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事業性融資はなぜ難しい?審査に通らない理由と通すための準備

公開: 2026-07-03

事業性融資(担保・経営者保証に過度に依存せず、事業の内容や将来性を評価して行う融資)の審査が難しいのは、金融機関が決算書の数字だけでなく事業の中身・競争力・将来キャッシュフローまで読み解き、貸出後も継続してモニタリングする必要があるためだ。通すには、事業計画・財務資料・銀行との対話の3軸を整え、自社の強みと数値根拠を伝えられる状態を作ることが近道になる。

ポイント

この記事のポイント

事業性評価に基づく融資とは

金融庁が推進する、財務データや担保・保証に必要以上に依存せず、借り手企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価して行う融資。2014年(平成26事務年度)の金融モニタリング基本方針で方針として打ち出された

出典: 中小企業庁「中小企業白書(平成28年版)3 事業性評価の必要性」(chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b2_5_2_3.html)

企業価値担保権の施行日

令和8年(2026年)5月25日施行。無形資産を含む事業全体(総財産)を担保とし、不動産担保・経営者保証への過度な依存から脱却して事業の将来性に基づく融資を後押しすることを目的とする

出典: 金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」(fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html)

事業性評価で見る要素

決算書等の定量情報に加え、事業の内容・強み・経営者の資質・市場での競争力といった定性面と、将来の成長可能性を多角的に分析する。定量評価だけで完結しない点が従来型審査との違い

出典: 中小企業庁「中小企業白書(平成28年版)3 事業性評価の必要性」/金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」

想定される活用局面

金融庁は企業価値担保権の活用が想定される局面として、スタートアップ・事業承継・事業再生を挙げ、業種別の審査・モニタリング指標や期中のコベナンツ・モニタリングの実務例を整理している

出典: 金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」(fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html)

金融機関に求められる対応

金融庁は事業性融資について、タイムリーな経営支援・適切な引当方法・組織体制の整備・人材育成を金融機関に期待している。目利きと継続モニタリングの負荷が審査を難しくする構造的な要因になっている

出典: 金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」(fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html)

なぜ事業性融資の審査は「難しい」と言われるのか

事業性融資とは、不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、事業の内容や将来性そのものを評価して行う融資を指す。金融庁は2014年(平成26事務年度)の金融モニタリング基本方針で「財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価する」融資(事業性評価に基づく融資)を打ち出し、2026年5月25日には無形資産を含む事業全体を担保にできる「企業価値担保権」が施行された。難しいと言われる理由は制度が新しいからではなく、審査の構造そのものにある。担保・保証があれば金融機関は「返せなければ担保を処分する」という回収の道筋で貸せるが、担保に頼らない融資では事業の中身・競争力・将来キャッシュフローを金融機関自身が読み解き、貸出後も継続的にモニタリングしなければならない。この目利き力とモニタリング負荷が、従来型の担保融資より審査のハードルを上げている。裏を返せば、事業を数値と言葉で説明できる企業ほど通りやすくなる余地があるということでもある。

従来型(担保・保証依存)と事業性評価型の審査の違い

項目従来型の担保・保証融資事業性評価に基づく融資
主に見るもの担保物件の処分価値・保証の有無事業の内容・競争力・将来キャッシュフロー
評価の中心過去の決算実績と担保過去実績+将来性・定性情報
金融機関の負荷担保評価が中心で比較的定型目利き+貸出後の継続モニタリングが必要
企業に求められる説明担保・保証の提示が中心事業計画・強み・数値根拠の言語化
向く企業像有形資産を持つ既存企業無形資産中心の企業・成長企業・再生企業

審査で見られるポイント:定量と定性の両面

事業性評価の審査は、決算書から読み取れる定量評価と、事業の中身を掘り下げる定性評価の両面で行われる。定量面では、売上・利益の推移だけでなく、営業キャッシュフローや債務償還年数といった「返済に回せる原資がどれだけあるか」が重視される。返済原資の見込みが説明できなければ、将来性を訴えても審査は前に進みにくい。定性面では、事業の強み(何で稼いでいるのか)、経営者の資質・経営姿勢、市場での競争力や商流(仕入れから販売までの取引構造)、そして将来の成長可能性が評価される。ポイントは、この定性情報が定量数値と地続きになっているかどうかだ。「自社の強み」が売上や利益にどう結び付くのか、重要な成功要因が将来の財務数値にどう落ちるのかを説明できて初めて、金融機関は将来性を評価に織り込める。強みの言語化と数値計画が切り離されていると、いくら熱意を伝えても「定性的な話」で終わってしまう。

事業性融資で通らない典型的な理由

事業性融資の審査で通らないケースには、担保・保証に依存する従来型融資とは異なる、この融資特有の落とし穴がある。第一に、事業計画が抽象的で数値の根拠が示されていないパターンだ。「市場が伸びている」「独自の技術がある」といった主張が、売上・利益の予測にどう結び付くのかが説明されていないと、金融機関は将来性を評価できない。第二に、自社の強みや競争力を言語化できていないパターン。事業性評価は事業の中身を評価する審査なので、経営者自身が「何で稼いでいるのか」「なぜ競合に勝てるのか」を語れないと、評価の材料が集まらない。第三に、貸出後のモニタリングに耐える情報開示の体制がないパターン。月次試算表や資金繰り表を継続的に出せる企業でないと、将来性に基づく融資は金融機関にとってリスク管理が難しくなる。逆に、定量面(返済能力・財務内容)が最低ラインを割っている場合や、税金滞納・信用情報の問題がある場合は、事業性評価以前の一般的な否決要因に当たる。

一般的な否決理由との切り分け

融資が通らない原因には、事業性評価に特有のもの(強みや将来性を伝えられない)と、どの融資でも共通する一般的なもの(信用情報の問題・税金の滞納・自己資金不足・返済能力の不足)がある。両者は対策の方向が異なる。一般的な否決要因は「事実として満たしているか」の問題なので、まず滞納の解消や財務改善で土台を整える必要がある。一方、事業性評価特有の「伝えられない」問題は、資料と対話で改善できる余地が大きい。自社がどちらでつまずいているのかを見極めることが、遠回りを避ける第一歩になる。融資否決の一般的な原因の整理は別記事に譲り、本記事では事業性評価で評価されるための準備に焦点を当てる。

事業性融資を通すための準備:事業計画・財務・対話の3軸

事業性融資を通す準備は、事業計画・財務資料・銀行との対話の3軸で整理すると漏れがない。第一の事業計画では、市場環境・自社の強み・重要な成功要因を、売上と利益の予測に接続して書く。「なぜその数字になるのか」の根拠(客数×単価、契約件数、稼働率など)を示すことが、定性的な将来性を審査に織り込ませる鍵になる。第二の財務では、月次試算表・資金繰り表・主要KPI(受注残・稼働率・継続顧客数など)を継続的に作成し、いつでも共有できる状態にしておく。これは貸出後のモニタリングに耐える体制を先に見せることでもあり、事業性評価に基づく融資の事実上の前提になる。第三の対話では、メインバンクの担当者に事業の進捗・課題・見通しを定期的に共有し、決算期だけでなく期中から関係を作る。2026年5月に施行された企業価値担保権を見据えるなら、特許・商標・顧客基盤・契約といった無形資産を棚卸しして説明できるようにしておくと、将来性を訴える材料が増える。

相談先の選び方

事業性評価に基づく融資は、金融機関側の目利き力とモニタリング体制が前提になるため、どこに相談するかで進めやすさが変わる。政府系では日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)が、担保・保証に過度に依存しない融資や事業性評価の実務に取り組んできた実績がある。民間では、事業性評価に積極的な地方銀行・信用金庫を選ぶとよい。いずれの場合も、決算期だけの単発相談ではなく、期中から月次資料を共有して事業の実態を理解してもらう関係づくりが、将来性に基づく融資判断を引き出す土台になる。複数の金融機関と並行して対話し、自社の事業をどこが最も深く理解してくれるかを見極めるのが現実的な進め方だ。

FAQ

よくある質問

Q事業性融資とは何ですか?
A

不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、事業の内容や成長可能性といった将来性を評価して行う融資を指す。金融庁が2014年以降「事業性評価に基づく融資」として推進しており、2026年5月25日には無形資産を含む事業全体を担保にできる企業価値担保権も施行された。

Qなぜ担保に頼らない融資は審査が難しくなるのですか?
A

担保や保証があれば金融機関は回収の道筋を確保して貸せるが、それに頼らない融資では事業の中身・競争力・将来キャッシュフローを金融機関自身が読み解き、貸出後も継続的にモニタリングする必要がある。この目利きと管理の負荷が、従来型より審査のハードルを上げている。

Q事業性評価では具体的に何を見られますか?
A

決算書等の定量情報(売上・利益・返済原資)に加えて、事業の強み・経営者の資質・市場での競争力・商流といった定性面と、将来の成長可能性を多角的に見る。重要なのは、その強みや将来性が売上・利益の予測とどう結び付くかを説明できているかどうかだ。

Q事業計画書はどこまで詳しく作ればよいですか?
A

将来性を主張するだけでなく、その数字の根拠(客数×単価、契約件数、稼働率など)まで落とし込むことが求められる。市場環境・自社の強み・重要な成功要因を、売上と利益の予測に接続して書けているかが判断の分かれ目になる。抽象的な意気込みだけでは審査は前に進みにくい。

Q事業性評価に前向きな金融機関はどこですか?
A

政府系では日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)が、担保・保証に過度に依存しない融資や事業性評価の実務に取り組んできた実績がある。民間では事業性評価に積極的な地方銀行・信用金庫が選択肢になる。期中から月次資料を共有し、事業を深く理解してもらう関係づくりが有効だ。

Q企業価値担保権が施行されれば審査は通りやすくなりますか?
A

2026年5月25日に施行されたが、担保権者となる信託会社の免許取得や金融機関側の事業性評価・モニタリング体制の整備が進んだところから段階的に取扱いが始まる見込みで、施行直後に全ての中小企業へ一斉に普及するわけではない。将来性を数値と資料で説明できる準備は今のうちから進めておく価値がある。

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