や売上が不安定な時期に高い報酬を設定していると、事業の継続性そのものに疑問を持たれることがある。

低すぎる場合に銀行が懸念する点

役員報酬を極端に抑えて黒字を作っている会社は、報酬を本来水準に戻すと赤字になる「実質赤字」とみなされかねない。また役員個人の生活費が不足すると会社から貸付を受けるかたちになり、役員貸付金として資産に計上されて財務の健全性を損なう。役員報酬の金額は経営者の収益力や経営姿勢を測るバロメーターとしても見られているため、不自然な低さはかえって疑念を招く。

損金算入の要件と改定ルールを融資設計に織り込む

役員報酬は税務上のルールが厳格で、これを外すと損金算入が認められず想定外の法人税負担が生じる。損金算入が認められるのは「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3類型のいずれかに該当する場合だけだ。中小企業で中心になるのは毎月同額を支給する定期同額給与で、その金額の通常改定は事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行う必要がある。この期限を過ぎた増額や期中の裁量的な変更は原則として損金不算入になる。役員報酬は「期首に決めたら1年動かせない」前提で、決算予測と返済計画を同時に織り込んで設定する。

3つの損金算入類型の実務上の使い分け

定期同額給与は届出不要で毎月同額を支給する基本形。事前確定届出給与は賞与的な支給を損金にできるが、所轄税務署への事前届出が必要で、届出額と異なる支給をすると原則として全額が損金不算入になる。業績連動給与は利益等の指標に連動する給与だが、有価証券報告書提出会社等が前提のため非上場の中小企業では実質的に使いにくい。融資を見据えるなら、まず定期同額給与で安定した報酬水準を決め、賞与的な支給を加えたい場合に事前確定届出給与を検討する、という順序が現実的だ。最新の要件や金額は必ず最新の国税庁情報で確認したい。

改定が認められる例外と業績悪化時の対応

通常改定(事業年度開始から3か月以内)以外で報酬を変えられるのは、役員の地位変更などの臨時改定事由と、経営状況の悪化に伴う業績悪化改定の2つに限られる。業績悪化改定は減額のみが対象で、銀行のリスケジュールや取引先との関係上やむを得ない減額など、客観的な悪化事実が求められる。資金繰りが厳しくなったとき、役員報酬の減額は固定費を下げる有効な手段だが、税務上認められる減額かどうかは事情によるため、減額の前に税理士へ相談するのが安全だ。

FAQ

よくある質問

Q役員報酬を高くすると融資審査に不利になりますか?
A

役員報酬を高く取るほど会社の利益が減り、毎期の利益の蓄積である自己資本も積み上がりにくくなります。銀行は会社の返済力と財務の厚みを見るため、規模に対して過大な報酬は返済原資が乏しい会社と見られ、評価を下げうる要因になります。

Q逆に役員報酬を低く抑えれば融資は有利になりますか?
A

一概に有利とは言えません。極端に低い報酬は「本来は赤字なのに報酬を削って黒字に見せているのでは」と利益の実態を疑われたり、役員個人の生活費不足から会社への貸付(役員貸付金)が膨らんで財務を悪化させたりします。不自然な低さはかえって審査でマイナスに働きえます。

Q役員報酬はいつでも変更できますか?
A

損金算入される定期同額給与の通常改定は、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行う必要があります。これを過ぎた増額や期中の裁量的な変更は原則として損金不算入となり、想定外の法人税負担が生じます。期首に決めた額を1年間維持するのが基本です。

Q損金算入が認められる役員給与の種類を教えてください。
A

国税庁によると、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型のいずれかに該当する場合に損金算入が認められます。中小企業で中心になるのは毎月同額を支給する定期同額給与で、賞与的な支給をしたい場合は事前確定届出給与の届出を検討します。詳細は最新の国税庁情報で確認してください。

Q業績が悪化したとき役員報酬を減らせますか?
A

経営状況の悪化に伴う業績悪化改定として、減額であれば認められる場合があります。ただし銀行のリスケジュールや取引先との関係上やむを得ない減額など客観的な悪化事由が求められ、利益調整目的の減額は認められません。減額前に税理士へ相談するのが安全です。

Q会社と個人のどちらを優先して報酬を決めればよいですか?
A

一方に偏らず両面のバランスで設計します。借入を増やしたい局面では会社に利益と自己資本を残す方向が評価につながりますが、役員個人の生活や信用を犠牲にすると役員貸付金などで結局財務が悪化します。融資計画と個人の必要生活費を並べ、税務ルールの範囲内で配分するのが現実的です。

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