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内部留保・利益剰余金と融資ガイド|自己資本を厚くする意味

公開: 2026-06-08

内部留保(会計上の利益剰余金)は、過去の利益が社内に蓄積されたもので、貸借対照表の純資産の部に入る。「現金を貯め込んでいる」という誤解とは違い、その多くは設備や在庫・売掛金に姿を変えている。本記事は内部留保=現金という誤解を正し、内部留保を厚くすると自己資本が増えて銀行評価と借入余力が高まる関係を整理する。

ポイント

この記事のポイント

内部留保の会計上の正体

内部留保とは利益剰余金。当期純利益のうち配当などで社外に出さず社内に蓄積された資金で、貸借対照表の「純資産の部」に分類される

出典: クラウド会計ソフト freee「内部留保とは利益剰余金!現預金と誤解される理由」(freee.co.jp/kb/kb-accounting/internal-reserves/)

「内部留保=現預金」は誤解

資産の部には売掛金・在庫・設備・土地建物など多様な項目が含まれるため「内部留保の増加=現預金の増加」は事実ではなく、現預金を含むさまざまな資産の形で企業内に留まっている

出典: クラウド会計ソフト freee「内部留保とは利益剰余金!現預金と誤解される理由」(freee.co.jp/kb/kb-accounting/internal-reserves/)

内部留保と自己資本・融資の関係

内部留保の蓄積により自己資本(純資産)が増え自己資本比率が高まり、金融機関からの信用が向上して借入余力が高まる。中小企業は外部からの増資が難しく、内部留保の積み上げが自己資本を厚くする主な手段になる

出典: 中小機構 J-Net21「内部留保のメリットとデメリットについて教えてください」(j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q1515.html)

日本企業の内部留保(利益剰余金)の最新額

2024年度末で637兆5316億円、前年度比6.1%増。2012年度以来13年連続で過去最高を更新(金融業・保険業を除く全産業ベースの利益剰余金)

出典: 財務省「法人企業統計調査(令和6年度)」(mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r6.pdf)

内部留保=利益剰余金とは何か:「貯め込んだ現金」ではない

内部留保とは、会計上は「利益剰余金」を指す。企業が得た最終的な利益(当期純利益)のうち、配当金などとして社外に出すことなく社内に蓄積された資金で、貸借対照表では「純資産の部」に分類される。ここで多くの人が誤解するのが「内部留保=会社が貯め込んでいる現金」というイメージだ。しかしこれは正しくない。利益剰余金はあくまで過去の利益の累積額であって、それと同額の現金が金庫や預金口座にそのまま眠っているわけではない。稼いだ利益は配当や納税で出ていくほか、設備・在庫・売掛金など事業に必要な資産に姿を変えており、内部留保の増加は必ずしも現預金の増加を意味しない。

なぜ利益剰余金と手元現金は一致しないのか

貸借対照表は「資産=負債+純資産」で釣り合う。利益剰余金が積み上がって純資産(貸方)が増えると、その裏側で資産(借方)も増えるが、増える資産は現預金とは限らない。稼いだ利益で機械設備を買えば固定資産が、商品を仕入れれば棚卸資産が、掛けで売れば売掛金が増える。資産の部には売掛金・在庫・設備・土地建物など多様な項目が含まれるため、「内部留保の増加=現預金の増加」は事実ではない。利益剰余金は現預金を含むさまざまな資産の形で企業内に留まっている、というのが会計上の正確な理解だ。「内部留保を取り崩して給料に回せ」という議論が会計的にかみ合わないことがあるのは、内部留保が必ずしも自由に使える現金ではなく、すでに事業用資産に姿を変えているからである。

利益剰余金は純資産の部に積み上がる

利益剰余金は純資産の部の中で、利益準備金とその他利益剰余金(任意積立金・繰越利益剰余金)に分かれて表示される。このうち繰越利益剰余金は、創業以来の利益の累積を表す勘定で、毎期の当期純利益を社外流出させずに残すほど積み上がっていく。逆に赤字が続けばマイナス(累積損失)にもなり、純資産がマイナスになれば債務超過だ。つまり利益剰余金は、その会社が過去にどれだけ利益を残してきたかという「稼ぐ力の通信簿」であり、銀行はこの蓄積を見て会社の体力を判断する。返済義務のある借入(他人資本)と違い、利益剰余金は返さなくてよい自己資本である点が決定的に重要になる。

内部留保が厚いと融資が受けやすくなる理由

内部留保(利益剰余金)が積み上がると自己資本(純資産)が増え、総資本に占める自己資本の割合である自己資本比率が高まる。自己資本比率は返済不要の資金が資産をどれだけ支えているかを示す指標で、高いほど他人資本への依存度が低く倒産しにくい安全な会社と評価される。銀行は融資審査でこの安全性を重視するため、内部留保が厚い会社は信用力が高まり借入余力が広がる。中小企業にとってこの意味は特に大きい。上場企業のように市場から増資で外部資金を呼び込むことが難しいため、自己資本を厚くする現実的な手段は内部留保の積み上げにほぼ限られるからだ。利益を出して残し続けることが、そのまま借りやすさにつながる構造になっている。なお自己資本比率そのものを上げる具体策(増資・総資産の圧縮・役員借入金の資本性扱いなど)は別記事で詳しく整理している。

過度な節税で利益を消すと内部留保が積み上がらない

内部留保を厚くしたいなら、利益を残すことが前提になる。ところが「税金を払いたくない」という動機で経費を膨らませ利益を消す節税を続けると、その期の納税額は減らせても利益剰余金が積み上がらず、自己資本も増えない。不要な資産購入や保険などで帳簿上の利益を削れば、現金を社外に流出させたうえに内部留保の積み上がりも止まり、自己資本比率はむしろ下がりうる。結果として、いざ設備投資や運転資金で融資を受けたいときに「借りられない・条件が悪い」という事態を招きかねない。税を払ってでも利益を残し純資産を厚くした方が、長い目では借りやすくなるという二面性を理解しておきたい。節税と借入余力のトレードオフは別記事でさらに掘り下げている。

内部留保に対する誤解と会計上の実際

論点よくある誤解会計上の実際
内部留保の正体貯め込んだ現金そのもの過去の利益の累積(利益剰余金)
貸借対照表の位置資産(現預金)純資産の部
資産の姿全額が現預金で滞留設備・在庫・売掛金などに姿を変える
融資への意味関係が薄い自己資本を厚くし借入余力を高める

内部資金と外部資金のバランスをどう取るか

会社が使えるお金には、内部資金(自己資金=利益剰余金の積み上げや手元資金)と外部資金(銀行借入などの他人資本)の二系統がある。内部留保を厚くして自己資本を充実させることは財務の安定につながるが、内部資金だけにこだわって投資のタイミングを逃せば、成長の機会を失う。逆に外部資金(借入)に過度に依存すれば、自己資本比率が下がって返済負担が重くなり、業績が傾いたときに耐えられない。重要なのはどちらか一方ではなく、両者のバランスだ。返さなくてよい内部留保で財務の土台を固めつつ、勝負所では外部資金を使ってレバレッジを効かせる。内部留保が厚い会社ほど、いざというとき有利な条件で外部資金を引き出せるため、平時の利益の積み上げが有事の調達力を左右する。

内部留保は「現金で持つ」とは限らない点に注意

内部留保が厚いこと自体は財務の強さの証だが、それが必ずしも潤沢な手元資金を意味するわけではない点には注意がいる。利益剰余金が大きくても、その資産の中身が回収の遅い売掛金や売れ残り在庫、稼働の低い設備に偏っていれば、いざというときに使える現金は乏しい。黒字でも資金繰りに詰まる「黒字倒産」が起きるのはこのためだ。銀行は利益剰余金の額だけでなく、資産の質(売掛金や在庫の回転、現預金の厚み)まで見ている。内部留保を厚くする取り組みと並行して、利益をきちんと現金として回収し手元資金を確保する資金繰り管理が欠かせない。設備投資など大きな支出を伴う局面では、内部資金で全額をまかなおうとせず、公的金融機関の融資など外部資金を組み合わせる判断も現実的だ。

FAQ

よくある質問

Q内部留保と利益剰余金は同じものですか?
A

ほぼ同じものとして使われます。内部留保は会計上の明確な勘定科目ではなく、企業が得た当期純利益のうち配当などで社外に出さず社内に蓄積された資金を指し、会計上は貸借対照表の純資産の部にある「利益剰余金」に対応します。本記事でも内部留保=利益剰余金として整理しています。

Q内部留保は会社が貯め込んでいる現金のことですか?
A

いいえ、それは誤解です。内部留保(利益剰余金)は過去の利益の累積額であって、同額の現金が手元にあるわけではありません。稼いだ利益は配当・納税で出ていくほか、設備・在庫・売掛金など事業に必要な資産に姿を変えています。「内部留保の増加=現預金の増加」は会計上は成り立ちません。

Qなぜ内部留保が厚いと融資を受けやすくなるのですか?
A

内部留保が積み上がると自己資本(純資産)が増え、総資本に占める自己資本の割合である自己資本比率が高まります。自己資本比率が高いほど返済不要の資金で資産を支えており倒産しにくいと評価されるため、銀行の安全性評価と信用力が上がり借入余力が広がります。中小企業は増資が難しく内部留保の積み上げが主な手段です。

Q節税で利益を消すと内部留保にどう影響しますか?
A

過度な節税で経費を膨らませ利益を消すと、その期の納税額は減らせても利益剰余金が積み上がらず、自己資本も増えません。不要な資産購入などで帳簿上の利益を削ると現金も社外に流出し、自己資本比率はむしろ下がりうります。融資を重視するなら、税を払ってでも利益を残し純資産を厚くした方が長期的には借りやすくなります。

Q内部留保が厚ければ手元資金も潤沢ということですか?
A

必ずしもそうではありません。利益剰余金が大きくても、その資産の中身が回収の遅い売掛金や売れ残り在庫、稼働の低い設備に偏っていれば、使える現金は乏しいことがあります。黒字でも資金繰りに詰まる黒字倒産はこのために起きます。内部留保を厚くする取り組みと並行して、利益を現金として回収する資金繰り管理が欠かせません。

Q内部資金と外部資金はどうバランスを取ればよいですか?
A

返さなくてよい内部留保(自己資金)で財務の土台を固めつつ、設備投資など勝負所では銀行借入などの外部資金を組み合わせるのが基本です。内部資金だけにこだわると投資機会を逃し、外部資金に過度に依存すると自己資本比率が下がり返済負担が重くなります。内部留保が厚い会社ほど有利な条件で外部資金を引き出せます。

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