居酒屋の開業資金ガイド|設備と深夜営業の届出・融資
公開: 2026-06-09
居酒屋の開業資金は「設備資金(内装・厨房設備・カウンター/座席・食器)」と「運転資金(仕入・人件費・家賃・当面の生活費)」に分けて設計する。居酒屋は酒類中心の業態で、深夜0時以降に酒類を提供するなら飲食店営業許可に加えて警察署への届出が要る。許可・届出の要件は設備にも資金にも直結するため、資金計画とセットで詰めるのが基本になる。
この記事のポイント
居酒屋に必要な営業許可(飲食店営業許可)
居酒屋など食品を調理して客に提供する飲食店は、食品衛生法に基づく保健所の「飲食店営業許可」が必須。着工前の事前相談(平面図持参)、竣工7〜10日前の書類提出、保健所職員による実地検査を経て許可が交付される。各店舗に1人以上の食品衛生責任者の設置も義務
出典: J-Net21(中小機構)起業支援マニュアル「飲食店開業の諸手続き」(j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list9/9-2-4.html)
深夜0時以降に酒類を提供する場合の届出
午前0時から日の出前に酒類の提供を行う場合は、飲食店営業許可とは別に「深夜における酒類提供飲食店営業」として公安委員会への届出が別途必要。最寄りの警察署保安係に相談のうえ手続きする(許可制ではなく届出制)
出典: J-Net21(中小機構)起業支援マニュアル「飲食店開業の諸手続き」(j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list9/9-2-4.html)
深夜酒類提供営業の届出様式(東京都の例)
東京都の場合、警視庁の様式一覧に「深夜における酒類提供飲食店営業」の営業開始届出書(別記様式第47号)・営業の方法を記載した書類(別記様式第48号)が用意されている
出典: 警視庁「深夜における酒類提供飲食店営業(様式一覧)」(keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/fuzoku/style/style3.html)
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)。対象は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方。返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)
出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式(jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
喫茶・飲食の営業許可の統合(2021年食品衛生法改正)
2021年6月の食品衛生法改正で営業許可業種が再編され、従来の「喫茶店営業許可」は廃止されて「飲食店営業許可」に統合された。居酒屋は従来どおり飲食店営業許可で営業する
出典: J-Net21(中小機構)ビジネスQ&A「喫茶店の開業を予定しています。営業にあたり必要となる許認可制度が変更になったと聞きましたが…」(j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q1427.html)
居酒屋の開業資金は「設備資金」と「運転資金」を分けて積み上げる
居酒屋の開業資金は、性質の異なる2種類に分けて設計するのが基本だ。1つは設備資金で、店舗物件の取得費、内装・外装工事、厨房設備(シンク・冷蔵冷凍庫・コンロ・調理機器・食器洗浄機)、酒類を冷やす冷蔵庫やビールサーバー、カウンター・テーブル・椅子・座敷などの客席什器、ジョッキ・グラス・皿などの食器が含まれる。これらは開業時に一度そろえる固定的な投資で、購入後も長く使い続ける資産にあたる。もう1つは運転資金で、酒類・食材の仕入、スタッフの人件費、家賃、水道光熱費、そして売上が安定するまでの当面の生活費を賄うための資金だ。重要なのは、設備資金は返済期間の長い融資で、運転資金は別枠で、というように用途と資金調達の期間を合わせることだ。居酒屋はカウンターや座席のつくり込み・酒類の品ぞろえで雰囲気を表現する業態のため、内装と客席什器・酒類在庫に資金が集中しやすい。具体的な金額は店舗の規模・席数・立地・業態(大衆居酒屋か個室中心かなど)で大きく変わるため、数字は見積書で実額を積み上げるのが確実だ。
居酒屋の開業資金の費目分類
| 区分 | 主な費目 | 対応する資金の性質 |
|---|---|---|
| 物件・内装 | 物件取得費・内装外装工事・給排水/電気/空調工事 | 設備資金(長期) |
| 厨房設備 | シンク・冷蔵冷凍庫・コンロ・調理機器・食器洗浄機 | 設備資金(長期) |
| 酒類提供設備 | ビールサーバー・酒類用冷蔵庫・製氷機・ドリンク什器 | 設備資金(リース・割賦も選択肢) |
| 客席什器・食器 | カウンター・テーブル・椅子・座敷・ジョッキ/グラス/皿 | 設備資金(中古活用で圧縮可) |
| 運転資金 | 酒類/食材の仕入・人件費・家賃・水道光熱費・当面の生活費 | 運転資金(別枠で厚めに確保) |
許認可と設備:飲食店営業許可と「深夜酒類提供」の届出
居酒屋を営業するには、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所から取得する必要がある。許可までの流れは、着工前に平面図を持参して保健所へ事前相談し、竣工7〜10日前に必要書類を提出、保健所職員による実地検査を経て許可が交付される、という順序になる。施設基準を満たす必要があり、手洗い設備・シンクの数・区画の分け方など、求められる設備がそのまま内装費・厨房設備費に直結する。各店舗には食品衛生責任者を1人以上置くことも義務だ。居酒屋に固有なのが「深夜酒類提供」の論点で、午前0時から日の出前に酒類の提供を行う場合は、飲食店営業許可とは別に「深夜における酒類提供飲食店営業」として公安委員会(窓口は所轄の警察署保安係)への届出が別途必要になる。これは許可制ではなく届出制で、東京都の場合は警視庁の様式一覧に営業開始届出書(別記様式第47号)と営業の方法を記載した書類(別記様式第48号)が用意されている。どの設備が必要か、どの程度の工事が求められるか、深夜営業の届出にどんな図面が要るかは施設の状況や提供内容によって判断が分かれるため、内装設計や設備の発注を確定する前に、保健所と警察署の双方へ事前相談することが重要だ。要件を後から知って設備をやり直すと費用が想定外に膨らむため、資金計画と許認可要件はセットで詰める必要がある。
「深夜0時以降に酒類を出すか」で必要な手続きが変わる
同じ居酒屋でも、深夜0時より前に閉店する店と、0時以降も酒類を提供する店とでは必要な手続きが変わる。営業時間を0時までに収めるなら飲食店営業許可で営業できるが、0時を超えて酒類を主に提供するなら「深夜における酒類提供飲食店営業」の届出が加わる。深夜帯まで営業すると人件費(深夜割増を含む)や水道光熱費といった固定費も増えるため、営業時間の設計は許認可だけでなく運転資金の見積もりにも影響する。営業時間の前提を事業計画書に明記し、それに合わせて固定費と運転資金を見込んでおくと、審査担当者が収支を理解しやすい。
使える融資と、居抜き・中古で初期費用を抑える設計
居酒屋の開業資金調達は、①自己資金 ②日本政策金融公庫の創業向け融資 ③地方銀行・信用金庫の信用保証協会付き融資(自治体の制度融資)、を組み合わせるのが基本だ。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)。返済期間は設備資金が20年以内(据置5年以内)、運転資金が10年以内(据置5年以内)と長期で、内装・厨房設備に資金が集中する居酒屋の資金構造に合いやすい。一方、自治体が信用保証協会・金融機関と連携する制度融資は、低利・保証料補助などの条件が地域ごとに設けられている。初期費用を抑える有力な方法が居抜き物件の活用だ。前のテナントが飲食店だった居抜き物件なら、内装・厨房設備・客席をそのまま使える場合があり、躯体だけのスケルトン物件に比べて内装工事費を大きく圧縮できる。厨房機器や客席什器を中古でそろえる、ビールサーバーなどの設備をリース・割賦で導入して借入枠を温存する、といった工夫も初期費用の圧縮に有効だ。ただし既存設備が自分の業態・許可要件・深夜営業の要件に合うかは事前確認が必要で、改修が発生する場合もある。設備を抑えても、開業後に集客が安定するまでの運転資金は別途しっかり確保しておく必要がある。
集客が安定するまでの運転資金を厚めに確保する
居酒屋は開業直後から客足が安定するわけではなく、認知が広がり常連がつくまでには一定の時間がかかる。その間も家賃・人件費・酒類や食材の仕入・水道光熱費は毎月出ていくため、売上が伸びるまでの赤字や薄利の期間を運転資金で支える必要がある。設備資金を抑えることに気を取られて運転資金を薄くすると、軌道に乗る前に資金が尽きるリスクがある。運転資金は設備資金とは別枠で確保し、家賃数ヶ月分以上を目安に、立地や想定売上を踏まえて厚めに見積もるのが安全だ。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では運転資金枠が最大4,800万円・返済10年以内(据置5年以内)と設計されており、設備資金とあわせて1本の事業計画で申し込める。
よくある質問
Q居酒屋を開業するのに必要な営業許可は何ですか?▼
食品を調理して提供する居酒屋は、保健所から食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を取得する必要がある。着工前の事前相談、書類提出、保健所職員の実地検査を経て許可が交付され、各店舗に食品衛生責任者を1人以上置くことも義務だ。施設基準で求められる設備が内装費・厨房費に直結するため、設計を確定する前に管轄の保健所へ事前相談することを推奨する。
Q深夜0時を過ぎて酒類を出す場合、別の手続きは必要ですか?▼
必要だ。午前0時から日の出前に酒類の提供を行う場合は、飲食店営業許可とは別に「深夜における酒類提供飲食店営業」として公安委員会(窓口は所轄の警察署保安係)への届出が別途必要になる。これは許可制ではなく届出制で、東京都の場合は警視庁の様式一覧に営業開始届出書などが用意されている。要件や必要書類は管轄により扱いが分かれるため、事前に警察署へ相談するのが確実だ。
Q0時より前に閉店すれば深夜の届出は不要ですか?▼
営業を午前0時までに収め、0時以降に酒類を提供しないのであれば、飲食店営業許可で営業でき、深夜酒類提供の届出は基本的に不要になる。ただし0時を超えて酒類を主に提供する場合は届出が必要だ。営業時間をどう設計するかは許認可だけでなく、深夜帯の人件費や水道光熱費といった固定費・運転資金の見積もりにも影響するため、事業計画の段階で前提を決めておくとよい。
Q居酒屋の開業資金にはどんな融資が使えますか?▼
基本は①自己資金②日本政策金融公庫の創業向け融資③地方銀行・信用金庫の信用保証協会付き融資(自治体の制度融資)の組み合わせだ。公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は対象が新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方で、融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)、設備資金20年以内・運転資金10年以内(据置5年以内)と長期で、内装・厨房に資金が集中する居酒屋に合いやすい。
Q居抜き物件を使うと開業資金はどれくらい抑えられますか?▼
前のテナントが飲食店だった居抜き物件なら、内装・厨房設備・客席をそのまま使える場合があり、躯体だけのスケルトン物件に比べて内装工事費を大きく圧縮できる。厨房機器や客席什器を中古でそろえれば設備資金をさらに抑えられる。ただし既存設備が自分の業態・許可要件・深夜営業の要件に合うかは保健所・警察署の基準で確認が必要で、改修が発生する場合もある。設備を抑えても、開業後の運転資金は別途しっかり確保する必要がある。
Qビールサーバーや厨房設備も融資の対象になりますか?▼
対象になる。ビールサーバー・酒類用冷蔵庫・製氷機・厨房機器・カウンターや座席などの客席什器は設備資金として融資できる。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では設備資金の返済期間が20年以内と長い。一方、高額な設備はリースや割賦で導入し、融資の借入枠を運転資金側に温存するという選択肢もある。見積書を複数社から取って価格の妥当性を示すと、審査がスムーズになりやすい。
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