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赤字決算でも融資を通す方法:銀行が見る4つのポイント

公開: 2026-05-21

赤字決算は即融資不可ではない。銀行が見るのは赤字の中身と回復シナリオで、合理的に説明できれば融資余地は残る。一時的赤字と構造的赤字の区別、事業計画書での説明、公庫セーフティネット貸付の活用を公式制度ベースで整理する。

ポイント

この記事のポイント

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の国民生活事業 融資限度額

7,200万円

出典: 日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」公式ページ

セーフティネット貸付の返済期間

設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間3年以内)

出典: 日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」公式ページ

セーフティネット貸付の赤字企業対象要件

赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている方、または前期に損失を生じており最近の決算期で利益が増加したものの繰越欠損金を有している方

出典: 日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」公式ページ

金融庁の融資格付け新指針(2025年4月)

財務情報に加え技術力・知財・顧客販路等を総合判断し、赤字決算が続く企業も将来性が見込めれば正常先に分類

出典: 日本経済新聞「銀行の融資格付け柔軟に、赤字でも成長力評価を 金融庁が新指針」(2025年4月)

赤字には3種類ある:銀行は「赤字の中身」を見る

赤字決算と一口に言っても、銀行の評価は赤字の中身によって大きく分かれる。重要なのは①一時的赤字(特別損失・先行投資・外部要因による単年赤字)②戦略的赤字(新規事業立ち上げ・設備投資の減価償却負担による計画的赤字)③構造的赤字(売上減少・粗利率低下が複数期続く赤字)の3類型に切り分けることだ。一時的赤字と戦略的赤字は合理的な説明と回復シナリオがあれば融資判断は前向きになりやすい。一方、構造的赤字は通常融資のハードルが上がり、公的制度や経営改善計画とのセット運用が現実的になる。銀行員が決算書を見るときは「営業利益」と「経常利益」の推移、そして赤字の発生要因を真っ先に確認するため、自社の赤字がどの類型かを正しく言語化することが第一歩だ。

赤字の3類型と銀行評価への影響

赤字の類型主な原因銀行の見方
一時的赤字特別損失・原材料高騰・取引先倒産等の外部要因一過性の説明と回復見通しがあれば融資余地あり
戦略的赤字新規事業先行投資・設備投資の減価償却負担計画通りであれば前向きに評価される余地あり
構造的赤字売上減少・粗利率低下が複数期継続通常融資は厳しい。公的制度・改善計画とセットで検討

ポイント1:事業計画書で赤字の原因と黒字化シナリオを示す

赤字決算で融資を申し込む際に最重要となるのが事業計画書だ。決算書だけを提出しても審査担当者は「なぜ赤字になったのか」「次期はどうなるのか」を読み取れない。事業計画書には①赤字の原因分析(外部要因か内部要因か、一時的か構造的か)②黒字化に向けた具体的アクション(売上増加策・コスト削減策・粗利改善策)③数値計画(3年程度の損益計画・資金繰り計画)の3点を必ず盛り込む。とくに資金繰り計画は重要で、申込予定の融資を返済しながら事業継続できることを月次ベースで示すことで、銀行担当者の稟議書作成を後押しする効果がある。「赤字補てんのための借入」ではなく「黒字化までの運転資金」「成長投資のための先行資金」として位置づけ直すことが説明の軸になる。

ポイント2:日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)を検討する

民間銀行が慎重な場合の有力な選択肢が、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)だ。これは社会的・経済的環境の変化により一時的に業況が悪化している事業者向けの公的制度で、赤字企業も明確に対象に含まれている。具体的には「赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている方」「前期に損失を生じており最近の決算期で利益が増加したものの繰越欠損金を有している方」も対象だ。融資限度額は国民生活事業で7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間3年以内)と長期で、月々の返済負担を抑えながら経営改善に取り組める。物価高騰・取引先倒産・自然災害など外部要因による業況悪化の証憑(試算表・売上推移表等)を準備して申し込むのが基本的な流れになる。

申込時に準備すべき証憑書類

経営環境変化対応資金を申し込む際は、外部環境変化と自社業績悪化の因果関係を示す資料の準備が重要だ。直近3期分の決算書に加えて、月次試算表・売上推移表・主要取引先別売上一覧・コスト構造の変化が分かる資料などを揃えると審査がスムーズに進みやすい。融資申込書に記載する「事業の概要」「資金の使い道」「返済財源」の3項目は、事業計画書の内容と整合させる。

ポイント3〜4:信用保証協会の活用と「事業性評価融資」への動き

ポイント3は信用保証協会付き融資の活用だ。協会が保証してくれることで銀行のリスクが大幅に軽減されるため、プロパー融資(無保証融資)では難しい赤字決算企業でも保証協会付きであれば前向きに検討してもらえるケースがある。一般保証枠(責任共有制度では原則80%保証)に加え、業況悪化業種に該当する場合はセーフティネット保証5号(別枠で80%保証)、突発的危機指定地域ではセーフティネット保証4号(別枠で100%保証)が利用可能だ。ポイント4は近年金融庁が推進する事業性評価融資の流れを意識すること。2025年4月、金融庁は債務者区分について新たな運用指針を示し、財務情報に加えて技術力・知的財産・顧客販路などを総合的に判断するよう金融機関に求めた。赤字決算が続く企業も将来の事業成長が見込めれば「正常先」として分類される余地が広がっており、技術や顧客基盤の強みを定量的に伝えられる資料(特許リスト・主要顧客との取引年数・継続率等)を用意することで、決算書だけでは見えない自社の強みを銀行に評価してもらいやすくなる。

FAQ

よくある質問

Q単年赤字で融資の審査は通りますか?
A

単年赤字そのものが即座に否決理由になるわけではない。重要なのは赤字の原因が一時的か構造的かという点で、特別損失や一過性のコスト増による単年赤字であれば、合理的な説明と次期黒字化のシナリオを示すことで融資判断は前向きになりやすい。複数期連続の赤字は審査ハードルが上がる。

Q赤字の理由はどこまで具体的に説明すべきですか?
A

可能な限り数値で説明することを推奨する。例えば「原材料高騰の影響で粗利率が○%低下し、売上総利益が○万円減少した」「新規事業立ち上げに伴う先行投資○万円が販管費を押し上げた」など、勘定科目ベースで因果関係を示すと審査担当者の稟議書作成に直接活用されやすい。

Q日本政策金融公庫のセーフティネット貸付は赤字なら必ず使えますか?
A

必ずというわけではない。経営環境変化対応資金は赤字幅縮小傾向や前期赤字からの利益増加など、改善の兆しがある企業が対象として明示されている。深刻な構造的赤字の場合は別の制度(再生支援メニュー等)の検討が必要になる場合がある。まずは公庫支店または商工会議所の窓口で個別相談することを推奨する。

Q赤字でも信用保証協会の保証は受けられますか?
A

受けられるケースは多い。信用保証協会は中小企業の信用補完を目的とした公的機関で、銀行プロパー融資では難しい赤字決算企業に対しても、事業継続性と返済能力が見込まれれば保証を承諾する判断をする。ただし債務超過・税金滞納・代位弁済歴がある場合は保証拒否となる可能性があるため、申込前に窓口で事前相談することが望ましい。

Qメガバンクと地方銀行・信用金庫では赤字企業への対応に違いはありますか?
A

違いはある。メガバンクは標準化されたスコアリングモデルを重視するため赤字決算では審査ハードルが高くなりやすい一方、地方銀行・信用金庫は地域密着型で経営者や事業内容を直接見て判断する文化が比較的残っているため、赤字でも事業計画と将来性を丁寧に説明することで対応してもらえるケースがある。日本政策金融公庫も中小企業支援を本来業務とするため赤字企業相談に慣れている。

Q事業計画書は自分で作るべきですか、専門家に依頼すべきですか?
A

自社の状況を経営者自身が言語化できることが審査面談で重要なため、骨子は経営者自身が作るのが原則だ。一方で数値計画の精緻化・銀行員視点での記述見直しでは認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士等)のサポートを受けると説得力が高まる。商工会議所・よろず支援拠点では無料相談も利用できる。