警備業の開業資金ガイド|警備業法の認定と運転資金
公開: 2026-06-09
警備業の開業資金は「警備業法上の認定取得コスト」と「人件費が入金より先行する運転資金」の2点に集約される。装備や車両の初期費用は業務区分で幅があるため定性的に捉え、労働集約型ゆえに月商の数ヶ月分の運転資金枠を先に確保しておくのが安定経営の前提になる。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を主軸に、民間銀行・制度融資を組み合わせる設計が現実的だ。
この記事のポイント
警備業の認定(都道府県公安委員会)の手数料と有効期間
認定申請手数料は2万3,000円、認定の有効期間は5年(更新が必要)。申請から認定可否の通知まで概ね40日。営業所ごと・警備業務の区分ごとに警備員指導教育責任者の選任が義務付けられている
出典: 警視庁「警備業の認定申請」公式(keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/keibi/k_keibi/shinsei.html)
一般警備員の新任教育・現任教育の時間数
新任教育は基本教育・業務別教育を併せて20時間以上、現任教育は併せて10時間以上。警備業務経験者は新任7時間以上、元警察官は新任13時間以上など区分により異なる
出典: 警視庁「警備員に対する教育時間」公式(keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/keibi/k_keibi/education_time.html)
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額
7,200万円(うち運転資金は別途設定)/返済期間:設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)。対象は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式(jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
警備業法第3条の欠格事由
警備業法第3条の各号に該当する者(破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上(旧・禁錮以上)の刑に処せられた者、暴力団員等、心身の障害により業務を適正に行えない者など)は警備業を営むことができない
出典: 警視庁「警備業の認定申請」公式/警備業法(laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117/)
警備業の開業は「公安委員会の認定」が出発点:欠格事由・指導教育責任者・新任教育
警備業を営むには、主たる営業所を管轄する都道府県公安委員会の認定を受ける必要がある。これは飲食業の許可などと同様に「事業を始める前提条件」であり、認定なしに警備業務を請け負うことはできない。認定の入口になるのが警備業法第3条の欠格事由で、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上(旧・禁錮以上)の刑に処せられた者、暴力団員等、心身の障害により業務を適正に行えない者などが該当する場合は認定を受けられない。法人の場合は役員全員がこの欠格事由に該当しないことが求められる。さらに、営業所ごと・取り扱う警備業務の区分ごと(施設警備・交通誘導・貴重品運搬・身辺警備など)に、資格者証の交付を受けた警備員指導教育責任者を選任しなければならない。雇用した警備員には新任教育(基本教育と業務別教育を併せて20時間以上)を実施する義務もあり、開業準備段階で「認定取得コスト」と「教育体制の構築」を資金計画に織り込んでおく必要がある。認定申請手数料は2万3,000円、認定の有効期間は5年で、申請から通知まで概ね40日かかる点も開業スケジュールに反映させたい。
警備業の開業に伴う主な要件と資金面の論点
| 要件 | 内容 | 資金計画上の論点 |
|---|---|---|
| 公安委員会の認定 | 手数料2万3,000円・有効期間5年・通知まで約40日 | 開業前の固定的コスト |
| 欠格事由(法第3条) | 役員全員が非該当であること | コストではないが認定可否の前提 |
| 警備員指導教育責任者 | 営業所・業務区分ごとに選任義務 | 有資格者の確保・人件費 |
| 新任教育(20時間以上) | 雇用した警備員へ実施義務 | 稼働前の教育期間の人件費先行 |
初期費用と「人件費先行」の運転資金:労働集約型ゆえに入金前の支払いが膨らむ
警備業の開業資金は、認定取得コストに加えて装備・設備の初期費用と運転資金で構成される。初期費用には制服・帯革などの装備、警笛・無線機・誘導灯といった通信・保安機器、機械警備や巡回を行う場合の車両、事務所の什器・通信回線などが含まれる。ただしこれらの金額は警備業務の区分や事業規模、車両を自社保有するかリースにするかで大きく変動するため、本ガイドでは具体額を断定せず、相見積で実額を把握することを推奨する。より本質的な資金課題は運転資金にある。警備業は典型的な労働集約型で、売上原価の大半が警備員の人件費だ。事業の流れは「契約獲得→警備員の配置→新任教育・給与の支払い→翌月以降に契約先へ請求→入金」というサイクルで動くため、給与・社会保険料という支出が、契約先からの入金よりも先行する。法人取引では「月末締め翌月末払い」が標準で、入金が翌々月になる場合もあり、受注が増えるほど立て替える人件費が膨らむ「黒字でも資金が回らない」状態に陥りやすい。一般に運転資金は固定費の3ヶ月分程度を目安に確保するとされるが、人件費比率が高い警備業ではこの考え方が特に重要になり、月商の数ヶ月分の運転資金枠を開業時点で確保しておくことが安定経営の前提条件になる。
調達ルート:公庫の創業融資を主軸に、民間銀行・制度融資を組み合わせる
警備業の開業・運転資金の調達は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」を主軸に据えるのが現実的だ。同制度は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額7,200万円(うち運転資金は別途設定)、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)と、開業直後の負担を抑えやすい条件になっている。原則として無担保・無保証人での利用が可能なため、不動産などの担保に乏しい警備業でも申し込みやすい。これに加えて、民間銀行・信用金庫で信用保証協会の保証を付けた融資を組み、人件費の立て替えに備えた当座貸越枠を確保しておくと、受注増に伴う運転資金需要に機動的に対応できる。さらに、各都道府県・市区町村が用意する制度融資(自治体・金融機関・信用保証協会の三者連携による低利融資)も、創業期の警備業にとって有力な選択肢だ。制度融資は要件・限度額・利率が自治体ごとに異なるため、開業予定地の制度を窓口で確認する必要がある。審査では、契約先の継続性(年間契約・定期巡回契約の比率)、特定の取引先への依存度、警備員指導教育責任者の確保状況などの「事業の安定性」を示す資料が評価されるため、認定取得の見込みと受注計画を事業計画書に具体的に落とし込んでおきたい。
警備業の資金ニーズ別 主な調達ルート
| 資金ニーズ | 主な調達ルート | 補完手段 |
|---|---|---|
| 認定取得・装備・初期費用 | JFC新規開業・スタートアップ支援資金(設備) | 都道府県の制度融資 |
| 人件費先行分の運転資金 | JFC運転資金+信用保証協会付き融資 | メインバンクの当座貸越枠 |
| 車両(機械警備・巡回) | JFC設備資金・銀行設備融資 | リース活用で頭金圧縮 |
| 受注急増時のつなぎ | メインバンクの当座貸越 | 制度融資の追加枠 |
よくある質問
Q警備業を始めるのに資格や認定は必要ですか?▼
必要だ。主たる営業所を管轄する都道府県公安委員会の認定を受けなければ警備業を営むことはできない。認定申請手数料は2万3,000円、有効期間は5年で、申請から認定可否の通知まで概ね40日かかる。さらに営業所ごと・警備業務の区分ごとに警備員指導教育責任者を選任する義務があり、開業準備段階でこれらのコストと体制を資金計画に織り込む必要がある。
Q警備業法の欠格事由とは何ですか?役員が該当すると開業できませんか?▼
警備業法第3条の各号に該当する者は警備業を営めない。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上(旧・禁錮以上)の刑に処せられた者、暴力団員等、心身の障害により業務を適正に行えない者などが含まれる。法人の場合は役員全員が欠格事由に該当しないことが認定の前提となるため、申請前に役員構成を確認しておくことが重要だ。
Q警備員に対する教育にはどれくらいの時間が必要ですか?▼
未経験の一般警備員には、基本教育と業務別教育を併せて20時間以上の新任教育を実施する義務がある。現職の警備員には併せて10時間以上の現任教育が必要だ。警備業務経験者は新任7時間以上、元警察官は新任13時間以上など区分により短縮される。教育期間中は稼働前でも人件費が発生するため、運転資金の計画に反映させておきたい。
Q警備業の運転資金はなぜ多めに必要なのですか?▼
警備業は売上原価の大半が警備員の人件費を占める労働集約型の業態だからだ。給与・社会保険料の支払いが先に発生する一方、契約先への請求・入金は「月末締め翌月末払い」など翌月以降になるため、受注が増えるほど立て替える人件費が膨らむ。一般に運転資金は固定費の3ヶ月分程度が目安とされるが、人件費比率の高い警備業では月商の数ヶ月分の枠を先に確保しておくのが安全だ。
Q日本政策金融公庫で警備業の開業資金は借りられますか?▼
借りられる。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)だ。原則無担保・無保証人で利用でき、担保に乏しい警備業でも申し込みやすい。認定取得の見込みと受注計画を事業計画書に具体的に示すことが審査評価につながる。
Q公庫以外に警備業が使える調達手段はありますか?▼
ある。民間銀行・信用金庫で信用保証協会の保証を付けた融資を組み、人件費の立て替えに備えた当座貸越枠を確保するのが基本だ。加えて各都道府県・市区町村の制度融資(自治体・金融機関・信用保証協会の三者連携による低利融資)も創業期の有力な選択肢になる。制度融資は要件・限度額・利率が自治体ごとに異なるため、開業予定地の制度を窓口で確認したうえで公庫と組み合わせるとよい。
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