包括型訪問看護療養費は、すべての訪問看護ステーションの売上を一律に置き換える制度ではなく、届出をした高齢者向け住まい等で重症者等に頻回訪問を行う場合の医療保険上の評価である。開業資金計画では、この制度を見込み収入に先に入れるのではなく、対象建物・人員体制・記録方法を満たせるかを確認してから、資金繰り表に反映する必要がある。
この記事で先に確認すること
- 包括型訪問看護療養費の施行日
- 令和8年6月1日
- 出典: 厚生労働省「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666801.pdf
- 包括型訪問看護療養費の算定対象
- 届出建物に居住する別表第7・第8の対象者又は特別訪問看護指示を受けた者に、1日2回以上の訪問看護を行う場合
- 出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(訪問看護ステーション向け)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
- 単一建物居住利用者20人未満・60分以上90分未満の額
- 1日につき11,010円
- 出典: 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0
- 包括型の実施・記録要件の一部
- 24時間対応、日中と夜間帯に各1回以上、電子的方法による記録・保存
- 出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(訪問看護ステーション向け)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
SECTION 01
包括型訪問看護療養費を、開業時の売上計画にどう位置付けるか
令和8年度診療報酬改定では、訪問看護療養費に「包括型訪問看護療養費」が新設され、令和8年6月1日から施行された。対象は、包括型を算定する建物として届出をした高齢者向け住まい等に居住し、別表第7・第8の疾病等に該当する人又は特別訪問看護指示を受けた人に、1日2回以上の訪問看護を行う場合である。一般の在宅利用者や、届出していない建物の利用者にそのまま当てはめられる制度ではない。
厚生労働省は、届出建物に居住する利用者であっても、利用者ごとの疾病等や訪問状況により包括型訪問看護療養費又は訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定すると示している。開業時の資金計画では、包括型を全利用者の標準収入として置くのではなく、対象建物・対象利用者・訪問回数を分けて、該当が確認できた分だけを収支予測に入れる。
介護保険と医療保険では請求の前提が異なるため、医療保険の包括型に関する見込みと、介護保険サービスの売上見込みも一つの数字に混ぜない。資金繰り表では、利用者数、訪問時間帯、1日当たりの回数、算定可否が確定していない案件を別列にし、融資相談時に前提を説明できる状態にする。
SECTION 02
単価と体制要件を、採用費・運転資金の前提に変換する
包括型訪問看護療養費は、1日当たりの訪問時間と単一建物居住利用者数で額が分かれる。例えば単一建物居住利用者が20人未満の場合、30分以上60分未満は7,010円、60分以上90分未満は11,010円、90分以上は14,010円である。20人以上50人未満、50人以上の場合にはそれぞれ別の額が定められているため、開業計画では利用者数の想定だけでなく、どの建物区分に当たるかを確認する必要がある。
また、算定には24時間の対応体制、日中と夜間帯に少なくとも各1回の訪問、1日当たり60分以上なら3回以上の訪問、1日1回以上の看護職員(准看護師を除く。)による訪問が求められる。電子的方法での記録・保存も必要とされる。
単価だけを売上計画へ入れるのではなく、夜間対応を含む勤務設計、記録システム、責任者による日々の計画確認に必要な費用を同じ月次計画に置くことが、資金不足を防ぐ出発点になる。
人件費やシステム費の見積りは、制度の算定可否とは別に、開設予定地・雇用形態・利用者構成に応じて作る。融資を検討する場合は、事業計画書に通常の訪問看護分と包括型の対象分を分け、制度の対象外となった場合にも返済が継続できる保守的な資金繰りを示す。
包括型訪問看護療養費の額(1日当たり、公式告示の一部)
| 単一建物居住利用者数 | 30分以上60分未満 | 60分以上90分未満 | 90分以上 |
|---|---|---|---|
| 20人未満 | 7,010円 | 11,010円 | 14,010円 |
| 20人以上50人未満 | 6,310円 | 9,910円 | 13,730円 |
| 50人以上 | 5,960円 | 9,360円 | 13,450円 |
SECTION 03
融資相談前に確認する、届出と月次資金繰りの順番
包括型訪問看護療養費を算定するには、地方厚生局長等への届出と、対象となる建物の指定が必要である。厚生労働省の届出様式では、指定訪問看護ステーションの所在地・名称、包括型を算定する利用者が居住する建物の所在地・名称、管理者、建物の種別などを記載する。開業予定の住宅が制度上の対象となるか、併設又は隣接の関係を含めて、管轄の地方厚生局に事前確認する。
資金計画は、まず通常の開業費、採用・研修費、記録システム導入費、訪問開始までの運転資金を積み上げる。その上で、届出と体制整備が完了し、対象利用者への訪問実績が生じる時点以後に限って包括型の収入見込みを置く。売上の立上がりが遅れた場合にも資金不足にならないかを、月ごとに確認する。
融資申込書では「包括型を取れる予定」だけで返済原資を説明せず、届出状況、対象建物、勤務表、訪問回数の想定、制度収入を除いた場合の資金繰りまでを一組で示す。訪問看護を含む福祉事業全体の調達の考え方は、介護・福祉事業の資金調達ガイド、改定後の運転資金の考え方は介護報酬改定後の運転資金確保も参照したい。
SOURCES
この記事で参照した根拠
- 01
包括型訪問看護療養費の施行日
出典: 厚生労働省「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666801.pdf
- 02
包括型訪問看護療養費の算定対象
出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(訪問看護ステーション向け)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
- 03
単一建物居住利用者20人未満・60分以上90分未満の額
出典: 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0
- 04
包括型の実施・記録要件の一部
出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(訪問看護ステーション向け)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
数値・制度は変更される場合があります。確認方法と訂正方針は 運営・編集方針をご覧ください。
FAQ
よくある質問
Q包括型訪問看護療養費は、訪問看護ステーションなら全て算定できますか?▼
いいえ。包括型を算定する建物として届出をした高齢者向け住まい等に居住する人のうち、別表第7・第8の対象者又は特別訪問看護指示を受けた人に頻回訪問を行う場合の評価です。開設しただけでは算定できず、建物・利用者・訪問実績・体制の条件を個別に確認する必要があります。
Q包括型訪問看護療養費はいつから施行されていますか?▼
厚生労働省の令和8年3月5日付通知では、包括型訪問看護療養費を含む訪問看護療養費の新設項目は令和8年6月1日から施行するとされています。開業計画では、申請や体制整備がその日以後であっても、実際に算定できる時点を別途確認して売上開始月を設定します。
Q単価は利用者ごとにどのように決まりますか?▼
包括型訪問看護療養費は、1日当たりの訪問看護時間と、単一建物居住利用者数が20人未満・20人以上50人未満・50人以上のどれに該当するかで額が決まります。対象者の訪問時間を単純に平均化せず、届出建物ごとに区分して資金計画へ反映することが重要です。
Q夜間の訪問を外部委託すれば包括型の体制要件を満たせますか?▼
包括型では24時間の対応体制に加え、日中と夜間帯に少なくとも各1回の指定訪問看護などの要件があります。個別の人員配置や外部連携が要件を満たすかは、契約形態だけでは判断できません。開設予定地を管轄する地方厚生局に、届出前に具体的な体制を示して確認してください。
Q包括型の収入を見込んで開業融資を申し込んでもよいですか?▼
見込みを示す場合でも、届出の進捗、対象建物、対象利用者、勤務表、訪問回数の前提を分けて示す必要があります。対象外となった場合でも返済を続けられる月次資金繰りを併記し、包括型の収入だけに依存しない開業資金計画にすることが安全です。
Q包括型の対象でない利用者にはどのような請求になりますか?▼
厚生労働省は、包括型の届出建物に居住する利用者でも、疾病等や訪問看護の状況により包括型訪問看護療養費又は訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定すると示しています。具体的な請求区分は利用者ごとの状況で異なるため、算定留意事項と最新の届出案内を確認する必要があります。
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