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生成AI投資の資金調達 — ChatGPT/Copilot導入と融資の選び方

公開: 2026-06-05

生成AI投資は機械設備と違いソフトウェア・SaaS利用料・教育費が中心で、担保になる有形資産が残りにくい。日本政策金融公庫の「IT活用促進資金」はソフトウェア取得を資金使途に含む数少ない制度で、補助金との使い分けを設計の起点にすると自己負担を抑えられる。

ポイント

この記事のポイント

IT活用促進資金の資金使途

電子計算機(ソフトウェア含む)・周辺装置・端末装置等の取得のための設備資金および長期運転資金。テレワーク導入を行う方も対象

出典: 日本政策金融公庫「IT活用促進資金」公式サイト(jfc.go.jp/n/finance/search/11_itsikin_m_t.html)

IT活用促進資金の融資限度額

直接貸付7億2千万円・代理貸付1億2千万円

出典: 日本政策金融公庫「IT活用促進資金」公式サイト(jfc.go.jp/n/finance/search/11_itsikin_m_t.html)

IT活用促進資金の返済期間

設備資金20年以内(うち据置期間2年以内)・運転資金10年以内(うち据置期間2年以内)

出典: 日本政策金融公庫「IT活用促進資金」公式サイト(jfc.go.jp/n/finance/search/11_itsikin_m_t.html)

創業期に使える後継制度

「新創業融資制度」は2024年3月廃止。後継の「新規開業・スタートアップ支援資金」は融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)で無担保・無保証人での相談が可能

出典: 日本政策金融公庫 公式サイト/創業手帳「新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新創業融資制度)」解説

中小企業のAI活用状況

中小企業のデジタル化・AI活用は大企業に比べて立ち遅れており、用途やコストの不明確さが導入の障壁とされる

出典: 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第1部 第1章 第5節 デジタル化・DX(chusho.meti.go.jp)

生成AI投資が「設備投資」と違う理由:無形資産中心で担保が残らない

生成AI導入の支出は、ChatGPTやMicrosoft Copilotなどのサブスクリプション利用料、社内データと連携させるためのシステム開発・API連携費、業務に組み込むための社員教育費が中心になる。工作機械や車両のように転売できる有形資産がほとんど残らないため、銀行が担保として評価しにくいのが資金調達上の最大の特徴だ。会計上もソフトウェアは無形固定資産として扱われ、月額利用料部分は資産計上されず費用として流れていく。この性質は、IT・スタートアップが融資で直面する「担保となる有形資産がない」課題(/guide/industry-it-startup)と同根であり、生成AI投資特有の論点として「投資した支出がどう売上増やコスト削減という返済原資に変わるか」を数値で示すことが、有形資産の担保提供に代わる説得材料になる。中小企業のAI活用は大企業に比べて立ち遅れているとされ、用途やコストが不明確なまま導入を見送る企業が多いが、資金使途と効果を整理できれば融資・公的融資・補助金のいずれも活用余地がある。

生成AI投資の支出区分と資金調達上の扱い

支出区分具体例資金区分の目安
ソフトウェア取得社内AIシステム開発・API連携構築設備資金(無形固定資産)
サブスク利用料ChatGPT・Copilot等の月額・年額利用料運転資金(費用処理が中心)
教育・運用費社員研修・プロンプト設計・運用保守委託運転資金
周辺ハードAI処理用PC・サーバー・端末設備資金(有形固定資産)

公的融資の本命:日本政策金融公庫「IT活用促進資金」

生成AIを含む情報化投資の資金調達で中心になるのが、日本政策金融公庫(JFC)の「IT活用促進資金」(企業活力強化貸付)だ。この制度は「電子計算機(ソフトウェア含む)」の取得を資金使途に明記しており、有形設備が残りにくい生成AI投資でも設備資金として申込める点が、一般の設備資金融資との違いになる。融資限度額は直接貸付で7億2千万円、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間2年以内)と長期に設計されている。テレワーク導入を行う事業者も対象に含まれる。創業期で実績が乏しい場合は、2024年3月に廃止された「新創業融資制度」の後継である「新規開業・スタートアップ支援資金」(融資限度額7,200万円・うち運転資金4,800万円、無担保・無保証人での相談が可能)が選択肢になる。生成AI専用の融資制度は公的にも民間にも確認できないため、本記事では既存のIT・設備投資向け融資の枠組みで整理している。

生成AI投資に使える主な公的融資(日本政策金融公庫)

制度名生成AI投資での使いどころ融資限度額・返済期間
IT活用促進資金ソフトウェア取得・情報化投資全般直接貸付7億2千万円/設備20年以内・運転10年以内(据置各2年以内)
新規開業・スタートアップ支援資金創業期のAI活用を含む開業資金7,200万円(うち運転資金4,800万円)・無担保無保証の相談可

補助金との使い分け:返済不要だが後払い、融資はつなぎと自己負担を担う

生成AI導入には補助金という選択肢もある。2026年に名称・要件が再編された「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)はAI機能搭載ツールの導入を対象に含み、制度の詳細は補助金側の解説(/guide/digital-ai-subsidy)にまとめている。補助金と融資は対立する手段ではなく、役割が異なる。補助金は返済不要だが、対象経費を一度全額自社負担で支払い事業完了報告後に精算される後払いが原則のため、導入時点では全額を融資・自己資金で立て替える必要がある。さらに補助率は経費の一部にとどまるため、補助対象外の経費と自己負担分は別途調達しなければならない。実務上は「補助金で賄える部分は補助金、補助対象外の継続利用料や教育費・自己負担分は融資」という分担と、補助金入金までの期間を埋める『つなぎ融資』の確保がセットになる。補助金の採択通知書は事業計画の実現可能性を第三者が認定した材料として、融資審査でプラスに働くことがある。

採択を確実視した資金計画は組まない

補助金は採択されない可能性があるため、採択前提で融資返済計画を立てると不採択時に資金繰りが破綻する。「採択できれば補助金入金分で繰上返済」「不採択でも継続利用料を払いながら返済できる水準」の二段構えで融資額を設計しておくと安全だ。生成AIはサブスク利用料という継続費用が発生する点で、一度きりの設備購入より資金繰り計画に運用フェーズの固定費を織り込む必要がある。

融資審査で見られるポイント:投資が返済原資に変わる道筋を数値化する

担保になりにくい生成AI投資の融資審査で銀行・公庫が重視するのは、「そのAI投資がどうキャッシュフローを改善し、確実な返済原資を生むか」という論理的な裏付けだ。返済原資は大きく二系統に分けて示すとよい。一つはコスト削減効果で、たとえば問い合わせ対応・文書作成・データ入力にかかっていた作業時間の削減を「削減時間×時給換算×人数」で年間金額に換算する。もう一つは売上増効果で、提案書作成の高速化による商談件数の増加や、新サービス提供による単価向上などを保守的に見積もる。提出資料としては、現状の業務コストと導入後の見込みを並べた効果試算表、サブスク利用料を含む月次の資金繰り表、導入ベンダーの見積書を一体で出すと審査担当者が返済可能性を評価しやすい。生成AIは効果が顕在化するまで導入後数か月のラグが生じやすいため、その間は既存のキャッシュフローで返済できる水準に融資額を抑える設計が現実的だ。

生成AI投資の融資審査で効果的な提出資料

資料示すべき内容審査上の効果
業務コスト削減試算表削減作業時間×時給換算×対象人数返済原資(コスト削減)を可視化
資金繰り表サブスク利用料を含む月次の収支見込み継続費用を踏まえた返済余力を提示
導入ベンダー見積書初期費用・利用料・保守の内訳資金使途と金額の妥当性を裏づけ
補助金採択通知書(取得時)採択枠・交付決定額事業計画の実現可能性を補完
FAQ

よくある質問

Q生成AI専用の融資制度はありますか?
A

公的・民間ともに「生成AI専用」と明記された融資制度は確認できません。実務では日本政策金融公庫の「IT活用促進資金」など、ソフトウェアを含む情報化投資を対象とした既存の設備資金・IT投資向け融資を活用するのが基本になります。生成AIに限定した特別な金利や限度額があるわけではありません。

QChatGPTやCopilotの月額利用料も融資の対象になりますか?
A

サブスクリプションの利用料は継続的に発生する費用で、資金区分としては運転資金として扱われるのが一般的です。日本政策金融公庫のIT活用促進資金は設備資金に加えて長期運転資金も使途に含むため、システム構築費などの設備資金とあわせて相談する余地があります。具体的な対象範囲は支店窓口で確認してください。

Q補助金と融資はどちらを先に申し込むべきですか?
A

補助金は対象経費を全額立て替えてから精算される後払いが原則のため、導入時点では融資・自己資金で立て替える資金が必要です。融資で導入資金を確保したうえで補助金を申請する、あるいは補助金の採択通知を取得してから融資相談すると採択通知が信用補完に使えます。いずれにせよ補助金入金までのつなぎ資金を見込んでおくことが重要です。

Q担保になる資産がなくても生成AI投資の融資は受けられますか?
A

生成AI投資はソフトウェアや教育費が中心で有形担保が残りにくいですが、日本政策金融公庫には無担保・無保証人での相談が可能な制度があります。担保の代わりに、AI投資によるコスト削減額や売上増を数値で示した効果試算表と資金繰り表を整え、返済原資の道筋を論理的に説明できるかが審査の焦点になります。

Q生成AI導入の効果はどう数値化すれば審査で評価されますか?
A

代表的なのはコスト削減効果で、問い合わせ対応・文書作成・入力作業などの削減時間を「削減時間×時給換算×対象人数」で年間金額に換算します。加えて提案件数の増加や単価向上といった売上増効果を保守的に見積もります。導入後数か月は効果が出るまでのラグがあるため、その期間は既存のキャッシュフローで返済できる水準に融資額を抑える計画にすると説得力が増します。

Q創業したばかりでも生成AIを使う事業に融資を受けられますか?
A

2024年3月に廃止された新創業融資制度の後継である「新規開業・スタートアップ支援資金」は、創業前や創業初期でも申し込め、無担保・無保証人での相談が可能です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。実績が乏しい段階では事業計画書の具体性と、自己資金の準備状況が審査で重視されます。

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